町田大樹、疑心暗鬼
「町田くんみたいなチャラさを手に入れるには、どうしたらいいのかな?」
「……は?」
以前知り合った桜井桃果とばったり大学で会った時のことだ。挨拶をして早々にそんな失礼なことを言いやがる。
「いや、いい意味でだよ? いい意味で。町田くんって今時の『the リア充大学生』って感じじゃない?」
「全然褒められている気がしねぇんだけど!?」
何なんだよ、こいつも翔平もよーー! 好き勝手言いやがって!
「ごめんごめん。ほら、町田くんって人とのコミュニケーション能力が高いじゃない?」
「最初からそう言えってんだ」
「わたしって、初対面の人に結構人見知りしちゃうタイプだからさ……。緊張すると言葉が噛み噛みになったりするし……」
「そうか? オレはそうは思わねぇけどな? 桜井とは普通に話しやすかったしな」
知り合った日も、そこまで苦労せず会話を弾ませられた気がするしな。自分に自信がないだけなんじゃねぇの?
「道行く男の人をナンパすることだってできないし……」
「オレもいきなりそんなことはしねぇよ……」
「男の子の友達を百人も作るなんてできないし……」
「流石に百人も女子の友達いねぇよ?」
「目当ての男の人の肩を掴んでいきなり愛を表現するとかもできないし……」
「オレもそんなことしねぇよ!?」
そこまでの積極性求めてるの!? いきなりレベル高すぎだろうが!
「はぁ。アプローチって難しいよね……。どうやったらもっと意識してもらえるのかな?」
「……地道に仲良くなればいいんじゃねぇの? お前の良さはその控えめでおしとやかなところだろ?」
おしとやかとは違うかもしれんがまぁ、似たようなもんだろ。純粋で女の子らしいところが桜井の魅力なんだから。
「町田くん、女の人を褒めるの上手だね。流石だよ!」
「これは……褒めているのか?」
素直に賛辞を喜べないオレであった。