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○○はえちゃった!!   作者: 田村優覬
8/9

決断しちゃった!!

皆さんこんにちは。

いよいよラストが近づいてきました。

山を降りておじいちゃんが病気だと知った秋菜。果たして、秋菜は無事おじいちゃんに会うことができるのか?それとも……

そして、秋菜は何を決断するのか……

今回もよろしくお願いします。

私たちは、町近くの国立に猛ダッシュで向かっていました。



ついさっき。

私は、優子ちゃんと咲希ちゃんたちと久しぶりの再会をしてました。

しかし、咲希ちゃんの口からは予想もしてなかった言葉が飛んできました。

「え?……どうして!?」

私はおじいちゃんが病院に運ばれたと聞いて、驚きを隠せませんでした。

「やっぱり知らなかったんやな……昨日の朝、意識を失ったらしくて運ばれたんや。近くにアンタのおばあちゃんがおったから、なんとか一命はとりとめたみたいやで……ただ、いつまでもつかわ……」

私は全く信じられませんでした。

「どうして!?だって、昨日の夜……私のところに……!?まさか……」

私は気づきたくもなかったことに気づいてしまいました。

昨日見たおじいちゃんは車椅子に乗っていた。

おじいちゃんの近くには白衣の男。

今にも泣き崩れそうなおばあちゃん。

「秋菜ちゃん……大丈夫?」

言葉を失った私を優子ちゃんが心配して言いました。

「おじいちゃんは……病院から来てたんだ……」

「ごめん……秋菜……ウチ1つ隠してたことあってな……」

「え?」

「実は、アンタのおじいちゃん……末期ガンなんや……」

「…………」

え?という言葉すら言えませんでした。

「ある日、ウチ部活で怪我したときに病院に行ったんや……そこでアンタのおじいちゃんに会ったんや……なんでここに居るのと聞いたら……ガンやったんや」

「…………」

「黙りたくて黙ってた訳やない……アンタのおじいちゃんに口止めされてたんや……すまん!!」

咲希ちゃんは私の前で頭を下げました。

「…………」

私は絶望のあまりずっと黙っていました。

おじいちゃんが……病気?

私が家にいたとき、外に出かけたのは病院に行っていた……

どうして気づかなかったんだろ?

どうしよう……どうしよう……

「病院に行きましょう!!」

「え?」

私はやっと声を出すことが出来ました。

病院に行こうと誘ったのは優子ちゃんでした。

「まだ間に合います!!皆で行きましょう!!私、病院までの道案内しますわ!!」

「優子ちゃん……でも、学校は?」

「学校なんて関係ありません!!これが不良的行為だとしても、私はいきますわ!!」

「優子ちゃん……」

「そや。行こう!!秋菜!!ウチも行く!!」

「咲希ちゃん……」

私は泣いていました。

真っ暗な闇のなか、二筋の光に導かれた気持ちでした。

「行きましょう!!」

「行こう!!」

「二人とも……ありがとう……」

私は大粒の涙を袖で拭き取りました。

「行こう!!」



私たちは病院に向かって走っていました。

疲れたことも気づかず、ただ夢中で走っていました。

町並み次第に変わっていき、一面田んぼの景色から建物が多くなってきました。

「あっ、ありましたわ!!」

優子ちゃんが言い、国立病院に指をさしました。

「すごい!!でっかあい!!」

「あともう少しや!!ラストスパートやで!!」

私たちはさらにスピードを上げて向かいました。


「はぁはぁ……着いたはぁはぁ」

私たちは息をあげながら入口から入りました。

私たちはすぐに受付のところに行きました。

「はぁはぁすみません!!」

「はい。どうしました?」

「はぁはぁ部屋を教えてください!!猪瀬肇の部屋です!!私は……猪瀬秋菜と申します!!」

「わかりました。娘さんですね……三階の二号室です」

受付の人はあまり元気がありませんでした。

「わかりました。ありがとうございます!!」

私は颯爽とその場から去り、優子ちゃんと咲希ちゃんといっしょに、おじいちゃんがいる病室まで向かいました。



私たちは病室の前にきました。部屋番号の下に『猪瀬肇様』と書いてありました。

「ここだ……」

「秋菜、行ってきな。ウチらはここにおるわ」

「秋菜ちゃん……頑張ってね」

「二人とも……ここまでありがとう」

こんこん

「失礼します!!」

私はノックをして病室に入りました。

ピッ……ピッ……

「え?」

心拍数の音が静かに響き渡る病室のなか、私の目には驚きの光景が写りました。

ベットの上で点滴、呼吸器を着けて横になっているおじいちゃん。

その隣には、今にも泣き出しそうな表情で目の下にはクマができたおばあちゃん。

そのそばには、山にいたときに見かけた白衣の男。

「秋菜……ちゃん?」

おばあちゃんは、立ち止まった私のもとに来ました。

「来てくれたんだね……ありがとう……」

おばあちゃんは泣き出してしまいました。

「おばあちゃん……心配かけてしまってごめんなさい……これ……どうなってるの?」

私は、おばあちゃんに謝ることよりも、今おじいちゃんの状態を聞きたい気持ちでした。

「昨日の夜、病院に着いてからずっとこの状態なの。私にできるのは……ただ見守るだけ……」

おばあちゃんは堪えきれずまた泣き出しました。

「う……はぁ……秋菜……か?」

私はおじいちゃんの顔を見ると、目を開けてこちらを見ていました。

「おじいちゃん!!」

私はおじいちゃんの側に行き、おじいちゃんの細く弱々しくなった右手を、私の両手で握りました。

「冷たい……」

私はおじいちゃんの手がとても冷たく感じ言葉にしてしまいました。

「秋菜……来てくれたんだなあ……お前に話したいことがあるんだ……」

「おじいちゃん……」

私の目に涙が浮かびはじめました。

「ドクター……悪いが部屋を出てくれないか?今から大切な家族会議なんだ……」

「猪瀬さん……わかりました」

ドクターとおじいちゃんに呼ばれた白衣の男は、悲しい表情をして病室から出ました。

「秋菜……まずは病気のことを黙っていたことを謝ろう……申し訳ない……」

「どうして黙っていたの?」

私の声は次第に震えていました。

「お前に心配をかけたくなかったからな……優しいお前だからこそ、気にさせたくなかった」

「おじいちゃん……昨日山に来たのは……相当無理してたのね……」

「ハハ……俺も老いぼれだ……お前が部屋からいなくなったのがわかってから、おそらく山の中にいると思ってな……」

「おじいちゃん……もしかして、私がきつねだってこと……知ってたの?」

おじいちゃんは一度目を閉じ、もう一度ゆっくり開けて言いました。

「ああ。お前が俺を殺そうとしていたこともな」

「え?」

おじいちゃんから驚きの一言が出てきました。

「どうして?」

「お前が家の前で人間になったとき、あの瞬間俺は見てたんだ……」

「あの瞬間……見てたの?」

「ああ。家に帰ろうとしていたとき、家の前にきつねがいると思ってな。そしたら、そのきつねは白い煙を放ち小さい女の子の姿になった。そのあと、その子は近くにあった槍のような木を持って家に入ろうとしていたんだったなあ」

「その後私は倒れた……」

「ああ。俺はまずその子を家の中に連れていき、意識が戻るまで見ていた。さすがに病院に連れていくのもいけないと思ってな……目を覚ましたお前は何も覚えていなかった。その時からお前は家族になったんだ」

「それから私をずっと育ててくれたんだ……」

「きつねを見たとき、俺は山で狩猟をしたときを思い出してな。きっと、あのときの仕返しで来たと思った。その槍が俺に向いていたなら構わなかったが、家のなかにはおばあちゃんがいたから、おばあちゃんが殺されると思った。家族を失うと感じ、ものすごく恐ろしく思った。あのときの気持ちは、あのとき山で死んでしまったきつねたちも感じたものだったと痛感したよ」

「どうしてそんな私を育ててくれたの?」

「罪滅ぼしだ」

「罪滅ぼし?」

「まあ罪滅ぼしができるほど俺の罪は軽いものだとは思っていない。お前の姿を見て、あのときの狩猟を俺はものすごく反省した。なんせ、お前の家族を奪ったんだからな。それからは、お前を育てていくうちに、山の動物たちの命を助けたいと思った。そこで俺はボランティアで人間があの山に入らないようにする運動を始めたんだ」

「おじいちゃん……」

「秋菜……許してくれとは言わん。ただ、お前はいつまでも優しい者でいてくれ……それが俺の最期に言いたいことだ……」

「おじいちゃん……」

私の目から涙がこぼれ落ちました。

「お前が山に帰ること日はいつかくると思っていた。おばあちゃんのことも心配ない。だから、どうか……安心して、山で、生きてほしい……」

「おじいちゃん……ありがとう。私、おじいちゃんに出会えてほんとによかった。ありがとうございました」

私は涙を流しながら、おじいちゃんの手を離し一礼しました。

「ハハハ……最期にこんな気持ちになれるとはな……俺は幸せものだ……」

おじいちゃんはゆっくり目を閉じました。

ピー!!ピー!!

「おじいちゃん……おじいちゃん!?」

病室から勢いよくドクターが入ってきました。

「今から心臓マッサージをします。下がっていてください!!」

ドクターは私にそう言うとおじいちゃんの側に行き、他の助手といっしょに心臓マッサージをはじめました。

ピー!!ピー!!

「おじいちゃん!!おじいちゃん!!」



数分後。

おじいちゃんは私たちの前からこの世を去りました。

私はおばあちゃんといっしょに、顔をタオルで伏せられたおじいちゃんの隣にいました。

「秋菜ちゃん……おじいちゃんは最期まであなたのために生きてくれたの。どうかおじいちゃんを許してあげて」

「許すとか許さないとか、私はそんなこと思ってないよ……ただ、感謝してるだけだよ」

私たちはおじいちゃんの身体が霊柩車に運ばれるのを見届けました。



時刻は午後四時。

優しさと悲しさを思わせる夕陽が町を照らしていた。

私は病院の受付カウンターのソファーでおばあちゃんを待っていました。

また、その間は優子ちゃんと咲希ちゃんといっしょに話していました。

「二人とも、今日はありがとう」

「……まさか、こんなことになるなんて……」

「しゃあないやろ……不幸中の幸いや……」

私たちの空気は暗く重い状態でした。

「二人に、言いたいことがあるんだ」

私は沈黙を破り、二人に話しかけました。

「なに?」

「どうしたん?」

「私ね……今後はきつねとして生きていく」

「秋菜ちゃん……」

「……」

「もちろん、人間として生きたくない訳ではないんだ。でも、山に今まで私を待っていてくれた人がいるんだ」

私の頭のなかに、コノハの顔が浮かびました。

「突然で申し訳ないんだけど、どうか認めてほしいんだ」

「秋菜ちゃん……もう会えないの?嫌だよ……そんなの……」

優子ちゃんは泣き出してしまいました。

「優子ちゃん……」

「私はずっと、秋菜ちゃんといっしょにいたいもん!!」

優子ちゃんは声をあげて泣いてました。

私は辛い気持ちになりました。こうなることは予想してましたが、こんなにも気分が悪くなるとは思っていませんでした。


どうしよう……


「なに泣いてんねん!?」

「咲希さん……」

咲希ちゃんはやっと口を開きました。

「秋菜がそうした言ってるんや……」

「でも……でも!!」

優子ちゃん今にも泣き崩れそうでした。

「私は秋菜ちゃんといっしょにいたい!!」

「それでもや!!」

咲希ちゃんの声は院内に響きました。

「優子!!お前は秋菜のこと好きなんやろ?大好きなんやろ!?」

「咲希……さん」

「大好きなら……大好きなら!!」

咲希ちゃんの顔から雫が落ちた。

「そうしてあげような……親友の気持ちを、秋菜の最後の気持ち……受けとめてやろうや……」

「咲希……さん……」

優子ちゃんと咲希ちゃんはお互い抱き合いました。

「二人とも……」

私も目が潤んでいました。

「なあ秋菜。うちらのこと忘れたら許さんからな!!絶対に忘れんなや!!」

咲希ちゃん涙をこらえながら、私に向かって笑顔で言いました。

「うう……グスッ……」

「優子。いつまで泣いとるんや?秋菜が帰りにくくなるやないかい……ほら、笑顔で見届けてやろうや……」

「グスッ……うん」

優子ちゃんも泣きたい気持ちを圧し殺して、私に向かって笑顔で言いました。

「秋菜ちゃん……風邪に気をつけてね……」

「優子ちゃん……」

「なんや最後がそんな言葉かい!!マジウケるわ……」

「二人とも……ありがとう」

私もこらえきれず涙を流しました。










今回もありがとうございました。

家族といい、友だちといい、秋菜がうらやましいです。

次回はついに最終回です。

予定では、今回で終わりにしようと思ったんですが気が変わりました。

最後の秋菜を見届けてあげてください。

では、失礼します。

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