〈前編〉
あ、どうも、川凪司音です。
なんか、僕の体験談の取材ということでお呼びしてもらいました。ありがとうございます。
さて、何を話せばいいんですかね…
ーあれは今から数年前、僕がまだ中学生の時です。
その頃の校内の雰囲気は最悪でした。
地元でも、県下でも最も荒れているとまで言われるほど本当に酷かったのです。
その時、僕はいじめられる方でした。
本当に辛かったです。
いじめられると分かっていても、学校に行かなければ進学なんて夢のまた夢ですから。いじめに耐えながら、必死に勉強しました。
そんな僕でも、友人1人くらい欲しかったんです。
毎日のように物を壊され、暴言を吐かれ、殴られて、蹴られて。それだけのために学校に行くなんて辛いじゃないですか。教師なんて、結局は形だけで解決なんて絶対にしてくれない。だからこそ、1人、なんでも話せるような1人の友人が欲しかった。
だけど、こんないじめられている僕なんかと友達になろうなんていう物好きもいない、自分も巻き込まれたくない、そんな感じで結局、友達何てできなかった。
そんな、ある日のことです。
「お前まじ死ねよぉ〜」
「キメェんだよクソ眼鏡!」
その日、いつも通り同級生たちにいじめられました。
落ち込んだ時にいつも行っている公園がバレて、誰もいない静かな公園で学校内同様、殴られ続けました。
しばらくすると飽きたのか、いつの間にかどこかに行っていました。
僕は気絶していました。
その日は休日だったので、公園には昼間からいたはずなのですが、いつの間にか辺りは夕日に染まっていました。
今日も1日無駄にしたな、とか思いながら体中についた砂を払い落とし、なんとなく、その辺を見回しました。
こんな長い間気絶してたのに誰も気づかなかったのか、なんて思いながら、心底悔しかった。
しかし、その日は違いました。
木陰のほうに、さっきまでいなかったはずの人影が、突然現れたのです。
「……⁉︎」
その姿は普通の、僕と同じぐらいの男の子でした。
近づいてみると、その子は泣いていました。
体育座りをしたまま、こちらには気づいてないのかと思うくらい、うつむいたまま、すすり泣きを続けていました。
僕はその子が僕と同じように見えて、放っておけませんでした。
「……大丈夫?」
その子はようやく僕に気づいたのか、少し驚いてこちらを振り向きました。
「………?」
その子は辺りをキョロキョロしていました。
自分に話しかけてるのか確かめているようでした。
「…君の事だよ。」
僕がそう言うと、その子は驚いた顔を崩さず、こちらの目を見て、ようやく口を開きました。
「え……あ…はい…………」
突然話しかけてきた僕に戸惑っている様子でした。
「…すごい傷だよ?どうしたの?」
その子の頬には、大きなあざができており、服もボロボロに裂かれていて、その裂かれた切れ目から、赤い液体が見えたのです。
「え…あ…いや……………………」
僕には既に分かっていました。
「DVかい?いじめかい?」
「…………………い……いじめ…」
僕の思った通りでした。
その時の僕はいつもと違い、同情より、正義感の方が勝っていました。
その後僕とその子は辺りが暗くなるまで話し合い、また会おうということで別れました。
その時の話し合いで、驚くような事実が明らかになりました。
彼には昔から家がなく、親もいない、名前もない、今はお寺で住まわせてもらっている、ということでした。
僕はそれでいじめられているのか聞くと、そうではなく、ただただ理不尽に殴られているということでした。とても共感しました。
次の日、
僕はまたいじめにあってしまいました。
いつもとは違い、金属バットのようなものも見えました。
「イタタタタタタ………うぅ………」
帰り道、保健室で手当てをしてもらい、帰路につきました。その時です。
「大丈夫……ですか?」
「⁉︎」
僕はその時、人生で二度とない驚きを体験しました。
足音が全くなく、誰もいないと思っていたので不意をつかれた形になりました。
「…………なんかすみません。」
「!い、いやいや!大丈夫だよ!うん!」
それは昨日の子でした。
「…あなたもいじめにあっているんですか?」
「え、……い、いやぁ」
「あってるんですね。」
「あ、…はい……」
その子は、昨日とは反対にとても強い意志を持っていました。
そして僕は
「あの……」
その時初めて
「その…………」
今まで欲しかった
「ぼ……………僕と」
「「友達になってくれませんか」」
友達ができました。
「元からそうだろ?」
「……そういうものなのですか。」
「そういうもの、」
「へぇー」
それから僕はその子と毎日のようにあって話しました。たまに遊んだりもしました。とても楽しかったですよ。
それからというものの、僕もその子も毎日のように傷を作って会いました。それでも、友達がいるから乗り切れると、僕たちは毎日を笑って過ごしました。
それから僕は、高校へ行くために受験勉強をし、とうとう難関と言われている私立高校に入学することができました。
そこは今までとは違い、僕にいじめをする奴もいない、初めての体験でした。
高校に入ってからもしばらくその子とは毎日のように会っていました。
高校に入って数日後、僕にはたくさんの友達が出来ました。昔のような形だけのものではなく、親友と呼べるような人が、大体5人も出来ました。
それからというものの、僕はその5人と毎日のようにつるみました。ゲーセンに行ったり、マックへ行ったり、とても充実した日々でした。
久々にあの子に、あの公園で会いました。
「…ねぇ、最近どうしたの?勉強忙しいの?」
心配するようにその子は聞いてくれました。
「まぁ、確かに忙しいけどそれよりもまぁ、高校に入ってからいじめは無くなったし、逆に親友的な人が出来ちゃったからかも。ごめんな。」
その時の僕は何も思わずにそう言いました。
「…へぇ、」
「そういやお前、身長変わんないな、伸びてる?」
「…うーん、伸び切っちゃったのかもね、」
「ありゃりゃぁ、」
「まぁ、いいんだ、身長無くても、僕は困らないし。」
その時のその子は、とても悲しそうでした。
その時の意味は僕は知る由もありませんでした。
そのやり取りから1ヶ月後、
僕はいつもの5人と一緒に帰っていました。
その時です。
トン、トン、
突然肩を叩かれました。
「……?」
何かと思うとその子でした。
クイッ、クイッ
こちらに来いというような手招きをしました。
「ごめん、ちょっと待って。」
僕は5人の親友にそう言って、そこから10メートルほど下がり、ヒソヒソと話しました。
「……あの方たちは…」
「あぁ、前言ってた親友的な人だよ。最近いっつも一緒に帰ってるんだ。」
その子の顔に少し影が入りました。
「……ここ1ヶ月くらい会ってくれませんが、それが理由なんですね。」
「え、もうそんなにたつの⁉︎意外だなぁ。」
「……………」
その子は黙り込んでしまいました。
そして、
「……お気をつけください。」
と言ってどこかに行ってしまいました。
その意味も、その時はよく分かりませんでした。
「ごめんごめん、待たせた。」
「お、おう…」
その時、みんな変な顔をしていました。
まるで奇妙なものを見る顔です。
「え、えと、どうかした?」
「い、いや……」
なんだか激しく動揺しているようです。
「も〜、もったいぶらずに言えよ〜」
「え……………じゃあ、………言うぞ?」
「?おう。」
そこまでのことがあの一瞬であったのかと思いました。そして、
「お前さ…………」
そこでようやく、
「誰と話してたの?」
全てが
「え、友達と…………」
繋がりました。
「お前以外誰がいた?」
「え………」
全てが繋がりました。
名前がない、家がお寺、身長が伸びない、突然現れる、その全てが繋がりました。
「まじ…………かよ………………………」
そして次の日からさらに奇妙なことが続いきました。
続く
今回も先輩によるお題に答えさせてもらいました。
後編もあるので見てみてください。
ホラーではないと思いますが、
「これはホラーだ」と言われたくないので、
ジャンルはホラーで、
実際はその他と思っといていただくと幸いです。
これが終わったら………
エッセイ書きたい。
けど他のも書きたい。
迷いますねぇ。