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プロローグ序

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 みんな死んでしまえばいいと思っていた。

 物心つく頃から、暴力を知っていた。ただ泣くことしか出来ない。けれど、泣くことさえ父親は許さなかった。いつでも敬語を使った。使わなければ怒られた。

 ある日のことだった。いつものように僕はあいつから暴力を受ける。そんな中で、当たりどころが悪かったのだろう。一瞬にして意識を失ったことがあった。その夜、僕は一つの夢を見た。

 それは一人の記憶の全て。

 記憶のキーワードは勇者に剣に魔法、そして裏切り。

 彼は勇者だった。魔王と戦う勇者だったのだ。けれどその戦いは悲惨を極めた。仲間は死にゆき、荒んでいく心。疲弊していく体。血で血を洗う戦いに彼は疲れ切っていた。そして訪れた最後の決戦。彼は泣きながらも戦った。そして、見事打ち倒したのだ。

 けれど彼を待っていたのは彼を讃える声などではなかった。彼の強さに恐れた王国は彼を拘束したのだ。

 彼は一生を牢獄で過ごした。狂おしいほどの憎しみを持ちながら。ずっと、ずっと。

 彼はただ少しの幸せが欲しかっただけなのだ。優しい家庭を築き、安らかに死にゆく。その望みさえも、王国の裏切りによってついえた。

  そんな男の一生を、ただの一夜で見たのだ。

 僕の目覚めは最悪だった。頭は痛いし、全身に汗をかいていたし、何より心が苦しかった。起きて早々吐いていたのを覚えている。そして、その夢を見てからというもの、一夜で見た中での魔力というものが見え始めるようになったのだ。剣の振り方は何故だか覚えている。魔法の使い方も、覚えていたのだ。何だか、思い出したという感覚が正しい。それに加え、僕はその夢の中の男がしていた日々の日課である素振りもし始めたのだ。親には内緒で、振れるような木の棒を使い、ただ黙々と。これをしなくては、心が落ち着かないのだ。ただ、この夢を見てからというものもっと人が嫌いになってしまうような感覚に苛まれたのを覚えている。


 ある日のことだった。親が離婚することになった。どうでもいいことだけれど、僕は母親の方についていくこととなった。そして変わらない暴力の日々。父の暴力が減ったことで、まだ現状は良くなったけれどいつのまにか母親が家に帰らなくなった。だいたい家にはいないのだけれど、忽然と家に帰らなくなったのだ。家にあった食料は底をついたので、散らかった部屋の隅からすみを探してなけなしのお金を集めた僕は、夜だったけれどスーパーに行こうとした。時間は10時から11時ぐらいだったと思う。

 僕が住んでいるところは、まぁまぁの都会だったので人通りは結構あった。夜外に出ることは滅多になかったのでその雑多とした景色が珍しく映っていた。

 物珍しげに周りを見ながら歩いていると、いきなり肩をたたかれた。振り返ってみるとそこには中年とおぼしき警察官。

 君、一人?

 お母さん、お父さんは?

 何してるの?

 いろいろ聞いてくる大人に僕は怖くなって逃げ出した。当たり前だけど警官は僕を追ってきた。魔力を使い自身の肉体を強化して逃げ切るけれど、結局その帰りに違う警官に後ろから肩をつかまれ捕まった。

 そこからはいろいろなことが起こった。警官にいろいろ話を聞かれ、大人たちがいろいろ話してい

て、結局の話僕は児童施設へといくこととなった。

 しかし児童施設は僕が通っていた学校と何ら変わらなかった。めんどくさそうな大人たち。いじめてくる子供たち。何ら変わることなく日々が過ぎていた。

 そんな日々を過ごす中で、僕は初めてかもしれない友達ができた。名前はにのまえしゅう。活発な子でとにかくいつも笑顔だった。彼とはよく遊んだ。けれど彼との別れはすぐだった。里親が見つかったのだ。さよならは笑顔で言ったけれど、泣きたい気持ちでいっぱいだった。

 そして、こんな僕にも里親が見つかったのだ。里親となってくれたのは後藤ご夫妻。ちょっとした事情で子だからに恵まれなかったからと、里親を名乗り出たという。これは僕が中学生に上がった時の話だった。

 後藤夫妻はとても優しくあたたかい人たちで、僕は彼らに迷惑をかけたくないと決心したのだ。

 中学でのいじめは伏せ、心配はさせない。勉強はできる限りした。家の手伝いもいっぱいしてきた。けれど、僕に居場所をくれた佐藤ご夫妻に恩を返せたと言う実感はほとんどなかった。

 そんな僕も高校生になった。高校に入ると進学校と言うこともあり、いじめという物がなくなった。少し遠い高校を選んだので中学の頃の同級生がいないと言うこともあるが、高校生になることによりみんな一つの大人への段階を踏んだのだと思う。他人を排斥する行為の無意味さになんとなく気づきはじめた人たちが多いような高校だからとも思う。

 とにかく全クラスにそういう話は聞かない。いい高校を選んだものだと自分が誇らしかった。


 現在高校1年の二学期まっただ中。僕はバイトをしながらも高校生活を無難に過ごしている。






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