子供の頃は一日一日が長かった。
歳を取ると時間が経つのが早く感じる。今ではあっという間の一週間も、子供の頃はとても長く感じた。歳を取れば取るほど時間が経つのが早く感じる為、人生は19歳の時点で半分終わっているそうだ。
八月一日。俺は少し焦っていた。もう八月になってしまった。まだ宿題にはほとんど手を付けていない。
読書感想文、ドリル、文字のおけいこ、交通安全ポスター、自由研究、アイデア貯金箱。
山ほどある上に、一つ一つ時間がかかるものばかり。ちゃんと終わらせて新学期を迎えることが出来るのか心配だった。だが、やる気は全く起きない。そもそも、どうして夏休みにこんなに宿題を出すのだ。アメリカでは夏休みがもっと長い上に、宿題は出ないという。夏休みはやすむためのものだからだ。夏休みに大量の宿題を出す日本は、夏休みでも休ませないつもりでいるに違いない。休むことを悪だと思っているのだ。日本はもっと休むことの大切さを理解するべきだ。
「宿題まだやってないの?早くやりなさい」
結局母親に強制的に宿題をさせられた。しかも一日付きっきりでだ。
「もう、なんであんたに付きっきりで宿題やらないといけないの」
文句を言うなら一人でやらせてほしい。でも、それを言うと殴られるので黙ってやるしかなかった。結局母親がやってしまうのがオチだったが。
どうして八月の序盤からそんなに急いで宿題を片付けていたのか。それはお盆にばあちゃんの家に遊びに行くためだ。その際宿題には全く手を付けないので、ばあちゃん家から帰って来た頃には宿題地獄になってしまう。それを防ぐ為に急いで宿題をやっているのだ。
遊んでいるときはあっという間に過ぎてしまう時間も、宿題ををやっているときは時間が経つのが遅い。勉強をしていれば同じ時間でも長く過ごすことが出来る。その分長く生きられるのではないか。でも嫌なことをして一生を過ごすのは嫌だ。一度きりの人生はやっぱり楽しく生きたい。そう思った俺は、今日のノルマの算数ドリルを終わらせ、テレビを見ようと誓うのだった。