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職場発見?

かなり前に書いていたのを見返してまた書き直したくなったので投稿しました。ぜひ最後まで読んでいってください‼︎まだ完結はしませんけど。

「まあ、ここで説教しても仕方ない。さっさと職を探さないと」


「私、今説教されてたの?それにしては迫力がなかったわね」


「迫力がなくて悪かったな!……というか、今はそんなことどうでもいいんだよ。早く仕事を見つけて、金を稼がないと」


「でも、仕事なかったんでしょ」


「うぐっ!……ていうか何でそれを知っているんだよ」


「女神だから当然じゃない」


 訳がわからん。しかし、まあ、一応ここは異世界なわけだし、訳がわからんことがあるのは仕方ないが……。

 どちらにせよ、今はそんなことどうだっていい。確かにイシュメルの言っていることは事実であり、どうにかせねばいけないのだからな。

 そう思えばすぐ行動。善は急げだ。


「にしてもお前、その手に持っている肉、どっから取ってきた?」


 そうイシュメルに訊くと、


「そそそ、それは女神だからよ……」


 と、意味ありげな慌て方をした。

 こういう慌て方は、大抵なんか面倒なことがあって、それをなんとか誤魔化そうとしているとしか思えない。

 しかし今は置いておく。もっと大事なことがあるからな。


 それから、先程仕事を探していた大通りに出た。しばらくは、街の中心に張り出されていた求人募集とにらめっこを敢行していたのだが、見事に撃沈した。

 ……後に聞いた話だが、簡単な仕事は求人するまでもないらしい。そりゃあ、簡単な仕事なら誰でもできるからな。

 そのため、どの仕事も有能な奴を求めているらしく、必要ステータスはかなり高い(俺目線だが)。

 どうしようかと街をぶらついていたら、誰かに呼び止められた。

 振り向いて見れば、顔にシワをいくつも寄せている中年のおっさんが立っていた。


「な、なんでしょうか?」


 見知らぬ人からいきなり呼び止められたということもあり、少々焦った。それは、こういう時は面倒ごとが多いと相場が決まっているからな。


「おい、そこの嬢ちゃん。ちょっと待ちな」


 俺のことは無視かよっ!


「なに?私に用がある人なんて誰もいないはずだけれど」


 イシュメル、そのセリフはなんか秋愛を感じるぞ。


「そんなわけあるかっ!!俺の店の焼き鳥盗んだのはお前だろ!!その憎たらしいほどの美顔を忘れるわけないだろ!」


 そう(まく)し立てられると、イシュメルは目を逸らした。

 露骨すぎんだろお前ぇぇ!


「そういうことだから、弁償してもらおうか」


 これはマズイ。金がない俺たちがすることは……。

 ……いや、待て。これはイシュメルのやったことだ。俺はあくまで関係ない。

 そういう風に自己解釈した俺は、そそくさにこの場を立ち去ろうとした。

 一応、彼女は女神なのだ。幸運の女神ではないにしろ、女神つながりなのだからなんとかなるだろう。

 そう思い、回れ右をしようとしたときだった。

 ガシッ。

 ……おいおい、勘弁してくれ……。

 そう、俺は何たることか、この目の前の女神に手を掴まれたのだ。この知恵が働いていなさそうな不幸の女神にな。

 俺はその女神に小声で、


「俺は関係ないだろ!お前が犯した罪だろ!その償いはお前だけでやるべきじゃないのか?」


 と言い、イシュメルの手を引き剥がそうとした。

 しかし、伊達に女神を名乗っているだけじゃないのか、もしくは意地なのか、掴んでいる手は簡単には離してくれそうにはない。イシュメルの顔は前を向いていて見えないが、おそらく必死なのだろう。

 しかも、向こうのおっさんも訝る目でこちらを見ている。

 ……マズイ。

 本日何回目かわからないぐらいの一抹の不安がよぎる。

 そして、その不安は見事に的中する。


「おじさん、この人も共犯者です」


 コイツ……言いやがったな。

 イシュメルが引き留めた時点でこの展開は予想できた。

 しかし、現実世界でこんな経験は、おそらくごく普通の高校生であった俺はしたことがなかっただろう。そのため、心のどこかでそんなはずはないと思っていた。だから、こういう濡れ衣を着せられた時はどうすればいいか、わからなかった。

 だが、共犯者にされてしまった以上、迂闊なことはできない。

 仕方ない。コイツの罪を一緒に償ってやろう。

 ……後で覚えていろよ……。


「すいません、つい美味しそうだったもので……」


「共犯者がいることは別にいいが、弁償してくれるんだろうな?」


「い、いやぁ、実はですね、僕らお金がなくて……。それでつい盗んでしまったんですよ」


 それを聴き、おっさんは一瞬シワを眉間に、これほどかというほど寄せに寄せまくったが、


「まあ、そんなところだろうとは思ったがな」


 と言うと、顔は多少緩んでいた。それでも威厳はあるが。


「じゃあ、うちの店で働いて償ってもらおうか」


 ……はい?


「それは私に働けと言いたいのですか?」


「そうだ」


「それなら私は無理ですね、非常に残念ですが……」


 何を言ってるんだコイツは?


「実は私、副業禁止の職業を持っているのです」


 おいおい、そんな嘘があのおっさんに通じると思っているのか?


「ほぉう、そうか。なら、こっちのにいちゃんに嬢ちゃんの分も働いてもらうか」


 そうだそうだ、嘘が通じるわけな……え、今なんて?



 ******



 ……俺は今、グリルの前でひたすら肉を汗水流しながら焼いている。

 ああ、甘いが少しピリ辛なタレのいい匂い……。食いてえな……。

 ……はっ、いかんいかん。焼き鳥は焼き加減とタレのつけ具合が一番大事なのだ。ここでミスるわけにはいかない!


 ん?

 どうしてこうなったかって?

 イシュメルはどこかって?


 ああ、そうだな。

 1つ目の質問は簡単だ。あの後、イシュメルは、


「では私は用事があるのでお先に失礼!」


 と言い、逃げた。あのやろう次会ったら覚えてろよ。

 だいたい、おっさんもなんであんな嘘に騙されるんだ?

 ……いやまてよ。もしかして、嘘だとわかっていたのか?だとすると俺はなんでこんな目に遭わなくちゃいけないんだ?

 俺は元々無実なんだぜ。完全に冤罪だ。

 いや、ここはポジティブシンキングでいこう。そうか、こうやって冤罪はできるのか!また一つ社会の闇を知ったぞ!


 ……。


 冤罪かけられてポジティブになれるかっ!

 ……なんか今の境遇にムカついて来たぞ。

 俺は他にやらなくちゃいけないことがあるんだ。焼き鳥なんて焼いてる場合じゃねえ!!


 2つ目?さっき言った通りで、イシュメルは逃げて、そのあとは分からん。解せぬ。




 ******




「ありがとう……ございましたぁ……」


 日が傾き、客足がようやく途絶えた頃。


「お疲れさん」


「うひゃぁ⁉︎」


 突然、何か冷たい物が俺の頰に触れる。

 変な声が出てしまったことに少し恥ずかしく思いながら、声をかけられた方に振り向くと、そこには俺の店長……いや、俺にこんな重労働を強いる鬼畜おっさんがいた。


「いやぁ、大変だっただろう、人が多くてな。今日はな、1年に1度の夏祭りがあるんだ。」


 そういえばイシュメルがそんなことを言っていた気がしないこともない……。


 ……ていうかやっぱり人多かったんだな……。

 昼頃から客の終わりが見えないくらい多かった……。


「そんでな、これは何……(ねぎら)いってやつだよ」


 と言いながら、おっさんはグラスに入った山吹色のシュワシュワした液体を俺に手渡した。

 それを手に取りながら、仕事(不本意にも押し付けられたものだが)を終えたばかりで、何でもいいから早く喉を潤したかった俺はそれを何の迷いもなく飲んだ。


 ……味は……飲んだことない味か……?


「なんすか、これ?」


 そう問いかけながらもう一口飲もうとしたところで、


「なんだ?知らねえのか?うちの町名物のカイムの実のビールだ」


 ブフウウゥゥゥゥッッ‼︎‼︎


 つい、吹き出してしまった。


「お前、汚ねえぞ‼︎」


「おいおっさん!なんてもん飲ませてんだぁぁ⁉︎⁉︎未成年にはな、飲酒禁止法ってのがあるんだよっ‼︎」


「ミセイネン?……なんかよくわからねえこと言ってんじゃねえぞ‼︎人の厚意なんだから四の五の言わずに飲めっ‼︎」


 そう言うとおっさんは俺にビールを飲まそうとグラス、いやジョッキを口元に押し付けてきた。


「だあぁぁ‼︎わかったわかった‼︎飲むから落ち着いて飲ませてくれええぇぇぇぇ‼︎」







「……そんで、俺はお酒を飲んでいいのか?」


「なんでそんなこと聞く?」


 あれから数分後。

 お互い落ち着きを取り戻した。


 ただ、俺の方は頭がぼんやりとしているが。


「俺がハッキリさせたいのは、俺の年齢でお酒を飲んでいいのか、と言うことだ」


 俺にとってこの質問は大事だ。なんせ、お酒は大人が飲むものという固定観念に縛られていたからな。


「お前、見た感じ16ぐらいだろ。なら問題ねえ」


 マジすか⁉︎⁉︎


 俺の中で何かが壊れていく……。

 16の高校生がお酒を飲む?

 そんな情景が思い浮かばない。


「……とりあえず、飲んでみるか」


 そう独り言を漏らしつつ、改めてビールを口に含む。


「どうだ?ウマイだろう?」


 おっさんが聞いてくるがそれを無視しつつ飲み続ける。


「う、うめえ……」


 飲み終えて言ったことはそれだけだったが、おっさんはニヤついていた。


 その時、不思議と俺とおっさんの間には友情が芽生え始めていた。


 ……これが酒の力なのか?


 そう思うのも(つか)の間、


「あのーすいません。焼き鳥4本お願いします」


「……かしこまりました…………」


 結局、俺は客がいなくなるまでずっと働かせられた。


 あのクソ女神め、許すまじ。

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