設定姉弟たちと色の奇跡
「僕らって、色の名前を持つ女性と縁がありますよね。ミド姉は緑色、モモは桃色、みたいな」
ミド姉と一緒に喫茶店にいるときに、俺は思いついたようにそう言った。
「ホントだね! 朱里ちゃんも朱色だもんね! 全然気づかなかったよ!」
「そうですわね。このような珍しいこともあるものなんですね」
「ね! しかも翔ちゃんにとってはみんな今年に会った人たちばかりだもんね! これって奇跡に近くない!?」
アルバイト中の緋陽里さんも話に加わり、ミド姉は更にテンションを上げる。ここまで共通点があるなんて、すごいよな。ちょっとした巡り合わせに感動すら覚える。
「あれ? けど、そうなると緋陽里さんだけ色が含まれていないですね。惜しいですね~。これで色が入っていたらもっとすごかったのに!」
「いえ、一応わたくしも色の名前が入ってはいますよ?」
「え?」
俺の発言を訂正する緋陽里さん。緋陽里さんに含まれている色の名前......。あ、もしかして!
「そうですわ。わたくしの『緋』という字は緋色のことですわ。あまり馴染みがないかもしれませんね」
「確かにそうですね! あの、赤に近い緋色ですよね?」
「二人とも二人とも! 私、更に、陽ノ下姉妹は二人とも赤色に近い系統の色の名前を持っているって気づいたの!」
「確かにそうですわね。名前を授かる際も、その辺を意識してつけたとお父様は仰っていましたわ」
本当だ。言われてみれば、そうだな。朱色も緋色も、赤色の系統だ。だが、それに留まらず、ミド姉は更に興奮して話を続ける。
「しかも、それだけじゃないんだよ! なんと、私たちの苗字に含まれるモノのイメージカラーは、名前に含まれる色をしているって気づいちゃったの!」
「え? どういうことです?」
「例えば私の場合、『花森』の『森』のイメージは緑色じゃない? 同じく、『桜井桃果』の『桜』は桃色、『陽ノ下』の『陽』っていうのは、夕焼けを表す赤色なの! これってすごくない!?」
「本当ですね! すごいですわ!」
これには、緋陽里さんも驚いたようで、口元に手を当てて驚きを示す。すごいな! 俺の想像を超えたここまで奇跡的な巡り合わせがあるなんて、運命を感じざるを得ないな!
「まるで、わたくしたちを取り巻くこの世界が、誰かの創作したもののようですわね。大いなる意志を感じますわ」
緋陽里さんは何気なくそう言った。不思議と俺もそのような感覚を覚え、あながち間違ってはいないんじゃないかと考えるのであった。




