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初めての戦闘?

遅くなりました。

 扉を開けた先は…………見渡す限りの草原だった。

 俺は頭を抱えた。さっき草原のど真ん中などと言われていたから最初から期待などしていなかったが、百聞は一見にしかずという言葉をここで使わねばどこで使うと思わせるほどに、見渡す限りの草原なのである。

 そう思うのも仕方ないだろう。俺は今初めて『草原』というものをこの目で見たからだ。今までいた世界でも、草原なんてテレビでしか見たことがない。


 このだだっ広い草原でどうするか。俺は考えようとしたが、しなかった、というより、できなかった。


「あなたよくもあたしをアホなんて言ったわね!今に後悔させてやるんだから!!」


 この女神が問題だ。協力してもらうどころか邪魔でしかない。


「後悔させれるもんならさせてみろ。お前のやったこと全部他の女神に言いふらしてやる!」


「それだけはやめて!!」


 しかしチョロい。この女神チョロいぞ。

 だいたい俺は他の女神に物申すことなんてできない。なのにこのアホはできると思い込んでいる。


「そうか、じゃあ大人しくしてもらおうか」


「くっ……!」


(こいつのアホさと、俺のこの立場をうまく利用できれば、今後役に立つかもな。)

 そう思うと俺は顔が緩んでしまった。


 ……そんなことよりもだ。今大切なのは、草原のど真ん中にいるということについてだ。

 …………気は進まないが一応この駄女神に聞いてみるか…………。


「おい、これから俺はどうすればいい?」


「こほんっ、よくぞ聞いてくれました!あなたは村か町を目指すのです!」


 なんでこいつは勝ち誇ってるんだ?構うのは面倒なので無視するが。


「……まさかこのだだっ広い草原を歩いてか?」


「もちろん!」


「仮にも女神ならテレポートみたいな瞬間移動魔法は使えるよな?それで俺をテレポートさせてくれよ。」


「仮にもってなによ!?現在進行形で女神よ!!」


「それでどうなんだよ?」


「そんな魔法使えないわよ」


「はあ?」


 こんなにも使えない協力者が未だかつていただろうか?


「だってお偉いさんに『イシュメルは役立た……うっかり者だから瞬間移動魔法なんて危ないよ』って言われて使えなくされているもの」


 おい、お偉いさんとやら、役立たずって言いそうになってるぞ。そんなことに気づきもしないこいつもこいつだが。


「じゃあ……歩くか」


 呆れた俺は、そう言って歩き始めようとした。


「どの方向に行けばいいかわかるの?」


「……」


 イシュメルはニヤリとした。


「もしかして図星ぃ?」


 こんな時だけ鋭いやつだ。ムカつく。

 だがここで認めてしまうのは負けな気がする。だから俺は上手い言い訳をしようとした。


「そんなわけな」


「後ろにモンスターいるわよ」


「くだらない冗談で俺の話を遮るな!」


「いや、後ろ見て」


 俺は仕方なく振り向いた。どうせ振り向いた瞬間に、後ろから「引っかかったわね!」などとバカにされると思ったのだが、そんなことはなかった。なぜなら、俺よりひとまわり大きい、よくRPGでゴブリンといわれるモンスターそっくりのやつが、俺の身長ほどはある剣を構えて、俺の目の前にいたからだ。


(マジかよ!?)


 まさか本当だったとはな。


「そのモンスターはゴブリンよ!そっちの世界では雑魚モンスターかもしれないけれど、こっちでは中ボス並みに強いわよ!」


 それはヤバイな。だいたいこっちは丸腰だ。いや、防具も無いに等しいので丸裸だ。

 マズすぎる。背中を向けて逃げた瞬間に後ろから切られそうだ……。だからといって向かっていくなんてのは自殺行為だ。

 どうする、俺!!

 そんな時、俺の頭に一筋の光が通った。スキルだ。スキルを使えばどうにかなるかもしれない。

 ゴブリンが剣を振りかぶってきた。

 もう迷う時間はない。一か八かだ。

 ゴブリンの剣が俺の体を真っ二つにしようとした。


『カウンターっ!!』


 その瞬間、剣がスローで動くのが見えた。俺はその剣を下に避け、ゴブリンのみぞおち(?)めがけて思い切り拳で殴った。ゴブリンのみぞおちがゆっくりへこむのがわかった。

 ……なんか気持ち悪いな。

 ゴブリンは俺の全力パンチで多少怯んだようだ。

 俺はすぐに方向転換をし、逃げようとした。しかし、数歩走ったところで力が抜け、体が倒れた。

 しまった。スキルを使った後のことを考えていなかった。スキルを使えば体に大きな負担がかかるのに……。


 斬られる!!


 そう思ったときだった。


 閃光が俺を包んだ。そして目を開けるとそこには…………ものすごく神々しい女神がいた。


「お前誰だ?」


「私よ!イシュメルよ!」


「おぉ、ホントだ」


「失礼ね!せっかく助けてあげようと思ってたのに」


「あーそれはすまない(棒)それじゃあ助けてくれ」


「なんかそっけないわね。まあいいわ、あなたに死なれても困るし」


 その言い方に俺はイラっとしたが、これ以上言うと本当に助けてくれなくなりそうなので我慢した。

 イシュメルは手を前に差し出すと、やたらと難しい言葉を言った。


「この世界に存在し神々よ、我に力を与えたまえ。……我が身体よ、いま神の力を解き放て……」


『ゴッドブレス!!』


 イシュメルの言葉を合図に、強い風が吹いた。俺は堪えるのに必死で何がどうなったのかは知らないが、顔を上げた時には、ゴブリンのいた位置に紫色の粒子が出ていた。

 正直見直した。まさかここまでできるやつだったなんて。


「今のどうやってやったんだ?」


「やるのは簡単よ。神様達に、『力を貸してください』ってお願いして、その力を使うだけよ」


「……質問するが、お前の容姿が変わったのもその力のおかげか?」


「そうよ。でもね、私みたいなのが力を借りるとめんどくさいことがあるの。例えば、借りた理由とか、一年経たないと貸してもらえないとか、他にもエトセトラエトセトラ……」


 結局のところ、こいつの力ではないようだ。期待した自分に後悔した。

 それより、次のモンスターが来る前に早く診療所に戻った方がいいな。なぜかというと、俺の体勢が体勢である(・・・・・・・・)からだ。


「よくその体勢(・・)で喋っていられるわね」


「まあな…………。それでだが、俺を診療所まで運んでくれないか?手足が全く動かないんだ」


 イシュメルはうつ伏せ(・・・・)状態の俺を引きずって診療所まで運んだ。もう少しマシな運び方もあっただろうと言いたかったが、たとえ神に借りた力を使っていても俺の命を救ったことに変わりはないので、何も言わなかった。

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