大き過ぎる願い
楽しんでくれると嬉しいです。
此処は汚く冷たい牢の中。
貴族だからとて、親殺しはとんでもない重罪。
それ故にこんな劣悪な環境での生活を、レヴィンは既に何日も強いられていた。
まだまだ続くであろう地獄の日々に、レヴィンは傷だらけの体を抱きしめると苦しげに目を閉じた。
拷問を受けて身体中が痛い。
寒くて、痛くて、苦しくて……訳が分からなかった。
何か前世で罪でも犯したのだろうか?
「父……さん……」
レヴィンの目から涙が零れ落ちる。
こんな状況でも思い出すのは、血塗れだった父の青白い顔。
父を殺した人物は憎い……憎いが……
「父さん……幸せそう……だった……」
何故殺されたのに、そんな幸せそうな表情でいられるのか気になって……犯人を恨みきれない。
「あの……子供が……犯人……なの……だろうか……」
だとしたら父さんは無抵抗で殺されることを望んだのだ。
そうで無ければ、あんな子供に騎士団長は殺せない。
ああ、でも……
「生きて……いて……欲しかった……」
勝手に死なないでよ。
……父さん
目の下の隈が目立つようになってきた。
セリーナはレヴィンが捕らえられてから食事が喉を通らなくなり、かなり痩せた。
そして眠りも浅くなり、今では殆ど眠れなくなった。
「どうしよう……どうしよう……何も思いつかない……」
早く何とかしなければ、その思いが心を急かしてセリーナのいつもの余裕を無くしていた。
「もう、いっそ真実を打ち明け……」
そんな言葉を遮って、セリーナの頬を伝う涙を優しく拭き取った青年がいた。
シャルである。
「セリーナ様それだけはいけません。貴方様が何と言おうと私が全力で阻止します。」
冷静にそう言い放つシャルをセリーナは鋭く睨んだ。
「ではどうしろと言うの!レヴィンに私の身代わりになって死ねと言うの!」
その言葉にシャルは少しだけ悲しげに微笑んだ。
「私に案があります……大丈夫です、セリーナ様。貴方様の憂いは全て私が取り払います。」
セリーナはシャルの手を勢いよく握りしめると迫った。
「本当に?本当に……レヴィンを救えるの?」
「……はい。」
信頼できるシャルのその言葉にセリーナは花咲くように笑った。
「どれくらいで救える?」
「……恐らく後一ヶ月程で」
その言葉にセリーナは長いと眉を顰めたが、彼を救えるならと微笑んだ。
「ありがとう……シャル……ならば私もやる事をやらなければ……」
セリーナは再び瞳に力を取り戻すと部屋を後にした。
そんなセリーナをシャルは悲しげに見つめていた。
扉をノックし、部屋に入る。
「父様、失礼いたします。」
セリーナは部屋の中にいたアレクシスに微笑んだ。
アレクシスは滅多に自分の部屋に来ることがないセリーナの突然の登場に驚き目を見開いていたが、我に返ると微笑んだ。
「セリィ、体の調子は……」
「父様、お願いがあるのです。」
セリーナはアレクシスの言葉を遮ると確固たる意志を持った瞳で、自分と同じ紅の瞳を見つめた。
「レヴィン・ルト・メイヴィスは知っていますか?」
その言葉にアレクシスは目を見開いた。
セリーナは微笑みながら続ける。
「レヴィン・ルト・メイヴィスは無実です。後一ヶ月もすれば彼は牢から出て来るでしょう。でも、きっと彼の家族は罪を犯してないとはいえ、疑いを掛けられた彼を許すことはないでしょう。だからきっと彼は……レヴィンは公爵家から捨てられる……法律的にも完全に親子の縁を切られて……そうしたら、彼は居場所が何処にも無くなってしまう……だから……どうか彼をこの家の養子に……私の兄として迎えてくれませんか……お願い致します!父様!」
突然のセリーナの大き過ぎるお願いにアレクシスは絶句した。
セリーナはそんなアレクシスの紅の瞳を見つめ続けた。
次回も読んでくれると嬉しいです。




