町田大樹と腐った果実
「町田くんは、自分から行くタイプ? それとも、待つタイプ?」
駅前のスーパーに買い物へ来ているとき、友人である桜井桃果と入口でバッタリ会った。店内に入り、食材コーナーへ向かう途中に桜井が唐突に恋愛トークを始めたのだ。
「オレか? そうだな……。どっちかというと、オレは自分から行くタイプだな。まぁ、待ち側であることも多いっちゃ多いけど、基本的に惚れた奴には自分から攻めたいじゃねぇか」
「ふむふむ、なるほど……」
桜井は、オレの話を真面目に聞いて頷く。
「翔平に対しても、断然攻めで行った方がいいぞ!」
「……」
消極的な桜井に対し、同じく消極的な翔平にアプローチする姿勢をアドバイスしてやると、桜井は顔を赤らめて下を向いた。
「やっぱり翔平くんに対しては、攻めなんだね……」
「あぁ、そうだな。ガンガン行こうぜ! てやつだな」
「……! 町田くん、積極的だね! うわぁ、どうしよう。やっぱりそっちの展開の方がいいかなー! 翔平くんが受けか~!」
「おい、ちょっと待て。お前、今、何想像してんの?」
既視感を覚えるやりとりに、オレはツッコミを入れる。すると桜井は慌てて否定を入れてきた。
「違う違う! これは違うの! これはその……、町田くんが『攻めで行った方がいい』って言うから!」
「てめぇ! やっぱりまたオレと翔平でよからぬ想像してやがったな!!」
なんでそう簡単にBL展開に持っていこうとするんだこいつは! お前、正常な恋愛してるんじゃねぇの!? そんなに腐ってていいのかよ!
「どんな風に愛を囁いていくのかな? かな!?」
「囁かねぇよ! 自分の想い人にそんな想像してんじゃねぇよ!」
「あ! そうか! はわわどうしよう! 町田くんもわたしのライバルになっちゃったよ! 渡さない! 翔平くんは渡さないよ!」
「いらんわ! オレにBL趣味なんてねぇっつーの!」
「けどどうしよう! ちょっと見てみたい気もしないでもない!」
脳内お花畑の妄想家にドン引きし、顔を引きつらせて店内を歩く。
結局この後、最初の質問など、話題にはあがらなかったのであった。




