表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二匹の猫が旅と人助けをするだけ  作者: 廃猫エティ
3/6

3話 食糧から所有物へ

これもう死んでるんじゃない? 手遅れパターンみたいな?

……あっ、痙攣した。かろうじて生きてるようだな。


「本当に食べないの?」

「食べません。アオはこれが美味しそうに見えるのか?」

「前は人間なんて全然いい匂いしなかったんだけど、こっちに来てからは生きてるモノは全部いい匂いがするわ」


ふむ、どうやら魔物化が好物に影響を与えたのだろうな。だとしたらなんで俺には影響が無いんだ……?

っと、考察はまた後でいいか。


俺たちが話していても意識が無いからかこの女性に反応がない。外傷は切り傷と骨折くらいだが、外から見えない臓器がどうなってるのか分からない。破裂などしていたら一刻を争うだろう。まぁ、大量出血が見られないのが不幸中の幸いかな。


「アオ、お前は聖猫って種族だったよな。回復させるスキルとか持ってないか?」

「んー、ちょっと待って」


アオが目をつぶって集中する様子を見せる。


「あった、『ヒールLv4』。これで人間を助けるの?」

「あぁ、恩を売ってこの世界の情報を聞き出そうかと思ってな」


それと別にもう一つ目的がある。さっき狩った魔物の猪、正直あれを見ても美味しそうには思えない。料理とか味付けされてたらイケるかもしれないが、俺たちが料理出来るとは思えん。アオに任せてると全て生肉ってことになりかねない。だから、俺の衣食住の確立のためにこの女を利用するつもりだ。あわよくば、女に奉仕させて俺は食っちゃ寝生活を実現させよう。

ま、仮に反抗されたら脅せば従ってくれるだろう。こっちには猪倒せる頼もしいアオ様もついていることだしな! 強気でいくぞー。


「それじゃ、回復頼む」

「仕方ないわね、『ヒール』」


アオが投げやりにスキル名を唱えた瞬間、女性の体が傷つく前の体へ逆再生するように治っていった。


折れた腕も戻ってるし、呼吸も正常のようだな。ひとまず安心していいだろう。


「ふぅ、少し疲れたわ。なんでワタシが人間なんかを助けなきゃならないのかしら……」

「そういうなって、ありがとな」


ぶつぶつ文句いってるアオはあとで目一杯労うとして、この女性がこのまま起きるまで大人しく待つのは面倒だ。


「これアオのスキルのアイテムボックスに入らない?」

「死んでないと入らないわ」


ですよね。そこまで万能じゃないか。となると、叩き起こすしかないかぁ。


倒れてる女性の右側頭へ近づく。なかなか整った顔だな、泥や草などで薄汚れててはいるが。


右前脚で頭を小突く。……反応がない。

さっきより強く小突く。……またしても反応はない。

反応なさすぎてイラッとしたのでド突く。……すがすがしいほどに反応しない。


「こんにゃろぉ!」


もういいよ! 思いっきりビンタしてやらぁ!


仰向けに倒れてる女性の鎖骨辺りに飛び乗り、右前脚を大きく振りかぶる。

……ん? 女性の左頬に奇妙な紋様がある。ちょうどいいやそれを的にしてビンタしてやる。


力を込めすぎて右前脚に不思議な感覚がしたが、構わず右前脚を振り抜いた。


「へぶっ!?」


お? 意識が戻ったみたいだな。よかったよかった。かなり痛かったようで叩いた頰をさすってる。なんか頰の紋様が光ってるけど?


アオが驚いた様子で近づいてきた。


「すごいわねその人間、魔力を込めた一撃で死なないなんて余程頑丈みたいね」

「……魔力?」

「さっきアンタがやったじゃない。前脚に魔力集めて強化したでしょ? それが身体強化のスキル効果よ、さっきの一撃だとあの猪を昏倒させるくらい威力あったんじゃない?」


……そんなもん俺は人間相手に放ったのか。すげえなこの女性。そして軽々しく殺傷性高い気付けしてごめん。


「痛い……。え、なんで猫が乗ってるの? って!? どうして黒猫が私のご主人様になってるの!?」


女性がガバッと起き上がったから、俺は空中に投げ出される。が、すかさず体をひねり体勢を立て直して無事地面へ着地。うん、猫らしいことが出来た。ちょっと嬉しい。


「なに騒いでるのかしら、全く……。人間は騒々しい生き物だこと」


アオが憐れな眼で女性を見ていた。お前は異世界に来た時から順応性高いよな。羨ましいよ。

あと、女性が気になることを言った。俺がご主人様って? なんで?


「おい、ご主人様ってなんのことだ」


未だ錯乱している女性に向かって問いかけると、ぽかんと口を開けてフリーズした。

大丈夫か、コイツ? ポンコツじゃないよな? 現状についていけないだけだよな?


「……やっぱり黒猫がご主人様になってる……。なんで? いや、どうしよう?」


質問には答えないが、フリーズしたおかげで冷静になってる。現状を理解して焦っているようだが……。


こっちは会話が成立しなくてイライラするんだ。


「使えなさそうね、やっぱり食糧にする?」

「待て待て、もしかしたら俺たちの言葉が通じない可能性もある、もう少し試させてくれ」


自分で言って気付いた。言葉が通じないかもしれないんだ。会話が成り立たないのも不思議じゃない。


「あー、言葉分かるか? 分かるなら右手を上げて」

「ニャーニャー言う猫ちゃんがご主人様なんてわたし終わったかな……」


うん、ダメそうだ。


そういえば魔力を声に乗せて話すと言葉が通じるとかないか? お、なんかいけそうな気がしてきた。テンプレ作用が上手く働いてくれればいけるはず!


ビンタするときに魔力が集めれたあの感覚を思い出して口に魔力を込めようとする。そしてそのまま声に乗せる。



「おい、聞こえたなら右手をあげろ!」



言葉を発した瞬間女性の頰の紋様が輝き、ぎこちなく女性の右手が上げられた。


「あれ、なんで!? もしかして命令された!?」



……。分かったぞ。コイツ奴隷だな。声に魔力を乗せて命令すると、強制できる。あの紋様がさしずめ奴隷紋ってところか。それでそこに俺の魔力を当てたから、魔力が登録されてコイツの主人になったんだろう。着ている貫頭衣にも納得がいく。



ふっ、異世界に来てから、一時間も経たないうちに奴隷ゲットだぜ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ