溢れる想い
レヴィン視点です。
楽しんでくれると嬉しいです。
初めて見たとき、余りにも眩しくて目を眇めてしまった。
でも、それもしょうがない事なのかも知れない。
天使なのかも知れない、そんな馬鹿な事を考えてしまうくらいに美しい少女を見たのだから。
青空が目に痛くて、レヴィンは目を眇めた。
そうして空を見ていたら鳥が視界に入ってきて、思わず手を伸ばした。
「……鳥になりたい。」
自由に空を飛んで、自由に何処にでも行ける。
そんな存在を自分はいつも深く羨んでいたし、憧れてもいた。
「なんて、綺麗なんだろう。」
伸ばした手は宙を掴むばかりで、届かないなんて知っている。
でもあの鳥を掴めたのなら、自分の望みが叶うような気がして手を下ろす事が出来ない。
そうして手を伸ばしつづけていたときだ。
あの言葉を思い出したのは。
『私は自由には生きられないから……』
そう苦しそうな表情で語る少女。
己が自由と言うたびに何処か諦めたような表情をする彼女は、きっと何かに心を縛りつけられている。
悲しい程に心を縛る何かに。
そんなにも彼女の心を縛るものは、一体何なのだろう。
レヴィンは手を下ろすと己の掌を見つめた。
あの少女……セリーナの頬を両手で包んだ感触も、泣いているセリーナを抱きしめた感触も覚えている。
その時の感情を表現する言葉なんてわからないけど……
初めて、誰かを慰めたいと思った。
泣いていて欲しくなくて、いつも笑っていて欲しい……そう思ったんだ。
そんなことを考えていた時、ふと庭にセリーナがいる事に気がついた。
彼女はまだ、此方に気付いていないらしい。
「セリーナ!」
レヴィンがそう叫んだ事で、セリーナは此方に気づいたのだが、無視して去って行こうとする。
その冷たい態度にレヴィンは戸惑いながらもセリーナに走り寄り、その腕を掴んだ。
腕を掴んでもそっぽを向いたままのセリーナにレヴィンは悲しいと感じた。
……こっちを見てほしい。
「セリーナ、久しぶり……どうして、僕の目を見ないんだ?」
「……別に、今は気分が悪いだけ……だからこの手を離して。」
そう言ったセリーナの声は震えていて、レヴィンは思わず眉を顰めた。
レヴィンは強引にセリーナを引き寄せると、此方を向かせた。
そして、目を見開く。
セリーナは、ぽろぽろと涙を零していた。
本当に苦しそうに悲しそうに泣いていたのだ。
レヴィンはその表情を見て顔を顰めた。
どうして、そんなに苦しそうに悲しそうに泣くんだ?
「セリーナ、どうしたんだ?」
「っ……か、関係ない!貴方には関係ないわ!」
そう言ってセリーナはレヴィンを突き飛ばそうとしたが、それは出来なかった。
何故なら、レヴィンがセリーナを強く抱きしめたからだ。
「離して……」
「……嫌だ」
「私には、婚約者がいるのよ!離しなさい!」
それでも、レヴィンは離さなかった。
セリーナは必死に離れようと暴れるが、レヴィンはそれを許さなかった。
「あんたに、泣いて欲しく無いんだよ!」
レヴィンがそう叫ぶとセリーナの動きはピタッと止まった。
それに微かに安堵し、レヴィンは必死に言い募る。
「この感情が何かは分からない……でも、あんたが泣いているだけで何故か胸が締め付けられるんだ……笑っていてよ……泣くな、セリーナ……」
レヴィンに婚約者はいないが、セリーナには婚約者がいる、しかも相手は王太子だ。
こんな場面を見られたら、良からぬ噂がたつだろう。
それを分かっていても、レヴィンはセリーナを離さなかった。
否、離せなかった。
「どうして………………決めたのに……」
セリーナの呟きは聞き取れなかったが、レヴィンは優しくセリーナを抱きしめた続けた。
次回も読んでくれると嬉しいです。




