動き出す闇
楽しんでくれると嬉しいです。
此処はオルティエン王国の最果ての地。
そこで王弟イゼナルトはある一人の男と会っていた。
「あんたから会いたいなんて珍しいね。」
イゼナルトはそう言うとその男を見つめた。
その男はイゼナルトの視線を無表情で受け止めると、冷たい声で話し始めた。
「イゼナ……お前はシオン・メル・アルヴァントと自分の国、オルティエン王国を憎んでいると言っていたな?」
唐突なその言葉にイゼナルトは目を見開いたが直ぐにヘラヘラと笑い出した。
「そうだよ?シオンのせいで私は大切な人を奪われたし……父上と母上は無能な私には見向きもせず、兄のヴィンセントばかり愛したからね……私は兄のことも大嫌いだけど、兄が統治するオルティエン王国はもっと嫌いだよ。」
「……ならば貴様に良い情報をやろう。」
その言葉にイゼナルトは訝しげに眉を顰めたが無言で続きを促した。
「……まず、シオン・メル・アルヴァントについて……彼は生まれ変わってセリーナ・フォン・シェルヴィという伯爵令嬢になっている。」
それを聞いてイゼナルトは目を見開いた。
この男は嘘は言わない……だが、余りにも突飛ではないだろうか。
「それは……本当なの?」
その言葉に男は無表情で頷いた。
それを見たイゼナルトは狂ったように笑い始めた。
「あっははは!殺してやったのにまた性懲りも無く現れるなんて!」
その歪んだ喜びに溢れた声に男は微かに眉を顰めた。
「また、殺してやろう……今度はもっともっと苦しめて!」
「……悪趣味だな。」
その言葉にイゼナルトは微笑んだ。
「私は幼い頃からこうだった……それでまだ私に話があるんでしょう?」
「……ああ、我が国がお前の国の征服を狙っている……だからイゼナ、私に協力してくれ……協力してくれるなら征服後のオルティエン王国の国王にしてやる……我が皇帝も了承済みだ。」
それを聞いてイゼナルトは心底愉しそうに笑った。
「まぁ、王位なんてあんまり興味は無いけど……大っ嫌いなこの国が壊れていく姿は見てみたいし……嫌いなヴィンセントが苦しむ姿も見たいしなぁ……それにあんたはシオン・メル・アルヴァントについての良い情報をくれたし……良いよ、協力してあげる。」
男はその言葉に微かに微笑んだ。
「お前の手引きで我が国の兵を、内密にオルティエン王国に引き入れろ。いいな?」
「良いよ、やってあげる……だけどそんなに沢山は無理だから少数精鋭で頼むよ。」
そんな会話を数度繰り返してから、二人の男はこの場所を去っていった。
学園生活が始まった。
現在セリーナは学園生活をなかなか快適に過ごせていた。
何故なのか?
それは偏にユティアのお陰であった。
ユティアが公爵家の令嬢である事をフル活用してセリーナを悪く言う者に圧を掛けていたのだ。
それにセリーナは少しだけユティアに感謝した。
そんなセリーナは現在ユティアと廊下を歩いていた。
「ねぇセリーナ、今年は鳳凰祭があるんだよ!知ってた?」
唐突なユティアの言葉にセリーナは一瞬目を見開いたが、直ぐに微笑んだ。
「勿論知っているわ。選ばれた令嬢達が王様や王妃様の前で鳳凰の舞を披露するんでしょ?」
「そうそう!それでね私……絶対セリーナが選ばれると思うの!」
そのユティアの力強い言葉にセリーナは苦笑した。
「……そうかな?」
「そうに決まっているわよ!王太子の婚約者で誰よりも美しく賢く素敵で……こんな素晴らしい令嬢を選ばない筈がないわ!」
そのユティアのベタ褒めにセリーナは頬を赤らめた。
やはり面と向かって褒められるのは恥ずかしい。
だが……
「そうね……選ばれたら嬉しいわね……」
……鳳凰祭でメレイアに復讐を果たす。
セリーナは復讐の事を考えて虚しく微笑んだ。
次回も読んでくれると嬉しいです。




