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第1話

つまんねぇ。めんどくせぇ。

が俺の口癖だと思われている。

目が合う誰彼かまわずメンチを切ってタンカを吐く。


俺が廊下を歩けば下級生ばかりか、上級生すらも道を開け学校内に、俺の歩みを邪魔するやつなんかいなかった。俺にとっては世界で一番バリアーフリーな施設である。

こんな快適な空間を未来の日本、いや世界各地に広がってくれたら御老人方はどんなに過ごしやすい世の中になるのだろう。とか、考えていても廊下の端にいるやつらは


今朝の遅刻も商店街の寝坊らしいよ?

と、口にするのを知っている。

だから、今日もイヤフォンが大活躍してくれている。

好きな音楽を聴きながらただひたすら自分の世界に入り込み自分の席に向かうだけである。


いつからだろうか。

ただおれは無口でシャイな子供だった。成長と共に悪くなっていく友達に流され、真似をし、漫画から飛び出してきたようなツッパリスタイルに身を包んであた。初めはまさに虎の威を借りてたのだが、スポーツも上達の第一歩は真似る事と言ったあの指導者は流石である。

成長期を迎えいつから肉体もツッパリ恥じぬ大きさに成長して本物になっていた。

実を言うと市外のおれを知っている中学生の通わない高校に入学するまでは限りなく本物に近い偽物のつもりだったのだが、この新天地にて脱ツッパリをする予定だったのだが、自分の考えの浅さが悔やまれる。


噂のツッパリがテッペンとりにきたってよ!!


上級生の間ではその話題で入学式はもちきり、生徒手帳に書かれている通りの清潔感抜群の優等生な格好をしたピカピカの一年生は、お昼すぎにはテッペンでピカピカしていたのだった。


もうそれだけでこの学校は俺にとっては世界で一番バリアフリーな場所になり、翌日には借り物だったはずのツッパリファッションに身を包みひとりの時間を楽しんでいた。


席に着き教室を見渡すとやはり自分のまわりを避けるように不自然な空間ができてる。

先生、せめて俺の席を一番後ろのツッパリのテンプレ席にしてくれよ。

スクールカーストのテッペンが故の、最強故の孤独。


慣れてはいるのだが、やはりいい気はしない。

そんな俺の表情を見て


今日も不機嫌そうだ


そんな声が聞こえた気がした。

グラウンドに目をやる。いや、教室から目をそらしたいがための行動なのだが、

笑顔溢れる素敵な運動部の生徒達や登校してくる楽しそうな学生さんがいる。


あぁなりたかった。だから勉強だけはしっかりやって早々に俺はこの学校を去ろう。大丈夫。

ここは世界で一番バリアフリーであり、俺とゆう名の肉食動物と俺に怯える草食動物しかいないのだから俺から問題を起こさなければ何も起こらない環境なのだ。あと一年少し静かにひとりで過ごすことができれば、ツッパリと無縁の大学生になれるのだ!!

ツッパリは世間的にみても高校生が寿命なのだ。

ツッパリ大学生なんて聞いたこともない。


そんな誓いにも似た夢にニヤつきそうな顔を顔面の筋肉総動員で抑えつけていると校内アナウンスが流れた。


嘘だろ。

何一つ問題起こさないようにしてきた俺の名前を確かにスピーカーは発した。


鳥居翔君職員室に来なさい。


呼び出された。

思い当たる節は一つもないのに、


周りからは

やっぱりだの、退学だの、予想通りの声が聞こえてくる。

急ぎたい足をいつもどんな歩き方してたっけと考えながら職員室に向かう。今更、髪型や、制服で呼び出されるか?

成績?そんなはずはない。大学入試に備え学力は上の方でキープしている。カンニング疑惑!?

それはあり得るかもしれない。なにしろこの見た目だ。考えがそこに落ち着く頃には職員室の前にいた。

いつもより少し歩くペースが速かったのかもしれない。なにしろこの学校はバリアフリー。行きたい場所にも行きたくない場所にも自由にいける。


ノックをして、動揺を、悟られぬよう

失礼します!と小さく低い声で言った。

頭をあげると、教師が囲むようにしてる真ん中の老人が目に入った。


どこがで見たことある気がする。この人が俺を呼び出した?年上に呼び出されたことはあるがこんなにも年上に呼び出されたことは初めてだった。


そして、その唇が動きだす準備のためなのか口角付近の皺がにゅっと動いた


「君は、無形文化遺産、ツッパリに認定された!!」


状況が理解できない俺を教師達が見たことのない、いや俺に向けて出してくれたことのない笑顔を拍手ながらおめでとう!と各々が口にする。


昔見た、終わり方の意味のわからないあのロボットアニメのような光景だ。客観的に見ても意味がわからなかったが、体験してみてますます意味がわからなくなった。

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