幸せの選択
前半アレクシス視点、後半レヴィン視点です。
今回も楽しんでくれると嬉しいです。
愛しい人との間に出来た私の宝物。
名誉よりも己の命よりもどんなものよりも大切な私の娘……セリーナ。
最初にセリーナに変化があったのは七歳の時だった。
勉強も魔法も興味なんてなかった……むしろつまらなさそうにしていたセリーナがいきなりそれらを学びたいと言い出した。
その熱意に負けて学ばせたのだがセリーナは驚くべき天才で、教える事が無いと逃げ出した先生が何百人といた。
そんなセリーナだったが彼女はいつも何処か寂しそうだった。
小さい頃のように心の底から笑わなくなり、私は悲しかった。
そんな日々を過ごしていきセリーナは十四歳になった。
勿論、デビュタントでも聡明で天使のように美しいセリーナは注目の的。
王太子がセリーナと踊っていなかったら、きっと婚約の話が何百と届いた事だろう。
そんな私の宝物……セリーナ。
いつの間にか私から離れて、秘密ばかりを作るようになった私の可愛い娘。
大切なセリーナが悲しむ姿も苦しむ姿ももう見たくはない。
だから……セリーナの言う事なら何でも叶えてあげたいけど……
「セリィ、分かっているのかい?レヴィン・ルト・メイヴィスが仮に無実だとしても、彼が親を殺したという噂は既に流れている。そして人の噂はなかなか消えない。そんな酷い汚名を着せられた彼を養子に迎えたら、シェルヴィ家の名に傷がつく事は勿論の事……セリィ、君も人から心無い言葉を言われて傷つく事があるだろう……だから……」
「それでも構いません。」
セリーナの力強い瞳がアレクシスを射抜く。
その強い意志が込められた目を見てアレクシスは悟った。
セリーナがもう手の届かない所に行ってしまったと。
そんな思いを抱きながらアレクシスは優しく、だが悲しげに微笑んだ。
「セリィ、君はレヴィン・ルト・メイヴィスを本気で愛しているんだね……」
愛しい娘の事だ、すぐに分かった。
セリーナがどれ程レヴィンを深く愛しているか。
そのアレクシスの言葉にセリーナは儚げに微笑んだ。
「養子に迎えたらセリィ、君は彼と兄妹になるんだよ……彼と決して結ばれる事は無くなる……それでも良いのかい?愛しているんだろう……ならば……」
「ええ、愛しています。レヴィンの事を心から……でも、良いのです……彼が生きていてくれれば、幸せで居てくれればそれで……それだけで構わないのです。」
嗚呼、神様どうか娘に祝福を。
優しくて脆いこの宝物に幸福を。
アレクシスはセリーナに近づくと優しく抱きしめた。
「セリィ……幸せになりなさい。誰よりも幸せになって……自分の選択を誇りなさい……」
セリーナは小さく頷くと涙を零した。
それから二週間後、左肩と右肩と心臓を刺された騎士の遺体が発見された。
その殺害方法がオーランド・ルト・メイヴィスと似ていた為に犯人は息子のレヴィン・ルト・メイヴィスではないという噂が流れ始めた。
そしてそれから二週間後、また騎士が襲われた。
その騎士は命からがら犯人の所から逃げ出してきたらしく、犯人がオーランド・ルト・メイヴィスは自分が殺したと言っていたのを聞いていたらしい。
それによってレヴィン・ルト・メイヴィスは解放されたが、彼は既に家族によって法律的にも完全に親子の縁を切られ、メイヴィス公爵家から捨てられていた。
そんな哀れなレヴィンは独り居場所を求めて街を彷徨っていた。
レヴィンは力尽きると倒れた。
傷つきすぎた体は全身が痛み、食事も満足に与えられず劣悪な環境での生活を強いられた為、レヴィンは体を壊していた。
このまま死ぬのだろうか?
そんな事を考えて目を閉じた時だった。
「レヴィン!」
聞き覚えのある声にレヴィンは目を開けた。
焦点が合わずよく分からないが、綺麗な銀髪と鮮やかな紅の瞳ははっきりと分かった。
その色彩を持つのはレヴィンが知る中でただ一人。
「……セリーナ?」
その言葉に頷いた少女……セリーナはどうやら泣いているようだ。
頬に冷たいものが零れ落ちてくる。
レヴィンは震える手でセリーナの頬の涙を拭った。
どうか泣かないで欲しい。
セリーナ、君には笑顔が似合う。
そう言いたいが声が出ない。
レヴィンはその代わりに微笑むとゆっくりと目を閉じた。
目を閉じる直前セリーナの叫び声が聞こえた気がしたが、よくわからなかった。
そうしてレヴィンの意識は暗闇の中へと沈んでいった。
次回も読んでくれると嬉しいです。




