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亡き妹のための綺想曲  作者: 雪斗
33/45

親友

今回も楽しんでくれると嬉しいです。

夜風によって靡く銀髪、月明かりに照らされたその美貌。

その姿はまさに夜の女神。

静寂に独り佇む少女……セリーナは腰に短剣を差して、黒いローブを着ていた。


セリーナは愛おしげに指輪を撫でながらオーランドが来るのを待っていた。

殺し合いに発展するのも厭わない覚悟で。


そして遂に、夜の闇の静寂が破られる。


「……セリーナ、来ていたか。」


セリーナは指輪を撫でる手を止めると、振り返った。


「オーランド……」


そこに居たのはオーランド・ルト・メイヴィス。

前世の私を殺した男。


オーランドはセリーナを睨み付けると剣を抜いた。


「何故、フェニカを殺した!」


その言葉にセリーナは声を上げて笑った。

私にそれを問いかけるなんて、可笑しくて可笑しくて堪らなかった。

何故?

そんなの決まっている。


「自分の妹は大切なんだな?オーランド……」


その言葉とセリーナの豹変ぶりに、オーランドは眉を顰めた。


「どう言う意味だ!」

「私にも大切な妹がいた!誰よりも何よりも大切な妹……アナスタシアが!だが、貴様達が勝手な理由で死に追いやった!」


その言葉にオーランドは目を見開いた。

セリーナはそんなオーランドを嘲った。


「ア……アナスタシア?何故、今その名が出て来る!貴様は一体何者なんだ!」

「私はシオン・メル・アルヴァント!前世貴様に殺され、そして生まれ変わった!」


その言葉にオーランドは目を見開くと震えだした。


「そんな……そんな訳ない!シ、シオンは私が……」

「そうだ!貴様に殺された!アナスタシアの自殺の理由を知った私の命を……親友だった私の命を平然と奪った!そして何もかも、私から奪っていった!」


セリーナのその叫びにオーランドは愕然とした表情で剣を落とすと、引き寄せられるようにセリーナに近づいていった。


「本当に……シオンなのか?」

「来るな!下衆が!」


それでも近づいて来るのをやめないオーランドにセリーナは短剣を抜いて構えた。


「それ以上近づいたら、殺す!」


それでもオーランドは止まらない。

セリーナは震える手を抑えて、オーランドの右肩を突き刺した。


肉を切り裂く感触が生々しくてセリーナは泣きそうになったが、耐えた。

仇に弱みなど見せない。


オーランドは痛みに膝をついたが、片腕でセリーナを抱きしめた。


「やめろ!離せ!」

「っ……シオン……すまなかった。」


すまなかった?


「そんな言葉で済むか!アナスタシアがどれ程苦しんだと思う!貴様に裏切られて殺された私は、一体何なのだ!」


セリーナは怒りに任せてオーランドの肩から短剣を引き抜くと今度は左肩に突き刺した。

オーランドはその痛みに呻き、セリーナを離したがそれでも痛みを耐えて、真っ直ぐに此方を見つめて来る。


「ぐっ……許さなくていい……シオン……ただ私は……お前にもう一度……会って、謝りたかったんだ……だけなんだ……」


その耐えがたい台詞に、遂にセリーナは涙を流した。

 

「そんなのは……お前の自己満足ではないか!お前が謝ればアナスタシアは帰って来るのか!何が変わるのだ!私の憎悪は晴れるのか!憎悪の果てのこの虚しさが消えるのか!」


セリーナのその悲痛な叫びにオーランドは涙を零した。


「シオン……本当にすまなかった……私はお前に何をされようと……何を奪われようと……お前を裁く資格など……ない……だが、私は前世……お前を殺す気など……なかった……ただ、王弟……イゼナルトに命令……されて……仕方なく……」


その突然の告白にセリーナは目を見開いた。

フェニカがオーランドに私を殺すよう頼んだのでは無いのか?


「それはどう言う事だ……フェニカがお前に頼んで、私を殺させたのでは無いのか!」

「それは……違う……私は、イゼナルトに……妹を守りたかったら……お前を殺せと……脅されて……それに……学園に嘘のビラを……ばら撒いたのも……イゼナルトの命令で……すまない……シオン……シオン……」


王弟?

どうして……どうして……どうして!


そうして涙を流しながら混乱しているセリーナに向かってオーランドは請うように言った。


「シオン……私を殺してくれ……」


その言葉にセリーナは、何もかも忘れて目を見開いた。

オーランドは辛そうに涙を零しながら、話し続ける。


「ずっと……辛かった……お前を殺した……事が……アナスタシアを……死に追いやった……事が……もういい……もう生きていたく……無い……だからシオン……お前が……殺してくれ……お前に……殺されたい……だってお前は……姿が変わって……いても……お前は私の……」

「やめろ!」 


それ以上言わないで。

憎悪が、私の何もかもが壊れていく……消えていく。


そして、オーランドは微笑んだ。


「……私の親友だから。」

「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う!

私は、私は、私は!


セリーナはオーランドの肩に突き刺さった剣を無理やり引き抜くと、心臓に突き刺した。

血がセリーナの顔や体に飛び散る。


「ありがとう……」


茫然とするセリーナを置いてオーランドの体が傾き、地に横たわる。

そうしてオーランドは力なく微笑んでから、ゆっくりと目を閉じ、息絶えた。


セリーナは暫し茫然としたままだった。

理解できなかった、今の状況が。

私が殺した?

この手で心臓を突き刺して?


「……はっはは」


乾いた笑いが辺りに響く。

どうして涙が出ているのか分からなかった。

もう何も分かりたくなかった。

何も聞きたく無い、見たくない、知りたくない。


いっそのこと狂ってしまいたかった。


どれくらいそうしていただろうか。

セリーナは我に返ると血塗れのままゆっくりとオーランドに近づき、指に嵌めていたあの男物の指輪を震える手で外すとオーランドの指に嵌めた。

そして、願った。


「来世……今度は諍いのない世で……」


……また、親友になろう。

その言葉は声にならずに消えていった。




物語が動き始めます……多分

次回も読んでくれると嬉しいです。


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