花森翠のアシストキング
オレの友人の設定上の姉である花森翠さんとばったり大学で会った時のことだ。それまで隣を歩いていた同じ学科の女子に別れを告げると、ミドリさんは尋ねた。
「今のって、大樹くんの彼女さん?」
「いや、違いますよ。普通に同じ学科の女子です」
「そうなんだ」
オレが否定すると突然こんなことを聞いてきた。
「大樹くんって、彼女とかいないの?」
「特にいないっすね」
「ちょっと意外だよね。モテそうなのに」
「それ言ったら、ミドリさんだって相当に意外ですよ」
これだけの美人を周りが放っておくはずないからな。大学を歩いているだけで注目されそうだ。
「ミドリさんこそ、よく告白とかされるんじゃないですか?」
「よくはされないけど、最近同じゼミの後輩からデートに誘われたことはあったな~。もちろん、丁寧にお断りしたけどね」
流石だなミドリさん! ここ最近であったってことは、今までもそういうことがよくあったことだろう。
そういうときの対処方法に興味を持ったオレは、ミドリさんに質問をした。
「そういう時って何て言って断るんすか? 結構断り方って、難しいじゃないですか? 『ご飯行きましょう!』とかだけなら、尚更っすよね?」
好意があるとかだけじゃなくて、普通に付き合いで誘ってる場合もあるもんな。相手の気分を害さない断り方ってのは、思ったよりも難しい
「以前は、理由を考えるのもそこそこ苦労したんだけど、今では楽になったんだよ!」
「へぇ、どんな?」
「『愛してやまない弟のご飯を作らなきゃいけないから』とか、『今日は弟を愛でなきゃいけないから、お付き合いできないの』とかかな!」
「そ、そっすか……」
そう言ってミドリさんは頬に手を当てて幸せそうな顔をする。
オレの友人の姉がブラコンすぎる!
知らぬところで助けとなっている存在の翔平であった。