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俺(私)たちの聖者(不動昭&藤川胡桃&飯塚沙良)

 

 為雄が半年を過ごしている間、当然岡山達残された者にも物語があった。


 為雄がいなくなった後、彼らはいかなる理由で周りの制止を振り切ってまで旅立つ事にしたのか?


 今回はそれを見ていこうと思う。





 --------------------





 ダメ夫君が私たちの目の前から消えた時のことは、半年たった今でもまるで昨日の事のように覚えている。


 私たちが彼を守ると誓った瞬間に、彼は足元に開いた穴の中に吸い込まれるようにして落ちていった。


 でも覚えているのはそこまでで、それから後の事はほとんど覚えていない。いつの間にか私たちは外へ出ていて、いつの間にかお城の方へ戻っていた。


 いつの間にか握られていた勇者の武器を茫然とした面持ちで眺めながら、事情を聴くために連れていかれた謁見の間で王様の話を聞かされた。


 でも話なんて耳に入ってこなかった。私たちが守ると誓ったあの人が消えてしまって、それどころでは無かったんだ。


 茫然としていると、不意に視界が暗転して、気が付いたら彼がいなくなってから何日も経過していた。


 時間が経てば、頭も冷えてそれなりに物事を考えられるようになってくる。


 それでもやっぱり信じられなくって、何度も城中を探して回ったけどやっぱり見つからなくて。


 ようやく事態を受け止めて、彼はもういないんだと思ったとたん足元が崩れて暗闇に一人で取り残されたような感覚に落ちた。そこで私は思い知ったんだ。私は私が考えているた以上にダメ夫君の事を頼りにしていたんだっていうことに。


 絶望に駆られていようとも時は容赦なく過ぎ去ってゆく。ちょうど一ヶ月くらい経った時の事だ。武夫君が私たちを集めてこのままじゃだめだと言い出したのは。


「このままじゃ()()()()()()()()()()()()()()、だから俺たちはあいつに顔向けできるように、しっかり前に進まなくちゃいけない」


 私はその通りだと思った。武夫君の言葉に触発された私は自分でできる限りのことをしたよ。勇者の武器を使いこなせるようにたくさん訓練したよ。


 私の武器は刀だったから、すぐに手に馴染んだ。


 ある程度仕上がりが良くなってくると、私たちはすぐに城から旅立った。周囲の人は私たちを止めたけど、これ以上この場にとどまっていてはダメだと()()()()()()()()()()()()()()()


 私、頑張ったよ。


 旅立ってからというもの、私たちはたくさんの魔物を率いて町を襲おうとする魔族と何度も戦った。


 それは思っていた以上に過酷で、どんどん私たちの心に余裕がな無くなってきた。それでも戦い抜けたのは、ひとえにダメ夫くんの言葉が私たちを奮い立たせてくれたからだった。


 彼はきっとこう言うだろう。彼なら諦めない。


 それでも言葉だけでは限界が来てしまう。旅立ってから半年が経過して、私たちはついに限界を迎えそうになった時、奇跡は唐突に訪れた。


 ハートと沙良ちゃんが張った結界の中で眠りについていると、凄まじい轟音と衝撃が近くで起きた。


 私たちは跳ね起きて、目と鼻の先で巻き起こった粉塵に武器を向けて警戒した。魔族の奇襲か何かだと思ったんだね。


 そして粉塵が晴れて、その中心にいた人の姿を確認できるようになってくると、私たちの思考は完全に停止した。


 だって死んだと思っていた人が、私たちがもう無理だって諦めそうになって時にひょっこり現れるなんて、そんな都合の良い事ってある?


 固まって動かない私たちに、ダメ夫君はお構いなしに気の抜けるような再会の言葉を言ってきたけど、私たちはしばらく言葉を発せなかった。


 ねぇダメ夫君、君、私たちが一体どういう風に過ごしてきたか理解してる?


 してないんだろうね。顔を見ればわかるよ。君はいつもそうだったもんね。


 でもいいよ、私は許してあげる。だから、だからね。


 ひょっこひょっこのんきに歩み寄ってくる彼を見て、心の中で呟く。


 もう私の前からいなくならないで。





 --------------------





 ダメ夫がいなくなって、一番初めに湧き出してきたのは悲しみよりも怒りだった。ふざけるな、私にお前を守ると約束をさせておいて勝手に私の前から姿を消すなんて、ていう具合で。


 ふつふつと湧いてきた怒りを、あたしは何とか発散させるために訓練に打ち込んだけど、心の中の怒りはまったく解消されない、どころか日に日に酷くなっていた。


 そんな生活を一ヶ月続けていると、武夫の奴に呼び集められ、そろそろ本格的に訓練を初めて早いうちに旅立とうと提案があった。


 あたしはその提案を特に反発することなく受け入れた。とにかく何かをしていなければ気が済まなかったから。


 武夫の宣言から二ヶ月ほどであたしたちは旅立つことになった。理由は勇者の力の恩恵か、あたしたちの学習能力が高く、もう訓練で身に着けられるようなことが無くなってきたことと、勇者の力の全能感に酔っていたんだと思う。


 理由なんて今となってはどうでもいい。ともかく意気揚々と城から出て行ったあたしたちは、すぐに現実を思い知る事になった。


 あたしたちはダメ夫と違って勇者という強くなれることが約束されている職業についていた。相応の訓練だってしてたし、強力な勇者の装備だって持っていたから余計に気を増長させていた。


 これだけあるなら魔族とだって戦えるはずだ、そう高を括っていた。過ぎた力が身を亡ぼすなんて言うけれど、まさしくその通りだった。


 あたしたちが旅立ったことをどこからか聞きつけた魔族の一人が奇襲を仕掛けてきた。旅立ってから三日後の事だった。


 それからは戦いの連続。来る日も来る日も魔獣の襲撃は途切れはしなかった。何とか近くの町へたどり着くことができても今度はその街へ向けて魔獣の軍団が迫ってくる始末。


 苦しい。辛い。なぜあたしがこんな思いをしなければならない?


 幾たびも自問自答して、そしてその度にすべてはダメ夫が悪いという結論に帰結した。


 それもこれも、あたしの前から勝手に姿を消したあいつが悪い。本来はあいつが受けるはずだった不幸をあたしたちが受けているのだと、あたしの心の中どんどん黒い感情が募っていく。


 それが最高潮に達した時に、ダメ夫は再びあたしの前に姿を現した。


 アイツの姿を目にしたとたん、今までため込んでいたドス黒い感情がわっと噴出した。


 なぜだ?なぜ今になって現れる?なぜあたしがもうダメだってなる寸前にあたしの前に出てきたの?あたしを助けようとしているつもりか?あたしがあんたを守れなかった事への当てつけか?ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!


 その瞬間あたしの中で何かがぷっつりと音を立てて千切れた。


 もういい、もうあんたなんて守ってやらない。()()()あたしに絶対服従だ。当然だ。お前はあたしとの約束を破った。守らせなかった。お前はあたしの物だ。拒否権なんて与えない。


 お前はあたしを裏切った。その代償は、お前が身を持って償うんだ。


 煮えたぎる怒りを胸に抱きながらあたしは、こっちに向かってくるダメ夫をこれからどうしてやろうかと思いを巡らせた。





 --------------------





 それはこの世界に召喚されて一週間ほどの話です。


 その時の私は皆の前で気丈な姿を維持するのに疲れ果てていました。私だって弱音を吐きたいのに状況が、そうさせてくれません。


 喧嘩があれば窘め、悩みごとがあったら聞いてあげる、その繰り返し。心休まる暇なんてありませんでした。


 思えば私は今まで人に頼られてばかりでした。それもこれもこの容姿が原因です。同年代よりも大人びている見た目のせいで、いつも私は何かしらの頼みを聞いたり悩み事を聞かされたりしていました。


 私だってまだ皆と同じ学生なのに、どうして私ばかり。本当なら私だって悩みを打ち明けたいのに、誰もが私を頼るばかり。


 一体どうして私がお姉さん役をしなければならないの?どうして私が貧乏くじを引かねばならないのですか?


 そんな感情をだれにも打ち明けられぬまま一人城内を彷徨っていると、前方から人が歩いてきているのが見えました。


 その人は、ダメ夫さんは筋肉痛のためか顔を顰めて、びっこを引きながら歩いていました。


 召喚された後、ダメ夫さんとはあまり話す機会がありませんでした。同じ世界から来た者同士交流はしておきたいと思っていても、なかなか時間をとることができなかったんですね。


 これをいい機会だと思った私は、彼に駆け寄って水系統の回復魔法をかけてあげました。それから少し話をしましょうと誘ったんですね。


 ダメ夫さんはもっぱら聞き手に徹していて、私の話に相槌を打つ程度でほとんど何も喋りませんでした。それがどうにも心地よくって、話すつもりの無かったことまで話していました。


 今までは私が話を聞く側で、話す側になる事なんて皆無でした。それが余計に私の口を軽くしたんですね。いつの間にか私は彼に抱えていた悩みを打ち明けていました。


 容姿が大人びているせいで同年代の人が年上扱いしてくる事、私を学生扱いしない大人たちへの不満などなど。滔々と語る私に、やはりダメ夫さんは何も語らず黙って私の話を聞いてくれました。


 気が付くと私は声をあげて泣いていました。人前で泣くなんて初めての事でした。けれど恥ずかしいなんて感情は湧いてこなくって、心の中にはただ嬉しさだけがありました。


 向こうの世界で私はついに頼れる人を見つけられませんでしたが、異世界に来て初めて、ようやく私は頼れる人を見つけたのです。


 その一件の後私はちょくちょく会ってはダメ夫さんと話をするようになりました。ダメ夫さんはやっぱり何も話そうとしませんでしたが、それでも私は良かったんです。ただ話を聞いてくれるだけで十分満たされましたから。


 その後ダメ夫さんが≪勇者の祠≫いなくなってしまいましたが、私はそこまで取り乱しませんでした。


 だってダメ夫さんは私が唯一頼れる年上の人ですよ?そんな人が死んでしまった?あり得ません。きっとあの人はまた私の前に現れて私を気遣ってくれるんです。


 そしてほら、やっぱりあなたは戻ってきてくれた。


 私たちが限界を迎えそうという時に、あなたは()()()()()()現れました。


 きっと()()()()心配でたまらなかったんでしょうね。当然です。私は貴方無しでもう生きていられないのですから。


 ダメ夫さん、私この半年間とてもつらかったです。聞いて欲しい話は山の様にあります。だから、また二人きりでお話ししましょう。


 私だけの貴方。もう二度と放さないから。












何だこいつら(驚愕)!?

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