プロローグ破
「きりーつ、れい」
今日の日直がそんなやる気のない声で帰りの会の終わりを告げた。それと同時に騒がしくなり始めるクラス。今日これからどこに遊びにいくとか、部活いこうぜとか、あのドラマそういえば見た? とかいろいろな会話が飛び交う中、僕はそそくさと教室をにぬけだした。
今日は焼き肉屋のアルバイトがあるのだ。うちの高校はある程度の成績をとれていれば、アルバイトをしてもいいという校則がある。これは僕がこの高校を選んだ一つの理由でもある。
と言うことで一駅先にある焼き肉屋に向かっている道中である。駅のプラットフォームに着くと妙な事に人が誰もいないのだ。この時間帯に人がいないのは非常に珍しいと言うより、不気味という表現のほうがしっくりくる。
そんな感じであたりをキョロキョロしていると、一つの影に目が行った。それは地面をうごめきながらこちらに向かってきていた。
そりゃ、もうぎょっとする。一瞬恐怖で体が硬直したけれど、すぐに逃げなきゃいけないと思い、魔力を使い自身を強化する。影から逃げようと振り返ると、そこには僕に覆い被さるかのように影が迫っていた。
「クソっ!」
僕はとっさに魔法の炎を目前の影にぶつける。そうすると消えてくれたけれど、すぐ後ろにきた影によって僕は飲み込まれてしまった。
飲み込まれた瞬間、光は遮断され、すぐに意識は暗転した。
「おい、きいてんのか?」
そういうのは秀だった。
「ごめん、聞いてなかった」
正直に言うと秀はじと目で僕をみる。
「だからぁ、俺は総理大臣に将来なるって言ってんの」
今度は僕が秀をじと目で見た。秀はたまに馬鹿なことを言うのだ。
「なってどうすんのさ」
「ん? なってどうすっかって?」
胸をはるように腕を組む秀。次に秀が何を言ったのか、いまは思いだせない。だから聞こうとしたけれどすぐに景色は変わった。
目の前にはいつもケラケラしている秀。
「それじゃあな。」
そう言って、秀は僕に手を振る。
だから僕もかすかな笑顔で、いつものような雰囲気を醸して、手を振った。
「うん、またな」
じゃあなとは言いたくなかった。
これが秀との最後のお別れだった。
意識がだんだんと戻る感覚を感じていると、何か懐かしい夢を見ていたような感覚にさいなまれていた。そのせいかもしれないけど、涙が流れていた。その事態に少々驚きながらも涙を拭うと、僕はさらに驚愕の事態になっていることに気づいたのだ。
僕は女の子にまたがっていたのだ。つまり、僕が気を失っている間僕はずっとこの女の子に覆い被さっていた状態だったということ。すぐにどかなくてはあらぬ誤解を生むことになりそうだ。
あ、僕の涙がでシミができてる。単純にやばいしどうにかしないと。
そう思っていると、轟音とも思えるほどの足音が聞こえてきた。それはだんだんとこちら側に近づいてきている。音のなる方をみると、そこには鬼の形相をした男がこちらに走ってきていた。
「てんめぇええええええええ!!!!! 俺の妹に何しとんじゃぁあああああああああああ!!!!!」
その男はそう叫ぶと、右足で僕の顔面を蹴ってきた。いきなりすぎる事態に首をけりの方向にいなすことしかできずに、もろにくらい吹き飛んだ。
口の中は少しかんだのか鉄の味がする。
「いつつ、」
あ、口から血が垂れてきた。
「おい!! そこの変態! 俺の妹に何してくれてんじゃ!! ぶち殺すぞ!!」
あらぬ誤解が生まれてしまったみたいだ。どうにか弁解しなくては。というか、まずここはどこなんだ。周りを見る限りただの広場だけれど、人の数が尋常じゃない。ざっと見た感じ若者しかいない。まだ、意識のない人はちらほらいるけど激怒する男の声で近くの人たちはだいたい起きていた。
「おい!! なんかいってみたらどうなんだ!! 強姦やろう!!」
そう言いながら男が近づいてくる。周りの状況よりもこっちの状況のほうをどうにかしなくちゃ。というか、この男のせいで周りにもあらぬ誤解が広がっている。元々の状況がやばいのに、さらにやばくなっている。というか周りの人たちの僕を見る目が犯罪者をみているそれだ。本格的にどうにかしないと。
「ち、違うんですって! 起きたら彼女にまたがっている状態になっていて、すぐにどこうとしたんです!!」
地に膝をつけたままそう弁解するが、前にいる男はまるで納得してない顔だ。
「あぁ? 強姦やろうの言葉なんて信用できっかよ。 お前、そこでおとなしくしとけよ。おまえが何をしたのか体で後悔させてやっからよ。」
そう言い男は手を鳴らせながらこちらに向かってきている。
「だから、誤解だっ 「はぁーーーーーーーーい!! 皆さん中もーーーーーーーーく!!」
僕の言葉を遮り、広場の中央に浮いている奴が激音で叫ぶ。その声は先の男の怒声よりも遙かに大きい。鼓膜が痛いほどだ。奴がいつそこにいたのかはわからない。
そのファニーな姿形はぬいぐるみのようでまるで驚異を感じさせないが警戒はしといた方がいいと思う。さっきまでこちらに注目していた若者たちも、さっきまで怒りを僕にぶつけていた男もその声のする中央を見ていた。
「私の名はモマモマ。あなたたちを導く存在であります。」
先ほどの轟音とは打って変わったように冷静な声だった。しかし大きいことに変わりはない。
周りはおかしい今の状況にだんだんとざわめき出す。あいつ何なんだよ。とか。帰りたい。とか。泣き出す者もいた。
「まぁ、落ち着いてください。今からなぜあなた方がここに集められたのかを説明いたします。」
「んなこたぁどうだっていいんだよ!!! 早く俺らをかえせよ!! ぶち殺すぞクソがぁ!!!」
金髪のいかにもヤンキーって人がそう啖呵を切る。
「んぅ、うるさいですね。人が話している時は静かにしていないといけないのですよ? はい、お口チャック。」
ぬいぐるみがそう言うと、ヤンキーの彼は本当に口をチャックされたかのごとく口が開かなくなり、ん”ん”--!!と、わめくことしかできなくなっていた。
「では、静かになったところで説明をいたしますね」
この奇妙な現象に、皆が静かになった。
「あなたたちにはゲームをしてもらいます。それもあなた方のしるモンスターハンターや黒の砂漠と言ったようなゲームです。しかしながらプレイヤーはあなた自身なのです。舞台となるのはもう一つの世界アムル。ここはあなた方の知らないようなモンスターとなる生態系が存在しています。あなた方はその世界でモンスターを倒し、素材を手に入れ防具や武器を作り、自身のレベルを上げ強くなるのです。」
とても馬鹿げている話だった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!! ち、違う世界って、私たちもう帰れないって事!?」
女子がいう。
「いえ、それについては安心してください。あなた方は帰れます。深夜の0時になったときあなた方はここに集められ、最低3時間アムルにいればおのおのの意思で帰ることができます。それと質問タイムは後で取るので、もうしないように。さっきの彼みたいにしますよ。」
ちなみにさっきの彼はまだあの変な魔法にかけられていたままだった。
「では続けますね。先の説明どおりあなた方は冒険に出てもらうのですが、その中でチームを組んでもらいます。集まったすべての人数は160。そのうち8人ずつでチームを組んでもらいます。今からあなた方の利き手の腕にあざが出るはずです。その色がチームの色となっています。」
集まったと言うより集められたが正しいと思うが。
「そして、チームごとに拠点を用意しております。周りを見てください。」
そう言うと、この広場を囲うようにいくつもの建造物が建ち並ぶ。もう何でもありになってきたな。
「そして、あなた方の腕を見てください」
自分の腕を見てみるとじわじわ紋章みたいな紫色のあざができた。マジでどうなってんだ。
「さて、それでは・・・」
腕を広げるといきなりぬいぐるみが分裂しだした。ワラワラと増え出す様はちょっと気持ち悪い。
完全に別れ終わったのか、円を描くように浮く。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「各自の家には一色で塗られた標識があるのでご自身の色とご確認ください。認識機能搭載のドアにご自身の紋様をかざせばドアは開きます。それでは私たちは各自に部屋で待っています」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
増えたぬいぐるみはそう言うとまっすぐにそれぞれの家に入っていった。
そして、数秒の沈黙を続かせすぐにざわざわとなりだした。
おい、どうすんだよ。
あ、私の色黄色だ。
あんた気楽すぎでしょ。
帰りたいんだけど。
案外楽しそうなんだけど。
聞こえる声がこんな感じ。そして、僕はすこしこの場を離れた。だって、僕を強姦扱いし、暴力をし出す奴がいるんだから。あいつの近くは危険だ。誤解も解けそうもないし、触らぬ神にたたりなし。
んでもって、十数分がたったあたりだろうか。狼狽する者も多かったが、何も起きずにただ過ぎゆく時間にしびれを切らしたのか、だんだんと自分の拠点に行く人が増えていく。僕もその流れに合わせて自分の拠点を探すのだった。




