表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天城の扉が開くとき  作者: 路寄りさこ
5/8

<神様だ>

路寄りさこワールドへようこそ。

今話もお楽しみください。

 群衆は、予想外の成り行きの展開に、しんとして静まり返っていたが、次第に息を吹き返すと、今度は自分の番かもしれないという不安をそれぞれが再び抱きはじめた。


「あ、あなた様は、世にいう神様ですか?」

 当然のように、そのような疑問の声があがった。

「アハハハ……」

 衛兵は、轟くような声で笑った。

「神様だ」

「神様だ」

「神様!」

「ああ、神様……」

 群衆は、口々に驚愕の声をあげ、その声は次第に崇拝の声に変わっていき、手を組み合わせる者もいた。

「アハハハ……」

 衛兵は、高笑いを止めない。

「神様。どうか、お導きを」

「わたくしに、よきお言葉を」

「アハハハハハ……」

 衛兵は、群衆の慌てふためいたアリの様な姿に呆れ返って、大笑いをこらえることができない。


「神様。あたしらはどうすりゃいいのだね?」

「そうだ。教えてくれ」

 人々の一方的な懇願は、助かりたい一心の我儘にも聞こえた。しかし、どうすれば助かったのであり、どうなれば助からないことになるのか、もっぱら不明瞭である。

 ただ、人の心の底に潜む、なにがしかの良心とでも言うべき感覚が、善悪や快不快、より神に近いのかそうでないのか、といった判断を誰に教えられたわけでもなく、自然な心の営みとして持っているようだ。

 それにもかかわらず、人は、たいてい自分に対する評価は甘く、それが自と他の比較となるとなおのこと、自分の劣勢は認めたくない。できるだけ高貴で美しい世界が自分を待っていると、誰もが思っている、いや、思いたい。


「どうすればいいか、とな?何のためにだね。おまえたちは、どうしたいのだね」

 衛兵が、笑うのをやめていよいよ話しはじめた。

「神様。天国に行きたいのです」

「そうです」

「そうです」

 人々は、口々に同調し合って叫んだ。

「言っておくが、私は、神ではない。この城を護っている衛兵だ」

「えぇ?」

「なんだって?」

「じゃあ、神様はどこにいるんですか?」

「やっぱりそんなの、いやしないのさ」

「そんなことはないさ。神様は、ずっと遠くにいらっしゃるのさ。私たちには、とうてい会えるお方ではないだけさ」

「神様でないなら、どうしてオレたちをこんなに苦しめる権利があるんだい」

「そうだあ」

「苦しめるだと?」

衛兵が、人々の言葉の乱雑さに分け入った。

「そうさ。人の人生を量ってる」




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


次回は3月31日ごろを予定しております。

いよいよ佳境に入ります。

お楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ