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15・惹かれていく心

前回のあとがきに書いてしまったのですが、

彼は暴れません。すみません!

立ち尽くす少女がいた。

目が黒く澄んでいて、瞳に宿る光…生気が全く無く、遠い所を見ているようだった。

可能性を信じる事よりも、絶望に酔いしれていた。

そんな華を見て、少し罪悪感を感じながら耳元で囁いた。

「ま、俺はお前の敵じゃねぇから仲良くしようぜ?」

声が届かなかったように、何も反応が無かった。壊れてしまった人形のように、

ただ遠くを見つめていた。

「・・・」

その時扉が開いた。

「あれ?おはようございます…華人様。それと梓月!おはよっ」

梓月の泊まった部屋に、華が居るのに戸惑いながら、にっこりと藍依が部屋に入ってきた。

こういう時もちゃんと先に華に挨拶をするのだ。

華人を見て何かおかしさを感じたのか、不満な顔を表す。

「ちょっと梓月!何華人様を悲しませているの!何かしたんじゃないでしょうね!?」

怒るように言葉をかける。でもその言葉は本気では無かった。

今まで見てきた彼はそんな事をするとは思っていなかったから。

「よぅ、藍依。いやちょっとさ取り込んでてさ」

そう言って困ったように頭を掻きながら、屈託の無い笑顔を見せる。

その姿に安心して、からかったように喋りだす。

「華人様に失礼ない様にね!それでは、先に1Fのレストランに行ってます。華人様」

前の藍依とは思えない、元気な素振りを見せた。

華の前ではねこかぶっていた、という事もあるかもしれないが梓月に心を開いてきた、という理由もあるのだろう。

「あぁ、分かってるって。後で行くよ」

そう言って、手を挙げた。にっと笑って藍依は扉を閉めた。


 *◆◇◆*


「上手いだろ、華?」

華の顔を覗き込んで、にやりと笑いながら話しかけた。

そんな彼をお構いなしに、時が止まったように立ち尽くしている。

「…反応なしかよ」

つまらなそうにすると寂しげな表情を一瞬浮かべた。

そして何か浮かんだように、にっと笑った。

「華!」

彼みたいな優しい声で、名前を呼ぶ。

その声を聞くと、心にぽっと火が灯るようだった。

はっと意識が戻ったように目を開く、いつものような綺麗な瞳に戻る。

「…えへへ」

微かに笑う、本当の彼ではないと分かっていながらもその声を聞くと安心してしまう。

笑顔が勝手にこぼれてしまう彼の優しい表情。

華の笑顔は天使の笑顔みたいに可愛らしかった。

笑顔を返された死月は、嬉しさと恥ずかしさが混ざった複雑な気持ちになった。

そんな華を見れるなら、あいつのフリをしてみてもいいかもしれないと死月は思った。

「…なんて、キミじゃないのに…ごめんなさい」

華は切なさそうに笑う。彼の代わりにして申し訳ないという気持ちが表れた。

「精霊さん。自分の事は自分で守れます。それに藍ちゃんもいるから…

あなたはあなたの世界へ…戻りたくないのですか?」

死月はふっと笑って答えた。

「精霊界はもう飽きた。俺は、お前とこの世界で時を過ごす。天使の力で永遠に生きることだってお前にできるだろ?

後もう1つ、この世界を無にする。人なんてこの世界のゴミだ。排除するべきだ。

人間にあんな事されたお前が一番分かっているだろ?」

ざっと悲しみの過去が華の頭をぎった。

――いやぁ・・・!やめてえ・・・っ!

紅い血、されるがままの記憶。

それを思い出すだけで心が締め付けられる。

でもその苦しさを前向きに考える。

「…彼らを消すっていう選択は選びたくないんだ。それは…逃げた事になると思うから」

苦しそうな声で呟く。

そんな華を尊敬するかのように見つめた。

「ふーん…つまんねぇな」

「でも、私を守る為に彼を失う事。私、納得できないから…だから」

その言葉を遮るように彼は話した。

「…いいよ、分かってる。お前の敵を全部排除したらあいつに返すよ」

ぽんと手を華の頭にのっける。

そして彼みたいに、優しく微笑む。

彼の意外な優しい態度に華は心を動かされた。

「腹減ったし、食いに行こーぜ」

明るい声で華に話しかける彼。

部屋から出て彼の後ろに、華はてこてことついて行く。

彼の背中を見つめて華は思った。


私は、どのキミが大切なんだろう・・・。

誰をずっと想っていたんだろう。

おかしいね・・・。

もう、分からなくなっている。






お読み下さってありがとうございます!

彼が暴れる予定が、優しくなっています・・・。

心が揺れる華です。

昔からの知り合いの彼、精霊の彼、華はどちらを

大切に想うのでしょうか。

華に待ち受ける天使の宿命とは何なのでしょう?

次回も宜しければ、見てください。^^





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