文化祭 資格
何故男女逆転メイド喫茶なの?と疑問に思った方御免なさい。
ただの作者の好みです。やりたかっただけです。
今回も楽しんでくれると嬉しいです。
ユークリッドが私にキスをしている。
セリーナはこの状況を理解する事が出来ず、ユークリッドにされるがままになっていた。
キスされている衝撃によって、涙なんてものは止まってしまう。
そんな硬直するセリーナを他所に、どんどん深くなっていくキス。
その濃厚なキスによってセリーナの脳は甘く痺れて、手足に力が入らなくなる。
抵抗しようにもその気持ち良すぎるキスに思わず感じてしまう。
どれ程濃厚なキスを交わしていただろう。
やっとユークリッドがセリーナから唇を離した。
互いの唇の間を艶かしい銀の糸が繋ぐ。
唇が離れた後もその余韻にセリーナはぼうっとしていたが、我に返ると勢いよくユークリッドを睨んだ。
「何をする!」
前世も含めて初めてのキス。
初めてを奪われたことに対する衝撃は強く、セリーナはかなり動揺していた。
そんなセリーナをユークリッドは愉しげに見ると再び顔を近づけてきた。
再び何かするつもりかとセリーナは身構えたのだが、思惑は外れて、ユークリッドは耳元に唇を近づけてきた。
そして色香たっぷりに妖しく微笑むと囁いた。
「私のキスで感じた癖に……」
その小さいが透き通った声に、セリーナは頬を染めると力いっぱいユークリッドを突き飛ばし、その場から逃げた。
ユークリッドはそんなセリーナの後ろ姿を、いつまでも愛おしげに見つめていた。
誰もいない廊下を走りながら、セリーナは一人呟いていた。
「あり得ない……あり得ない!」
ヴィンセントの息子にキスをされるなんて……そのキスで感じてしまうなんて……
しかも、そのキスが嫌では無いなんて……
私はレヴィンの事が……好きなのでは無いのか?
ユークリッドなんて苦手だった筈だ。
でも……
『貴女に幸せになって欲しいのです。』
その言葉は……嬉しかった。
誰かに深く想われる、そんな幸せをあの時初めて知った気がしたのだ。
だが……
セリーナは表情を引き締めると昏く嗤った。
私には人を愛する資格も、愛される資格も無いのだ。
復讐の為とはいえ穢れきったこの心を知ったら、ユークリッドだって私からきっと離れて行くだろう。
蔑んだ目で見るに決まっている。
だから……
『貴女の苦しみを教えて下さい。』
そんな言葉は意味が無いのだ。
その後セリーナはキス事件のことを強引に頭から消すと文化祭を一人で楽しみ、一日目を終えたのだった。
文化祭二日目。
この日は各学年代表のSクラスによる劇があり、それを王ヴィンセントと側室メレイアが見に来るのだ。
セリーナはソルティアーナの衣装を着るとクラスの全員を見つめた。
因みに物語の中の王子はロベルト、悪役の貴族の令嬢はユティアが演じる。
セリーナは声を張り上げると、一人一人の目を見つめた。
「他のクラスになんて負けない!最優秀賞を取るわよ!」
「おー!」
力強いみんなの雄叫びにセリーナは満足げに頷いた。
精一杯やって貰わなくては、ヴィンセントが苦しまないだろう?
それに……とセリーナは昏く嗤った。
この劇が終わる頃にはフェニカはもう終わりだ。
側室殺害未遂の罪で、平民に堕ちる。
そうしたら、やっとこの手で殺すことが出来るのだ。
嬉しくて嬉しくてたまらない。
セリーナは誰にも見られないように昏く昏く微笑んだ。
運命の劇、炎翼の哀歌がついに始まる。
次回も読んでくれると嬉しいです。




