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亡き妹のための綺想曲  作者: 雪斗
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心変わり

今回も楽しんでくれると嬉しいです。

セリーナは、アレクシスは騎士団に所蔵してはいないが、かなりの剣の腕前を持っている事は知っていた。


それは十歳の時だった。

セリーナはアレクシスの手をギュッと掴むと、同じ紅の瞳をじっと見つめた。

そして、言い放った。


「父様!剣を教えて!」


そう言った時のアレクシスの顔が忘れられない。

まさに鳩が豆鉄砲を食ったような表情。  


「……聞き間違えかな……そうだろうな……うん、きっと……」

「父様!剣!剣教えて!」


セリーナはもう一度剣を強調して言った。

そんなセリーナをアレクシスは茫然と見つめていたが、我に返ると引きつった笑みを浮かべた。


「セ、セリィ……良い子だから、それだけはやめよう?もしセリィの白磁の肌が傷ついたりしたら……私、生きていけないよ……」


アレクシスはセリーナを必死に説得しようとするが、セリーナにも譲れない思いがあった。

剣を習わなければ、自分の手で復讐相手を殺せないではないか。


「父様は……私が嫌いなの?」


ここでセリーナは必殺うるうるな瞳を繰り出した。

そんなセリーナを見たアレクシスは呻くとダウンした。

……セリーナの勝利である。


そうして十歳からセリーナはアレクシスに剣を教わっていた。

普段はセリーナ大好きなアレクシスだが、剣を教えるときは別人だった。

……かなり厳しかった。


セリーナは、前世のシオンの時には剣を習っていて、ある程度の知識は持っていたのだが、いかんせん前世と今とでは身体能力が違いすぎた。

なかなか強くなれない中で、セリーナは必死に頑張った。


そして今では努力の甲斐あってか、アレクシスと互角に張り合うくらいに強くなった。
















ユティアは馬車から降りて、セリーナの馬車が魔獣に襲われている様子を隠れて見ていた。


ユティアも今日は入学式なのだが、セリーナが魔獣に喰われる様子を見てから気分良く魔法学園に行こうと思っていたのだ。

それなのに……


「……あれはどういう事なの?」


ユティアの目には剣を巧みに使い、魔獣に攻撃しているセリーナの姿が。

どうして貴族の令嬢が剣を、と考えている間に魔獣が二体倒された。


ユティアはその様子に唇を噛み締めた。

……全然想像と違うじゃない。


ユティアは悔しくて拳を握りしめていたのだが、ふと背後から獣特有の臭いと荒い息遣いを感じ、体を硬直させた。

そして、恐る恐る振り返って絶叫した。


「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


ユティアの目の前にはセリーナを襲っていたあの魔獣がいたのだ。


どうやら、今のユティアの絶叫で魔獣を刺激してしまったようで、魔獣は吠えるとこちらに襲いかかってこようとした。

ユティアは目を瞑り両手で顔を庇い、来るであろう衝撃に体を硬くしていたのだが、いつまで経ってもそれは来なかった。


「大丈夫?」


その代わりに優しい声が辺りに響き、ユティアは恐る恐る目を開けた。

そこには、返り血を浴びながら微笑むセリーナがいた。


ユティアは思わずその姿に見惚れた。

雄々しく戦い、凛々しく微笑むセリーナ、そんな彼女に思わずユティアの頬が薔薇色に染まる。


ユティアは蕩けた目でセリーナを見つめた。


「ありがとう……」

「怖かっただろう、もう大丈夫だ。」


女の子なのに男らしい口調に、妙に胸がドキドキする。

セリーナは何故かハッとし、ばつの悪そうな表情をしたがユティアにはそれすらもかっこよく見えた。


「貴女も、魔法学園の入学式に出るの?」


そのセリーナの言葉は、ユティアの服装を見て言っていた。

ユティアとセリーナは同じ白色の魔法学園の制服を着ていた。

だが、セリーナの制服は返り血で汚れてしまっている。

それに気付いたユティアは青褪めた。


「ご、ごめんなさい……」

「どうして、貴女が謝るの?大丈夫、気にしないで……こうすれば良いのだから。」


セリーナは己の体に手を当てると魔法を行使し、一瞬で体全体を綺麗にした。

その高度な技術にユティアは驚き、再び蕩けた目でセリーナを見つめた。


「じゃあ、学園で会いましょう。」


そう言って馬車に乗り込もうとするセリーナを、ユティアは呼び止めると叫んだ。


「私の名前はユティアよ!」


その言葉にセリーナは微笑むと馬車に乗り込んだ。

ユティアはその馬車が見えなくなるまで、ずっと見つめていた。

















「ユティア様……如何されたのですか?」


そう言って現れたベティカにユティアは頬を染めたまま言い放った。


「ベティカ……私、セリーナ嬢がどんな令嬢か見極めたいわ……だから、殺すのは中止よ。」

「……心得ました」


ベティカはまたスッと姿を消した。

ユティアは自分の熱くなった頬に手を当てると呟いた。


「格好よかった……」


そんなユティアの呟きは風に吹かれて消えていった。



次回も読んでくれると嬉しいです。

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