表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

28・華人の想い


信じられない。信じる事なんて不可能だ。

目の前にある出来事に直視できない俺がいた。

冷たく紅く染まった音憂。

きっと、もう動かない。

もう笑わない、喋らない。

音憂は何処へ行ったんだろう。


「音憂・・・音憂」


起きるわけが無い。もう、2度と。

誰が、誰がこんな事を・・・。

ふざけんな、ふざけんなよ・・・!


俺は天華団体の実験室から抜け出して、音憂をこんなにした奴を探した。

ただ、がむしゃらに。

許せなかった。こいつを奪う事を。

怒りをそいつらに向けた。

許せない、もうどうにでもなれ。

こんな事して無駄だとしても、それでも俺はする。

許せないから、ただそれだけだ。



 *◆◇◆*


「我々の実験台に手を出さないで頂きたい」

白い白衣を着た、細い体つきの男が言った。

その表情はただ厳しく、冷酷だった。

男の前には、茶色の髪の少年が倒れていて、体中がぼろぼろだった。

「お前ら・・・ふざけんなよ」

低い唸った声で少年は言った。

少年の周りには薬が散らばっている、おそらく薬のせいで彼は動けないのだろう。

歯を食いしばりながら、少年は拳を握った。

――こいつらが音憂を・・・

「ん・・・?君、よく見たら精霊化の人間か?」

少年は瞳に力をいれて睨んだ。

「・・・だからどうしたんだよ」

その返答に男は驚きを隠せない。

「精霊化した奴は、いつ暴走するか分からない。さっさと封印しなければ」

男は目で合図し、長い髪の女性は少年に近づいた。

澄んだ藍の髪で、背には翼を生やしていた。

彼女は人工天使だった。

目を瞑り、呪文を唱えると光が少年を包んだ。

「彼は・・・月の精霊に摂りつかれています」

「そうか、さっさと削除しなさい」

殺す事になにも罪悪感を感じないような態度。

「ですが・・・」

彼女は戸惑う、精霊とは言えども殺す事には躊躇いを隠せなかった。

「何だ?早くしろ」

彼女は深くため息をついた。

そして、眩い光は彼を締め付けるかのように細い糸となった。

キ――ンツ

電波のような音が響いた。

「・・・っ」

彼は頭を手で押さえた。頭に音が響く。

高い超音波が鳴り続ける。



その時に彼の中の精霊が封印された。


同時に彼の記憶も封印された。



今、彼はただの人形になった。




 *◆◇◆*


――・・・? ここは何処?

桜色の髪の少女は診察台から起き上がった。

その少女に気付いたように、周りに白衣を着た女性が近づいた。

「華人…実験成功です」

周りに明るい雰囲気が漂う。

その雰囲気に戸惑いを隠せない少女が呟いた。

「ここは何処?」

しかし、彼女の声に答える者は居なかった。


少女は様々な訓練を受けた。


華人としての力を試された。


彼女は実験台だった。



少女は時が過ぎても、少女のままだった。


年を取らずに生きていく。


半永久的に。



華人はなびとという言葉が世界に広まった頃。

桜色の髪の少女は、自分の記憶を取り戻してきていた。

しかし、誰にも話さずに心に留めていただけだった。

話したら、また再検査をさせられると思ったからである。


日常のように診察を受けた後、少女はいつものように窓を眺めていた。

窓の向こうには桜が咲いている。

いつもどおり景色。

1年中咲く桜。人工的に作った桜だからだ。

しかし、今日はいつもと違う景色が映った。

蒼い綺麗な髪、さらさらと風に靡いている。

歌が聞こえる。

これは華人の歌だ。

今、華人は宗教化して、世界各地で歌われている。

「綺麗な声・・・」

少女は初めて心動かされた。

綺麗で、純粋な声に。


初めて少女は、彼女自身の意志で動き始めた。






読んで下さってありがとうございます!

彼視点少ない!出番少ない・・・。

今回は華人として生きている頃の音憂ちゃんです。

少しずつ音憂の頃の記憶を取り戻しています。

人の心が分かる花と音憂ちゃんを混合させた種族が華人なので、華人は人の心を読む事ができます。

そして、音憂ちゃんは永遠の少女です!

年をとらない設定です!

後、華人の実験はまだ音憂ちゃんしか成功されていません。

歌を聴いて心動かされる音憂ちゃん。

蒼い髪で、歌が上手いといえば・・・?

次回も宜しければ見てください。^^




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ