表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/33

29・藍色の音

 

 綺麗な声・・・誰だろう。


 音憂はベットから起き上がり、窓を覗き込んだ。

 外からは蒼い空が浮かび上がっている。

 音憂は裸足で窓に足をかけた。

 ズルズルズルツ―! 

 窓からすべり落ちてしまった。しかし、ここは1階なのでそれほど怪我はしないと思われるが・・・。

 見事にぺたんとつぶれている音憂をまじまじと見つめる少女。

 「大丈夫?」

 綺麗で澄んだ声だった。

 音憂は顔を上げて、少女の顔を覗きこんだ。

 さらさらの蒼い髪が風に揺れる。

 「美人さん・・・」

 音憂は思わず心の声が出てしまった。

 「えっ・・・そんな事ないわよ」

 少女の頬が少し赤みを増した。照れながら、少女は音憂に手を伸ばした。

 「起き上がれる?」

 こくんと音憂は頷いた。

 窓の外、辺りには芝生が広がっている。さらさらとした草の上に、2人は立った。

 「あなたは、窓から出てきたみたいだけど・・・」

 少し気まずそうに、藍依は呟いた。

 そんな藍依をじっと見て、平然と答えた。

 「うん、私実験台なの」

 藍依は、はっとしたように目を見開くと、切なさそうに音憂を見た。

 「実験台・・・そう」

 藍依は目を落とした。

 「歌・・・」

 ぼそっと音憂は呟いた。 

 「聴かせて?」

 突然のリクエストに困る藍依。

 嬉しいけど・・・。ここは研究所よ・・・。あなたここからまた捕まっちゃうんじゃない?

 ふいに音憂の腕に目がいった。

 酷い傷・・・。実験台ってこういう事なんだ・・・。

 「ここじゃあ、駄目っ!私について来て」

 高らかに藍依は叫んだ。 

 思い切り走る藍依に必死について行こうとする音憂。  

 傷だらけの足を引きずって、走り出した。


 

 「ここなら聴かせてくれるの?」

 2人は広場のベンチに腰をかけた。  

 藍依は肩で息をしている。なぜなら、50m走のように思いっきり走ったからだ。 

 だが・・・

 「すごい、ね」

 音憂は平然としていた。まったく呼吸が乱れていない。

 何者なの・・・この子。

 「別にすごくないと思う、普通、正常」

 機械のように喋る、音憂を見て藍依は思った。

 実験台・・・という事は。

 もしかすると、この子が・・・?

 「あなた、もしかしたら華人はなびと?」

 恐る恐る聞いてみた。 

 「うん」

 「・・・」

 思わず息を呑んでしまった。想像していた華人の姿とは違ったからである。

 叫びたい衝動を我慢して、藍依は口をぱくぱくさせた。

 「お願いします!華人様!」

 藍依はベンチの上で土下座をした。

 「?」

 眉を寄せて、不思議がる音憂。 

 「私のママを助けてください!」  



 突然の頼みごとから始まった、音憂のミッション☆

 「私のママは研究所で働いているの、けどね本当はこんなとこにいたくないんだよ!ママは連れて行かれたの!ここに・・・っ」

 半泣きの藍依を見て、音憂はふうと息をついた。 

 「分かった、助ける」

 音憂はベンチから立ち上がった。くるっと振り返って藍依を見つめる。

 「いってくる」

 「・・・あ」

 音憂は目をキッと開いて研究所の方へ走り出した。

 余計な詮索はしない。これが音憂のポリシー。  

 藍依は流れる涙を拭いて、呟いた。 

 「ありがとう華人様・・・っ」



 窓からさっと侵入する音憂。かろやかな足取りで部屋に侵入する。 

 周りは騒がしい。

 「何が起こったやら」

 あなたがここから抜け出したからでしょう。

 「華人!ここにいたのか」

 さっそく見つかりました。さてどうする。

 「・・・」

 てこてこてこ…。 

 普通にスルーした。

 はい!もちろん追いかけてきました☆

 「待てぇ!華人ー」

 (待てと言われて待つ奴がいるのだろうか・・・)

 ふうとため息をつく。 

 そして足を止めた。

 えっ!本気で待つつもりですか!? 

 「ようし!捕まえた」

 あらら、どうするのでしょう。

 「フェイント」

 後ろから抱き付こうとする相手の腹に、肘で思いっきり衝撃を与えた!

 (ぐっはぁー! しかし逃がすものかぁ!)

 音憂の肩を掴もうとする。

 ぱちん☆

 はじかれた…。

 「今までずっと一緒にいたじゃないか・・・」

 いやいや、ずっとじゃないだろう。

 音憂はその声にまた足を止めたッ!

 これはもしや、感動の場面!?

 「覚えてない」

 ひゅるる〜〜。寒い北風が吹いた。(部屋の中なのに!?)

 たらりらり〜ら〜♪(絶望の曲を各自ご想像して下さい)

 

 

 「いた」

 358個目(?)の扉をぶっ壊した。どれだけ扉が多いんだこの研究所は・・・。

 そしてどれだけぶっ壊しているんだ・・・。破壊神に相応しい。 

 目の前には、蒼い髪の女性がいた。

 「華人…!どうしたのですか?」

 震える声で話しかけた。

 「過去透視、する」

 キイイイン!

 歯医者のような嫌な音が響いた!(嫌な音だ!) 

 音憂の頭の中には動画が流れた。あまり映りはよくないが・・・。

 その動画の中には、蒼い髪の小さな女の子がいた。 

 (このこは、あの子)

 ふっと目を閉じた。 

 「あなたが、ママだ」

 「?」

 女性をお姫様抱っこして、連れ去った。

 ミッションコンプリート☆



 「つれてきた」

 藍依の母をベンチに座らせた。 

 「・・・藍依」

 「ママっ」

 ひしっ!感動場面、親子の再会。

 「めでたし、めでたし」

 勝手にオチをつけ、うんうんと頷く音憂。

  すたすたすた…。

 音憂は何も言わずに去っていった。切り替え早ッ!

 「わぁ!駄目ですよ!華人様」

 藍依が呼び止めた。

 「?」

 「ぜひ、家に泊まって下さい!いいよね、ママ?」

 「そうね、ぜひお礼をしたいわ」

 音憂は無言のまま立ち尽くした。

 「歌聴ける?」

 藍依は満面の笑みをうかべた。

 「もちろんですっ!」



 これが音憂と藍依の再開のお話でした。ちゃんちゃん♪



読んでくださってありがとうございます!

今回は少しコメディーな感じで進めてみました。

最近暗かったので・・・。

とりあえずここから、彼に出会うまでを書き進めたいと思います。

たんたんとしている音憂ちゃんです。

実の所、抜け出そうとすればいつでも音憂ちゃんは研究所から抜け出せたのでした〜。

音憂ちゃんはまだ記憶を思い出していません。

どのタイミングで、思い出すのでしょうか?

宜しければ、次回も読んでください。^^



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ