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二匹の猫が旅と人助けをするだけ  作者: 廃猫エティ
6/6

6話 宿

「待たせたわ」


 裏路地に入ったところでアオがもう追いついた。 いくらシャルが遅くとも市門から裏路地までの距離はそう遠くはないはずなんだが。化け物じみた俊足であるな。


 日本とは様相が全く違う街の景観を尻目にシャルの案内でただひたすらに走る。といっても俺はシャルの頭の上でくつろいでるがな。既に『邪気纏い』のスキルは切っているんだが、意外にも人の頭の上とは居心地がいいようだ。


「随分と楽してるじゃない。私も乗せなさい」

「え、これ以上乗られるとキツいんですが!?」

「文句あんの?」

「あ、ありませぇん……」


 一睨みしてシャルを黙らせてからアオは肩へ飛び乗った。先ほどの人外極まりない光景を目撃した後では反論なんか出来ないだろう。俺もあまり怒らせないよう頑張るか〜。

 あ、猫はそもそも人外でしたね。



 何もしないでも流れ行く景観に意識を向けてみると、日本とはかけ離れた文化の違いがありありとわかる。

 家の造りは石と木材で成っており、道はかなりボコボコしていて整備してるとはとても思えない。大通りに出たら多少マシになるだろうが。生ゴミも頻繁に目撃され清掃なんかされてないのが一目瞭然だ。たまにホームレスやいかにも悪事働いてますというオーラを滲み出してるオッサンがうろついてて裏路地は治安が悪そうだ。もしかしたらこの街全体がそうかもしれないが。


 初めてくる異世界の街を観察していると目的の宿に着いた。


「ここが前のご主人様が宿泊していた宿です。毎週一週間分の宿賃は支払っています。確か……あと3日分宿泊出来ますね」

「そうか、手持ちがないから3日だけでも泊まるところがあるのは僥倖だな」

「あ、部屋にいくらかお金はあったと思います」


 おぉ、ならばさっさとその金で俺の腹を満たす食べ物を買わねば!


 シャルに先を促して、三位一体で中に入る。

「あ、おかえりなさいシャルエスファ……さん……? 猫拾ったんですか? あれ、ご主人の二ボロさんは?」


 奥から茶髪の見た目小学生の女の子が出迎えた。いつもと違う面子に戸惑いを表してる。

 シャルはどう説明するのか迷ってるようだ。

 出来るだけ違和感がないように誤魔化せよ的な思いを込めて、尻尾で頭をはたく。


「えっと……魔物にやられてしまいました」

「そうだったんですか……、シャルエスファさんだけでも生きて帰ってきて良かったです」

「あ、ありがとうございます」

「でも、門兵には奴隷商の元に連れて行かれなかったんですか?」

「あ、いやえっと……。ま、魔物から助けて頂いた方々の所で今は奴隷をやってますので」

「あぁ、なるほど。そのご主人たちは見当たらないですが、お出かけですか?」

「えぇ……はい」


 よくやった、女の子は不審がってないようだ。


「ではご主人たちの所へ行かれるのでしたら、宿は引き払いますか?」

「いえ、まだ宿泊します」


 あ、駄目だ。シャルの言ってる事が分からず頭をひねってる。


「えっと、ご主人には許可貰ってるんですか?」

「それはもちろんです!」

「わ、わかりました、変わったご主人ですね。では、同じようにご飯は別料金ですので3泊ごゆっくりどうぞ」


 一応納得したようで、一礼をして奥へ戻っていった。


 シャルの足で部屋に入る。中は、いたって簡素で固そうなベッドにイス、テーブル、クローゼットだけがあるだけだ。


「クロ様、確かお食事をご所望でしたようですがいかがいたしますか?」

「あぁ……うん。それはまあ要るけどさぁ、言葉遣いは別にかしこまらなくていいぞ。タメ口でも俺たちは気にしないし」

「い、いえ! 奴隷である以上立場を明確にする為には必要な事ですので」

「えぇ……じゃあかしこまられた方が気持ち悪いから徐々にでいいから楽にしていってね」

「わ、わかりました……。善処しますぅ……」


 今までにこんな事言われたことなかったんだろうな、困惑してる。

 でもコイツと話してると丁寧な口調は似合わないなって心底思うからな。会った時はもっとJKっぽかったからそっちの方がイキイキしててこっちも気分が良くなる。


「それじゃ、飯を食いに行きますか。どこか美味しい店知らない?」

「ここの宿のご飯は美味しいです……美味しいよ」


 お、頑張って口調戻そうとしてるな。良いことだがちょっとイタズラで凄んでみる。


「ほう、美味しいよ……だと?」

「す、スミマセン! お口に合われるかと思います!」


 うはぁ、おもしろ〜い。


「冗談冗談、その調子で慣れてってくれ」

「もう、びっくりさせないでください……」


 涙目で訴えてくる。シャルにとっては俺たちを怒らせたら死活問題なんだろう。こっちは殺す気は無いけど、圧倒的上位者だとドSっ気が出てきてしまってついいじめたくなるわ。


 そろそろ俺の腹も限界だ。シャルいじりはこれくらいにしてさっさと飯を食いたい。


「んじゃ、飯を食べに行くぞ。別料金って言ってたから、金は持っていけよ」

「はい!」


 シャルはクローゼットからバッグを引っ張り出して中から硬貨を取り出す。


「スミマセン、お待たせしま……待たせたな」

「それは蛇のおっさんだ」

「え?」

「お前がボケるからだろう……わからんならいい、行くぞ」

「私はお腹いっぱいだし、遊びに行ってくるわね」

「りょうかーい」


 さっさとアオは外に飛び出してすぐに姿は見えなくなった。

 俺とシャルはさっきの茶髪の小学生の所へ向かう。

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