21・仕組まれた恋
綺麗な空だな・・・。
風は気持ち良いし・・・っつーかここどこ?
・・・えーっと
あぁ。そうだ。
藍依と一緒にここに泊まったんだっけな。
ん?他に誰かいたような・・・。気のせいか?
っていうかさ、藍依何処だ?
お!いたいた。
・・・ん?なんか倒れてるし。大丈夫か?
*◆◇◆*
「藍依!どした?」
梓月は藍依に近づいた。
藍依はの服には泥がついていたり、所々破れていたりしたが怪我は無さそうだった。
「・・・?梓月だ」
梓月をじっと見つめた。
「おう。藍依だ」
お互いに顔を見合わせる。
「・・・何か不思議。変な感じがする」
藍依は何故か心がスカスカしていた。
大切な何かを失ったような感覚。
「あぁ。俺も思った」
沈黙が訪れる。
「何が変なんだろう」
「んー。何だろうな」
2人は思考を巡らせる。
藍依は、何故か分からない事について考える自分達が変に思えてきた。
「っふ、あははっ。何か私達可笑しいね」
藍依がふいに笑い出す。
「まぁ、いいんじゃね。お互い何事も起きてないわけだしな」
お互いが無事に生きている事にさえ何故か安心していた。
「というか、私なんであんな所で寝てたんだろう?」
「俺なんてコンクリートで寝てたぞ」
「あははっ。それ、梓月らしいね」
「それ、どういう意味だよ」
梓月と藍依は軽く言葉を交わした。お互いに気を遣わなくていい、自然体で話す事ができる数少ない存在だった。
何かが可笑しいなんて、誰も気づかなかった。
その記憶さえなくなっているのだから、気づくはずもない。
「そういえば、私達今まで何をしていたんだろうね」
「あぁ。あれだろ、あれ」
「?」
「デートだろ、俺達の」
冗談まじりに梓月は言った。
「ばっ!ばか。何言ってんの」
照れているせいか、ぽかぽかと梓月の背中を叩く。
梓月はごめんごめんと悪戯っぽく笑った。
「藍依。ありがとな」
梓月はにっと笑って藍依を見る。
彼のふとした笑顔にどきっとする。
「・・・え」
「お前が居てくれて本当に良かった」
「それは…私の台詞だよ」
呟くように藍依は言った。
「ん、どういう意味?」
「なっ何でもない! う〜…。
しっ梓月ってさ、これから…どうするの?」
藍依は声が裏返りながら、話題を変えた。
「どうもなにも。ま、適当に働いて、気楽に生きてくつもりだけど」
「適当に働くって、何して?」
「んー。郵便屋とか?」
「あぁー。梓月に合ってそう!」
その時の記憶は2人には無いらしい。
「…でもね」
照れながら藍依が言った。
「梓月には、私の村で働いて欲しいなって思って」
「へ?」
「い、いや。もしよかったらなんだけどね。
あのね、私の故郷の村、フェリスっていう村なんだけど、そこに梓月が居てくれたらいいなって思ったり…して」
梓月は興味なさそうに藍依を見つめた。
「ふーん」
その表情を見て、藍依は少し落ち込む。
「来てくれる訳…ないよね」
藍依は肩を落とした。
「そんな所、興味ねぇし」
梓月にしては冷たい口調で言った。
無性に悲しくなって、泣きたくなる。
「そっか…何かごめ」
「どんな場所でも構わねぇよ。藍依が望むならどこでもついていくから」
そう言って藍依を抱きしめた。
「…わっ」
梓月は藍依を高く持ち上げた。
「…藍依――
*◆◇◆*
梓月は藍依を。藍依は梓月に、互いに惹かれていった。
何か、そして大切な誰かを失って手に入れた恋。
彼の恋は錯覚したものかもしれない。
間違えがあるとするなら、彼が少女を忘れていなかったら
少女以外に惹かれていかなかった事。
誰かによって操られた心、それ故に結ばれた恋なのかもしれない。
その恋を結んだのは誰? 望んだのは誰?
彼と彼女を出会わせたのは誰・・・?
お読み下さってありがとうございます!
梓月くん全く華ちゃんの事忘れていらっしゃいます!(笑)
あんなに華は彼のことを想っていたのに・・・。
ついつい作者自身、悲しみというか憎しみを抱いてしまいます(笑)
彼は藍依ちゃんを好きになってしまいました。
見事にあの子の戦略に引っかかりました、という事です。
彼女はこの結果を望んでいたのです。
彼が1人にならないように。だれかと幸せになって欲しいから。
だから藍依ちゃんと梓月を引き合わせたのです。
彼女には未来を予知する事ができるから、その力を利用した作戦です。
初めて会ったその日から、こうなる事を望んでいたのです。
宜しければ次回も読んでみて下さい。^^