表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/33

24・彼女の希望

獅樹くんは変わってしまった。もう、人間ではない・・・。


私はその後色々教えてもらった。獅樹くんの病気。

元々獅樹くんは体が弱かったらしかった。

それは悪霊に侵食されているからで、何故悪霊が獅樹くんに近づいたかというと、獅樹くんのお母さん――葉樹さんは精霊契約のできる人、精霊士だったからという事だった。

今は精霊との契約を打ち切っているから、もう関係ないと思って、精霊士の使う杖を葉樹さんは捨ててしまった。

しかし、その杖には精霊が宿っており強力な力が込められていた。つまり精霊は見捨てられたと思い葉樹さんを恨んだ――。その結果が今の獅樹くん。

もう完全に精霊と融合してしまったらしい。


私がこれらの事実を知ったのは3ヵ月後。

私はショックで倒れてしまっていた――。


 *◆◇◆*


「うっ」

少女は痛々しい声を響かせた。記憶が巡っているのだろうか。

荒々しい呼吸をして、顔を伏せた。

「これ以上見せないで!」

これからもっと苦しい記憶が待ち構えているからだろうか。

「獅樹くんは、ずっといるから…私、独りじゃないから。大丈夫…大丈夫。」

少女は一筋の涙を流す。

「獅樹君は消えてなんかいない!」

少女は叫びだす。目の前にある現実を受け入られないように。

「これ以上、思い出させないで…私の心の中の獅樹くん死んじゃうから…」

そう言って、貰った指輪を手の中にうずめて泣き叫んだ。


それでも記憶は再生される。

これは死した者の使命だから。過去を受け入られる強さを持たないといけないから。

二度逃げる事は許されないから。


 *◆◇◆*


「おはよう。音憂」


・・・真っ暗だ。

何も見えない。獅樹くんがいなくなっても朝は来るんだね。

時は進むんだね。

神様、戻して欲しいです。獅樹くんが居る時に。

そして、時を停めて欲しいです。そしたら永遠に一緒だから。


――獅樹は死んでいないよ。


だれ…?


――獅樹のために生きてみなさい。獅樹を幸せにするために、生き抜いてみなさい。


獅樹くん、死んでないの?


――心を隠されただけだ、獅樹自身は近くにいる。救ってやりなさい、導いてやりなさい。


どうやって? 教えて、教えて下さい。


――もちろん教えてあげるさ。 音憂。君は彼のために命を懸けられるかい?


・・・獅樹くんが幸せになれるなら。



――それならこうすればいい。これから君は――



 *◆◇◆*


ばっ!少女は布団から飛び起きた。

すると彼女の母親が、悲しそうな複雑な表情をみせて話し始めた。

小女は「もう知っているから大丈夫だよ」と微笑んだ。

2人が歩いて向かったのは亡き父親の部屋だった。

「ここに、いるよ」


扉を開け、部屋の中へ入る。

少女の視界に映るのは、金髪の少年。後ろ向きで顔は分からない。

「初めまして、私、音憂って言います」

きょとんとした表情で音憂を見つめる。

「あなたとお友達になりたいです」

少女はにっこりと微笑んだ。初めからやり直す事も受け入れた。

金髪の少年の顔が獅樹だとしても。

彼が自分を忘れていても。

彼は人間でなくても。


彼が幸せになるために、少女は自分の全てを懸けて、生きていった。








お読み下さってありがとうございます!

音憂の記憶が再生されています。

これは音憂の過去を読者様に伝えるという理由もあってなのですが・・・。

音憂は苦しんでいます。彼女が決めた事とはいえ、獅樹を失う事は一番辛い事なのです。正確には獅樹が梓月と同一人物と改めて知る事が、ですね。

梓月はきっと、華人の事なんて忘れて藍依ちゃんと幸せに暮らしているのではないでしょうか・・・?


次回は神様(?)と以心伝心した音憂ちゃんに隠し能力が授けられます。

宜しければ次回も読んでみて下さい。^^


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ