第9話
「やばいっすよ!兄貴!高宮の奴らに銀次が、やられました!!」
あぁ、今朝完璧に僕をスタイリングしてくれたスタイリストの方を指揮した奴。
お前もじじぃに、キャスティングされたんだな。
「兄貴と俺飛鳥の飛翔コンビで報復してやりましょうよ!」
うん、君きのうまでクラスメイトでもなんでも無かったよね?すごいわかりやすい舎弟キャラって説明台詞ありがとう。僕らそんなコンビ名でやらせていただいてるのね。名前だけでも覚えて帰ります。
とりあえず黙っていれば今後の展開わかりそうだ。
テンプレ通りならそのいかにもな銀次くんが足引きずりながら教室に来るのかな?
「兄貴!やられっぱなしで黙ってちゃうちの株も落ちますよ!やってやりましょうよ!」
あれ?銀次くん来ないなぁ。だったら無視してもいいよな。
俺は立ち上がり、
「おい!高宮には手を出すな」
格好もつくすなんかめんどくさい事にならないようそう言葉を発しようとした瞬間。
「おい!」
までは、言ったかも知れない。
「行けねぇ兄貴!高宮の奴には手を出しちゃ行けねぇ!」
ボロボロの学生が教室に飛び込んで来た。頭には血の滲んだ包帯。片足にギブスをはめて松葉杖での登校。
初めまして銀次くん。とりあえず病院で安静にしてましょうよ。
ドラマや漫画でよく目にするけどさ、この状況あり得ないよ。メディアの方、これ映してよ。
警察の方何してるの?
フラッシュモブに巻き込まれた人ってこんな気分だよね、きっと。無理矢理フラッシュモブの中心にされたらなんか周りの目も気になって流れに逆らえない。
フラッシュモブでのプロポーズの成功してる動画観て、デキレースだろ?って思っていたけど、これは人間の心理を利用してる狡猾な作戦だと思った。
とりあえずじじぃの台本通りに物事が進んで行ってるのはわかるのだが、僕これどうすりゃいいの?
テンプレだとなんだかんだ言いながら高宮とケンカなんだろうけど、そんなの進路に響くよね?
大学と無形文化遺産。
どっちが将来安定するのか天秤にかけてみる。
ってか、そんな天秤存在するな!妄想するな!
これどうしたらいいんだろう。
飛鳥くんも銀次くんも味方のふりしてるだけでしょ?どーせ。
「うるせぇ、俺は俺のやり方でやる」
その言葉でとりあえず日常に戻ったのだが。
自分の言葉なのだが、言わされた感が強い。台本通りな気がする。
あのじじぃかなりやり手だ。
帰り道はすんなり帰れた。
家に着き恐る恐るケータイを手に取りニュースを見ると、
鳥居翔 ツッパリの抗争始まる!!
と、教室での出来事が編集されてBGMや効果音まで付けられたドラマみたいな動画まで載っていた。
どこにカメラがあったのか不思議に思ったが、動画撮れる術なんてみんな手に持っている。
今、この動画ニュースを見ているケータイだって、録画できるんだ。
くそっ!!
ケータイを壊れないように部屋で1番柔らかいクッション性の高いであろう枕に投げつけた。