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8・消えない傷

2人はお菓子店の前で少し話をして、お菓子を買った後、歩き出した。

黒髪の青年と、桜色の髪の少女…華人は、宿の外庭のベンチに座った。

青年は浮かない顔をしながら、むすっと座っている。

華人は買ってもらったお菓子を、大切そうに持っていた。

「…いただいても、いいですか?」

大きい瞳で、青年をじっと見つめる。

「…。おう。もちろん」

目を逸らして、彼は言った。彼の頬が少し赤い、どうかしたのだろうか。

はむ はむ はむ…

「にー♪」 

華人は最高の幸せの時間を過ごしているみたいだ。…何故に猫語?

その姿を見て、もだえている人間が1人。

「…やべぇ」

顔を隠すように、バッグにうつむせると、誰にも聞こえないような声で、ぼそっと言った。

先程から観察してみると、彼の行動がおかしいではないか。


華人はお菓子をちまちまと食べていた為、結構時間がかかった。

「ごちそうさまにゃー♪」

↑(華人です)おいおい。キャラ変わっているやんけ。もしかすると、幸せな時に猫語に

なるのだろうか。

「お菓子ありがとうございました。」

標準語に戻って、にこっと笑う。

華人の笑顔に戸惑ったのか、彼の表情が一瞬硬直する。

「…はぁー」

すると、青年からため息が漏れた。疲れた時にでるため息では無く、何かに迷っている

ような深いため息だ。

「??」

華人は不思議そうに、彼を見つめる。見ています光線を浴びている彼は、光線を放った本人に、顔を向けた。

ぱち

視線がぶつかる。ご機嫌な顔で華人は彼を見ている。すると、華人は真剣な眼差しで話し

始めた。

「あの…記憶のあの人って誰なのですか?」

突然本題になって少し驚きながら、彼は視線を落とした。


「・・・」


「分かんねぇ。……ただ、その記憶だけは、名前を忘れた時から覚えていたんだ」

「すんげー鮮明にさ」

華人はベンチに座り直しながら、彼の言葉に耳を傾けていた。

彼は自分の記憶を言葉にした。長い話だったが、華人は少しも飽きたそぶりを見せずに

彼の言葉に聞き入っていた。


「その時の記憶の俺はさ、悪ぶってるというか、かっこつけててさ、

たくさんの仲間とつるんでるんだ。色々めちゃくちゃな事を楽しがって

やってたよ。…そーいや、警察から逃げる毎日だったな。


けどな、理由は分かんねえけど、段々人が離れていってさ、結局は仲間全員に見捨て

られるんだ。


んで、はぶられた俺は、家に帰りたくねえからさ

いつもの場所に帰るんだよ。暖かくて綺麗な光が刺すとこ

そこは、風が舞う庭なんだ。

すっげー広い庭で、気持ちいい風が吹いててさ。

俺は風が舞う庭って呼んでるんだけど、本当は誰かの家の庭…なんだ。


その家の人達は、昔から俺に親切にしてくれたんだ。んで、そこには俺と同い年ぐらいの

女の子がいんのな。そいつはさ病気もちで、学校はほとんど休んでてさ、

友達がいないらしいんだ。だからそいつと友達になってくれってそいつの母親に

よく頼まれてた。けど俺は絶対ぜってぇーヤダって言って、断ってたな。


俺が口が悪くても、そいつの母親はいつも優しくしてくれんのな。

旨い飯も作ってくれるし、暖かい布団で寝させてくれた、俺を家族みたいに接して

くれていた。

そんな人達に甘えて、俺は普通に生活してた。


そいつとも結構話をしたな。すげー変な奴だった。

いっつもにこにこしててさ、俺が何をしても、びびんないんだ。

俺がいらいらしたから、そいつの気に入っている人形を破って捨てても

怒りもせず、泣きもせず「…キミのお望みのように」って寂しく笑って言うんだ。

親にも話さなかったんだと思う。俺は全くそいつの両親に叱られなかった。


俺はそいつをモノ扱いしてた、俺のストレス発散人形だった。

随分酷いこともやった。それでも俺の心は満たされなかったけど、


でもそいつはさ、俺がどんなに傷付けても「…キミが望む通りに」って言って

儚げに笑うんだ。俺が割った高いガラスのコップも、自分が割ったっていってさ。

俺が壊したもの全てそいつが片付けるんだ。

これでもかってぐらいやったぜ?でも全然へこたれやしないんだ。


はっきり言って、俺はそいつが嫌いだった。何良い子ぶってんだ、

気持ちわりいって、吐き捨てるように何度も言った。

けど駄目なんだ。


あいつは寂しく笑って「そっか…ごめんね」って言い続けた。


俺はあいつを認めたくなかった。良い子がこの世に存在するのが嫌だったんだ。

良い子の存在を認めてしまったら、俺が劣っている事を認めることになるから。

俺が駄目な奴だから、父さんも母さんも俺を捨てたんだって。

そんな事絶対認めない。この世に良い子なんて居ない。

この世に生きている人間、全員駄目な奴なんだ。

俺は別に劣っている訳じゃない。

俺が捨てられたのは父さんと母さんの牲だって何度も自分に言い聞かせた。


あいつに怒ってもらいたかった。もっと醜い所を見せて欲しかった。

あいつは綺麗じゃないって堂々と言いたかった。だからそいつに言ったんだ。

「…お前は綺麗じゃねぇよ。良い子ぶってんじゃねぇ。

気持ち悪いんだよ。とっとと失せろ!!」 って


そしたらさ、「そう…だよ。私、綺麗なんかじゃないよ」


「良い子でもない…。」


――ただの あなたの道具ものです――



・・・


それが嫌なんだよ


もっとびびって泣いて喚いてどうしようもないくらい暴れて滑稽な姿みせて見ろよ。


お前がそんなんだから、俺はいじめたくなるんだ


お前が汚ければ、お前の事、痛めつけなくてすむのにさ・・・



お前って馬鹿だな



「…。」

「道具なら本望だよな」

俺は、ポケットから切れ味の良く鋭い刃物を取り出して、そいつの首に近づけた。















お読み下さってありがとうございます!!

次回も宜しければ見て下さい。^^


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