〈後編〉
この話は後半です。
前半を読んでから、こちらをご覧ください。
考えたことがないような事態が起きてしまいました。
まさか、今まで友達だと思っていたその子は、
この世に存在しない生き物なのです。
「…………………」
家に帰ってから、この後のことを考えていました。
初めての体験、ましてやこの世にいるほとんどないことを僕はその時体験していたのです。
そしてその時、あることが引っかかっていました。
『気をつけてくださいね』
あの時は気をつけてお帰りくださいの意味だとばかり思っていましたが、どうしても、嫌な予感しかしませんでした。
そして次の日
僕は学校に行くと、
親友‘‘4人’’が泣いていました。
「どうした?」
「か、川凪……」
みんなが僕を悲しそうな目で見ていました。
「榊が………」
「?榊が?」
「榊が………………………………死んだ。」
「………………………は?」
最初は耳を疑いました。
僕をこの5人の中に入れてくれたひとですから。
しかしそれは事実、その朝、先生から“榊の死”を告げられました。原因は夜道の交通事故だそうです。
信号が赤であるのに、横断歩道を渡り、引かれたということでした。
僕たち5人は、榊の死に涙していましたが、前を向いて生きていこうと、榊の思い出話を休みの間ずっと話していました。
しかしそれでも、僕たちの心の傷が消えることはありませんでした。
「……榊…」
僕は走馬灯を見るように、榊との思い出を思い返しながら、枕を濡らしながらその日は寝ました。
次の日
学校に行くと、
「……………………」
親友“3人”が泣いていました。
昨日まで隣にいたはずの土井の机の上には花瓶と数輪の白い花が見られました。
「……………」
「……なんでだよ!…」
「土井、土井、土井!!!」
土井は自宅マンションの屋上から飛び降り自殺をしたそうです。書き置きには
【榊に会いに行きます】
と書かれていたそうです。
「……バカ野郎!…前向きに…生きていこうって……言ってたじゃないか………」
僕たちはこの時、あることを考えていました。
次は一体
誰が死ぬのか。
「……嫌だ…」
「……?福原?」
「嫌ダァ!死にたくないぃ!!まだ死にたくないぃぃいいいいいい」
「福原!落ち着け!」
親友の1人福原は突然狂い始めました。
「俺はまだ死にたくなぃ!まだやりたいことがまだあるんダァ!まだだたまだだだだだまままだだやややることととととががががあああああ!!!!!シシシシシシニタタタタくナナナィィィイイイイイ!!!!!!!!!!!!イヤァァァァアアアア!!!!」
その時、福原は頭をかきむしり、自分の髪の毛を引っ張り、こちらにも聞こえるくらいブチブチと言わせていました。
「福原!落ち着け!!」
「落ち着いていられるかぁ!俺とよく関係のある奴らが不自然にも死んでるんだぞぉお⁉︎逆にお前、よく落ち着いてられんな、ぁああ⁉︎」
「そんなこと言ったってもう現実は受け止めるしかないんだよ!」
「シィルカァァァアア!!」
ドガァン
福原は突然、机に頭を打ちつけました。
そして、
「ふ、ふふふ」
「ふ、ふく……はら?」
「ふ、ふふ、ふっ、フハハハハハハハハハハハアヒヒヒヒヒハハヒハハハハハハァァァァァァァァァァアアアアアアアアア」
福原は本格的に狂い出しました。
「ふははふはふひひひふふふはふへひははははは」
「福原!」
福原はそのまま、窓の方に向かって走り、
「福原!戻れ!」
そしてそのまま3階の校舎から
「福原ぁぁぁぁあああああ!!!!!」
福原は、
僕たちが窓から外を伺った時、辺り一面に鈍い音が鳴り響き、
福原は、転落死しました。
その周りには赤黒い血が次々と出ていました。
「ふ、く……はら……」
僕たちは一気に3人となってしまいました。
僕たち3人は顔が真っ青のままでした。
この流れで行くと、
本当に自分たちが死ぬのではないかと。
「お、俺たち……どうなっちまうんだ。」
「知らねぇよ…祈ることしかできねぇよ。」
「……………」
次の日
「……………」
「……………」
僕らの6人の中のムードメーカーである外桜が死にました。原因は駅の階段転倒による頭部の強打だったそうです。
「………ぅ………だ…」
「…えっ?」
「もう…お終いだ………」
6人の司令塔、朝桐がいつもとは違う雰囲気です。
「一体…なんで俺たちがこんな目にあっているっていうんだ?おかしいだろ。」
「朝桐、頼む。お前だけは冷静でいてくれ」
「こんな状況で冷静でいられるか⁉︎たった3日で4人、俺らの親友がゴミのように死んでいったんだぞ⁉︎なのにお前はなんだ!どうしてそんな鉄仮面被ったみたいな顔ができるんだ⁉︎お前にとって俺らは………どうでもいい存在だったのか⁉︎」
「そ、そんなわけ」
「あぁ、イライラする、畜生!」
そう言って朝桐は教室を飛び出しました。
「あ、朝桐……」
その日の放課後、自宅に帰っている途中です。
あの公園に行くと、
「あ、朝桐‼︎」
朝桐がいました。そして、
「お、お前は」
「……やぁ」
そこには、あの子がいました。名前のないあの子が。
「何をやっている!朝桐を離せ!」
その子は朝桐の首を絞めていました。
「…そういうわけにもいかないんですよ。この朝桐とかいうやつ、霊感あるらしくてね、俺のことだいぶ疑ってたみたいなんですよ。ここまで知られちゃもうこうするしかないんですよ。」
「う、ぐぎぃ!」
朝桐は今にも気絶しそうです。
「離せぇ!」
僕は必死に、その子へ突進をしました。
しかし、すり抜けてしまいます。
「ち、くしょぉ」
その時です。
朝桐の手が光り輝き始めました。そして
「……………破ぁぁあ」
その手をその子にぶつけると同時にその子は10メートル後方に吹き飛ばされました。
「え、…朝桐?」
朝桐は鋭い眼光をその子の方に向けていました。
「ゴホッ……あまり見せたくはなかったのですが、仕方ないですね。」
「え、何それ。」
「小さい頃から霊能力に長けていたもので。」
「え、え、え」
初めて聞いた真実でした。
「昼間はすみません。一人でこの事は解決しようと思ってしまいました。
「え、いや、」
朝桐はその子の方を向いたままこちらに話しかけます。
「残念ながら、この子は既に悪霊になっているようです。今すぐこの霊を消さなければなりませんね。」
僕はあまり状況を理解できていませんでした。
「え、あいつを…消すのか?」
「そうです、悪霊となった今、あの子は人を苦しめることでしか“喜・楽”を得ることが出来ません。これから先この霊は人をどんどん苦しめることでしょう。今消すべきなのです。」
「…………」
僕は何も言えませんでした。
「…ぐっ」
その子は苦しそうに起き上がってきました。
「ちくしょぉぉぉおおおお!!!!」
その子は突然襲いかかってきました。
右手が巨大化し、右肩から手は真っ黒になり、その爪はとても鋭そうに見えました。
それを朝桐に向かって思い切り殴りかかってきました。朝桐はいとも容易くそれをかわします。
「ぐっ!」
「先程の“破”を食らったのでだいぶ速さが落ちましたね。」
朝桐は見下すようにその子をにらめつけていました。
その時、その子は僕を見ていました。
助けを求める子犬のように。
「………⁉︎」
僕は動揺しました。なんでこいつこっち見てんのってね。
「あなたの記憶を少しだけ覗かせてもらいましたよ。」
朝桐が話し始めました。
「あなたは元々ここの近所で住んでいた……咲間 霧矢くん。学校では毎日のようにいじめられる。親は共働きだったので家に帰ってもいつも一人。いじめの事も告げられず、そのまま公園の木で首吊り自殺。……実に悲しい体験をされたんですね。」
「………」
「しかし、こちらとしても人に迷惑をかけられるのも嫌なのでね、手荒ですが、消させてもらいますね。」
朝桐はどんどんその子、咲間にプレッシャーをかけていました。
「………嫌だ、嫌だ嫌だ!俺は何のために生まれてきたのかまだわからない!まだ消えたくない!」
それは咲間の悲痛の叫びでした。
「この世にいても自分が苦しむだけです。今すぐ楽になりたいでしょう?」
「……ま、まだだ。まだなんだよ!俺はまだこの世の空気に触れていたいんだ!たとえ別次元でもこの世にいるような感覚でいたいんだよ!」
「川凪くん?」
突然朝桐は僕に話を振ってきました。
「どうする?」
僕は迷いました。
つい先日まで友達だと思っていた子ですから。
消すという言葉に、素早く反応することはできませんでした。
「……川…凪………くん?」
咲間は、悲しそうな声でこちらに向かって話しかけてきます。
「…川凪くん?え、僕たち友達なんだよね?だったらそんな………考えることないじゃないか!僕たちは……僕たちは友達じゃないのか⁉︎」
「…………」
僕には決断することが出来ませんでした。
「川凪くん、惑わされなくていい。今自分が、一番最初に思ったことを言って欲しい。」
朝桐がそう言ってきます。
「僕たちの親友4人を殺したのはこいつも同然なんだ。榊は横断歩道で信号待ちをしている時後ろからこいつに押された。土井は屋上で夜景を見ていた時に後ろからこいつに押された。福原はこいつに脳内を侵され気が狂ってしまった。外桜も駅の階段を下っている途中でこいつに押されたんだ!こいつはもはや霊界でも指名手配になるくらいの超重罪人なんだよ!」
必死に朝桐は語ります。
その時初めて、親友4人の殺害した犯人を知ることができました。
「まじ……かよ…………」
僕は咲間の方を見ました。
「そ、そんな……仕方ないじゃないか。僕は君に毎日会いたくて仕方なかったんだ。唯一の友達である君に!それでも高校に入った君は忙しいだろうから、一週間に一回でも会ってくれたら良いなとか、ずっと思ってた。それなのに、君はその親友の5人とやらと毎日つるんでるって聞いた時、思ったんだ。
この5人がいなくなれば
僕は川凪くんと毎日会えるってね。
だから僕は君の親友5人を殺したんだ。考えてみろよ!どちらかといえばお前が悪いだろ?友達なんだろ?友達と1ヶ月も会わないってなんだよ!人間はそういうやつばっかだよな!結局友達っていうのは表面上なだけでどうでもいい存在なんだろ?
違うって言いたいならそれを証明して見せろぉ!」
僕は頭が真っ白になってしまい、正直のところ、咲間が言っていることに気づいてあげることができませんでした。しかし、一つだけ決まったことがありました。
「朝桐、」
「ん?」
「こいつを……殺してやってくれ。」
「…川凪くん!」
僕はどうしても許せなかった。親友5人を殺したその子を。一番初めての友達がその子だったことも忘れて。
朝桐はニヤニヤしながら語ります。
「悪霊!現実は残酷でしょう?結局は同次元の者同士でしか仲良くできないんですよ!あの世に行ってまた友達でも作りなさい。」
「嫌だ!まだあの世に行きたくない!あそこに行ったって仲いい奴なんて出来るか!だいたい僕は…………………」
咲間は何かに気づいたようでした。
それが何だったのかはよく分かりませんでしたが、
「………………消えればいいんだろ。」
と、そう言いました。
どこか、吹っ切れたような顔をしていました。
もう何が起きても、どうも思わないといった感じでした。
「じゃあ、」
朝桐はポケットから小さな石の球体のようなものを取り出しました。
「やりますよ?」
「はい。」
とても短いやり取りであっさりと決まってしまいました。
「貴方を消すには時間がかかります。無駄な抵抗はやめてください。
「分かってる。」
そのやり取りの後、朝桐は石の球体を咲間に投げつけました。それが咲間に当たった途端、突然咲間自身が光りだしました。
「この儀式に痛みはありません。静かに眠りなさい。」
「………………」
咲間は黙っていました。
「………最後に何か言いたいことはありますか?」
「………」
咲間は口を開けました。
「………一瞬だけでも……」
今までに見たことないくらい、穏やかな笑顔で
「友達ができて良かった……」
そう言いました。
そこでようやく僕はその子が初めての友達であることを思い出しました。
「さ、咲間。」
「………」
「えと………」
唐突に、何か声をかけたいと思いました。何故かすごい罪悪感にかられてしまいました。
「………あの世に行っても、頑張れよ。」
そうとしか言えませんでした。
「………無理です。」
「⁉︎」
咲間が言いました。
「これは消霊の儀です。あの世に行くどころか二度と転生されることはないかもしれません。」
「えっ、」
そんなことになっていることは、全く理解していませんでした。
「…………」
「…どうですか。笑えるでしょう?あざ笑ってイイですよ?ははははははは」
僕は笑うことができませんでした。
「もう少しで消霊完了です。本当に最後に何か言いたいことはありますか?」
朝桐がそのように聞きました。
そして
「………そうですね。
僕があの世に逝ったとしても、
君にはまだそこの親友がいて、
傷ついたとしても暫くすれば
きっとその傷も癒えるでしょう。
でもね、僕はこれから無の世界へ逝きます。
結局友達はいない世界へ導かれます。
友達が欲しいと思っても得ることはできないでしょう。
たとえ、何億回と望んだとしても。
そんな僕が貴方に言いたい言葉かあります。」
咲間は涼しい笑顔を見せました。まさにそれは死を悟った時のようです。
「僕は……
悲しくないよ、」
その瞬間です。
咲間の涼しい笑顔が一気に悪魔の笑みへと変わりました。そして
「嘘だけど。」
咲間の目から一筋の涙が落ちました。
「!これはまずい!」
朝桐が何か焦っているようでした。
「何が」
その時、咲間からでていた光が、白から黒に変わりました。
そしてその黒い光は龍の様な形になり、その龍は頭から、猛スピードで僕めがけて飛んできたんです。
「か、わ、な…」
朝桐は何か叫んでいましたが、それより先にその龍が僕の体をすり抜け、そこで記憶が途絶えました。
次、目が覚めたのが数週間後でした。
目が覚めたのは記憶が途絶えたところでした。
僕は家に帰りました。
すると、僕の身内が死んだのか、僕の家では葬儀が行われていました。
「何だろう」
そう思って近づいてみました。
ドアが開いていたので、勝手に上がりました。
その時はみんなが棺桶に顔をのぞかせている時でした。
その中に、朝桐いました。
朝桐は見たことないほど泣いていて、
「ごめん……守れなくて……ごめん……」
と、ずっと言っていました。
こちらに気づいていないようなので、驚かせたかったのですが、流石に葬儀中なので、止めました。
なのでそうっと棺桶の中を覗くと、
「…………えっ、」
その中にいたのは
僕の様な人でした。
いやぁ、不思議なこともあるものですよね。
その体験から、本当にこの世にはそっくりさんがいるんだなって思いました。
後、その日から周りから気付かれなくなったんですよね。僕の影ってそんなに薄いですかね?
取り敢えず今やっていることは、
最近僕の身の回りにある不思議、
影が異常に薄いこと、物に触れることができないこと、体が非常に軽いことなど、それらを解明していくことに毎日忙しいんですよぉ。
〔少しいいですか?〕
はい、なんでしょう。
〔それは……その、申し上げにくいのですが………………あなたは死んだという事ですか?〕
それ、言っちゃいますか?
ー終ー
だいぶ長くなってしまいました。
もしかすると、番外編といった形でまたこの話を書くかもしれません。
読んでくださり、ありがとうございました。




