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○○はえちゃった!!   作者: 田村優覬
7/9

町に着いちゃった!!

みなさまこんにちは。

今シーズンまだ暖房を使ってない田村です。

今回は久しぶりの登場キャラに注目してください!!

よろしくお願いします。

晴れた早朝。

小鳥の鳴き声が響き、秋の優しい木漏れ日が射し込む山の森のなかで、私は一人立ってました。

「迷った!!」

私は人間の姿になり山道を降りていました。しかし山道と言っても草むらが多く、気づいたらどこを歩いているのかわからなくなってました。

「どうしよ~コノハもいないから一人なんだよな……」

私は何度も周りを見渡しましたが、木と草むらだらけで全く検討がつきませんでした。

「参ったな……だれかいないかな?」

とりあえず私は前に向かって歩きました。

「密林の探検家ってこんな気持ちなんだ……なりたくないなぁ」

私はヒトリゴトを繰り返しながら山道を降りてました。

「うー疲れた」

私はついに座り込みました。

「ダメだ~!!ちょっと休憩」

私は一息つき頭上を見ました。

「この山……やっぱりきれいだなあ」

私は目を閉じ、山のなかに響き渡る自然の音を満喫してました。

「ふぅ……癒される……」

クシャ

え?

落葉を踏みつける足音が聞こえました。

私は立ち上がり、辺りを見渡しましたが誰もいませんでした。

「誰だろ?動物?」

クシャクシャ

足音がどんどん近づいてくるのがわかりました。

こっちからだ

私は音のなる方を見ました。すると森の奥から何か動いているのが見えました。

「動物だ。道を教えてくれるかな?」

私は動く物体に近づきました。

「あの~すみません!!道を教えてほしいんですけど……」

私は言うとその物体は止まりました。

「あの~」

「人間」

「え?」

次の瞬間その物体は私に向かって突進してきました。

「うわっ!!」

私は間一髪で避けました。

「ちょっと待って!!道を聞きたいだけなの!!」

「人間」

草むらに隠れた物体はふたたび私に向かってきました。

「ギャアー!!」

私はひたすら逃げました。

「なんで!?私怒らせた!?言い方悪かった!?うわっ!!」

私は躓き転んでしまいました。

「いたたた」

クシャクシャクシャ

音がどんどん近づいてきました。

「ダメ……来ないで!!」

「やめろ!!」

「え?」

私の前には一匹の猪が、背を向けて立っていました。

また草むらから、私を追いかけていた物体も出てきました。

「せ、先生!!」

物体の正体は小さい猪でした。

「むやみに人間を襲うなって言っただろ!!止めなさい!!」

「ごめんなさい……」

小さな猪は草むらへと帰って行きました。

私の前にいた猪も同じ方へ歩き出しました。

「あの……助けてくれてありがとう……」

「え?その声……」

猪は振り返り私の顔を見ました。

「うそ……猪瀬さん!?」

「え?どうして私の名前を?」

「待って、今人間になるから……ドロン!!」

辺りに白い煙が立ち込め、それは晴れていきました。そこには、驚きの姿がありました。

「え?うそ……」

見覚えのある男子の顔が見えました。

「宮下くん!?」

「久しぶりだね。猪瀬さん」

「宮下くん……猪……」

私の小さな頭はオーバーヒートしました。

「ごめんごめん……突然これじゃ困っちゃうよね。ところで、山を降りるって言ってたよね。良かったら僕が案内するから着いてきて」

宮下くんは草むらへと進みました。

「はっ!待って!!」

私もやっと動き出しました。



見たことのない盛りだくさん景色。そんななか、私は宮下くんの背中を見ながら着いて行きました。

「少しは落ち着いた?」

「ま、まあ……」

「それは良かった。僕はこの山に住んでいた猪だよ。今は学校がない日だけここに来てるんだけどね。人間になれるだけでみんなは僕を先生って言うんだ。やっぱり猪瀬さんもここの住人だったんだね」

「え?知ってたの!?」

「知ってた訳じゃないけど、この前学校でようすがおかしいなぁと思って近づいたとき、猪瀬さんからきつねの臭いがしたからね」

「きつねの臭い……そんなこともわかるんだ……え?私臭かった!?」

「いやいや、そんなんじゃないよ。ただ、ここに住むきつねの臭いがしてただけ……もちろん学校の人たちには言ってないよ」

「……」

「猪瀬さんはこれから学校に行くの?」

「学校?そっか。今日は平日なんだ……曜日とか全然考えてなかった」

私は、このとき改めて今日は月曜だと気づきました。

「学校は……行きたくない……」

私は下を向いて暗い表情で言いました。

「そっか。僕はこれから学校に行くところだったんだ」

宮下くんは私とは逆に明るい表情で言いました。

「ねぇ宮下くん……」

「なに?」

「宮下くんは……人間は好き?」

私は唐突に変な質問をしていることに気づきました。

「ごめん!!変なこと言って……」

「あはは。猪瀬さんはおもしろいなぁ……今は大好きだよ……少し昔ばなしをしてもいい?」

「う、うん……」

私は、緊張しながら宮下くんの話を聞きました。

「あれは確か十年前だったかな……」

「十年前?」

私はその数字に聞き覚えがありました。

「うん。狩猟の人たちが山に来たんだ」

「それって……あのとき!?」

「猪瀬さんも覚えてる?」

「うん……親を殺されたの……ごめん、暗い話しちゃって……」

私はついつい口に出してしまいました。

「気にしないで……そうか。僕と同じだったんだね」

「同じ?」

「実はあの日。僕の両親も殺されたんだ……」

「え?」

私はあまりの衝撃で、なんと言ったら良いかわからずにいました。

「両親を殺された僕は一人になったんだ……」

「……」

「一人になった僕は毎日生き抜くことだけ考えていた。でもある日、親戚の猪から人間になれる方法を教えてもらったんだ。そして僕は人間になり、人間社会に溶け込むことができたんだ」

「宮下くんはどうして人間になろうとしたの?」

「あのときは、食べ物のためだったね。人間界は食べ物で溢れていたから、それが目的だったかな……」

「宮下くんは……両親を殺されて……仕返ししようとか思わなかったの?」

私は我ながら恐ろしいことを言っていることに気づきました。

「猪瀬さん、意外と怖い人だね」

「ごめんごめん!!悪気はなかったんだけど……」

「あはは……正直あったよ。人間に良い印象はなかった」

「宮下くん……」

「でもね……人間として生活していくうちに、僕は人間の優しさに触れることができたんだ」

「優しさ?」

「そう。僕も小さいときから、ある人のお陰で生活できたんだ。どこの誰かも知らない僕を育ててくれたんだ。その後成長した僕は友だちもできた」

「……」

「もちろんそれだけじゃないよ」

「え?」

「多くの人間は自然を愛していたんだ。実はここの山は、人間が破壊しないように、人間は立ち入り禁止になってるんだって」

「でも、十年前は来たんだよね?」

「うん。そのときはまだ禁止になってなかったからね。そのあとに一人の老人がここを立ち入り禁止にしたんだって……」

「そうなんだ……一体誰が考えたんだろう?」

「そっか。知らないんだね……」

宮下くんは止まり、後ろを振り返り私の目を見ました。

猪瀬肇はじめ。君のおじいさんだよ」

「え?」

私も立ち止まり、大きく目を開きました。

「猪瀬肇は、この森を守ってくれたんだ」

私は知りませんでした。まさかおじいちゃんは、私たちの守護者だったなんて……

「でも、私のおじいちゃんは、狩猟をしていて……」

「うん。元は狩猟をしていた。でも、彼はここを守ろうとした。僕はそれだけでうれしい」

「宮下くん……」

「父親を殺されたのは確かに残念だ。でも、人間はちゃんと反省してくれていたんだ」

宮下くんは振り返り、私に背を向けました。

「だから、僕はそんな人間についていこうと思った。この山のために……」

「宮下くんは強いんだね」

「そんなことはないよ。見方が変わっただけだ。僕らは人間の一部しか見ていなかったんだ……さあ、あともう少しだ。行くよ」

宮下くんはふたたび歩きはじめました。

「うん」

私も、その頼りになる背中を見ながらついていきました。



「やったー出口だ」

ついに山のふもとに着きました。

「宮下くんありがとう」

「どういたしまして。まあ今後は人間の姿で山のなかを歩かないようにね」

「うん。わかった」

「じゃあ僕は学校に行くから、先に行くよ……ドロン!!」

宮下くんは猪に変身し、猛スピードで走っていきました。

ありがとう。宮下くん。

私は人間の姿で歩き、猪瀬秋菜の家に向かいました。



私は周りの景色からどんどん町に近づいていることを感じていました。

見覚えのある景色がどんどん増えてました。

辺りは田んぼ、電線には小鳥たちが並んでる。また、野生の動物も見られました。

「ここまで来たんだ」

私は立ち止まり、いつもの集合場所にいました。

「懐かしいなあ……咲希ちゃんと優子ちゃん元気かな?」

「秋菜ちゃん!?」

「え?」

私は、声が聞こえた方へ振り向きました。そこには、学校の制服を着た二人の女子、今私の独り言からでた二人が、こっちを見ながら立ってました。

「秋菜ちゃん……だ……秋菜ちゃん!!」

声の主は優子ちゃんでした。優子ちゃんは泣きながら私を抱きしめてくれました。

「優子ちゃん……久しぶり」

「秋菜ちゃんだ……ホントに秋菜ちゃんだ……もう会えないのかなと思って……そしたらいつも胸が張り裂けそうになって……でも、また会えてうれしいよ」

「心配かけちゃったね。ごめんね」

「ホンマに心配したんやで!!」

私は咲希ちゃんの方を見ました。すると咲希ちゃんも目から涙を流しながら私を見ていました。

「咲希ちゃん……」

「このアホ秋菜!!」

咲希ちゃんも私の元に走ってきて、私を抱きしめてくれました。

「悩みがあるならウチに相談せえて言うたやろ……もう、勝手にいなくなりやがって……ウチら幼馴染みやろ!!」

「ごめん、咲希ちゃん。ありがとう」

私は、二人がこんなに私のことを思っていたことを改めて理解し、気づいたら私も泣いてました。

「二人とも……ありがとう……私もすごく会いたかった……」

二人は次第に落ち着きを取り戻し、久しぶりの会話をしました。

「一体どこにおったんや?」

「山のなか……だね」

「はあ?秋菜登山に興味あったんか?」

「登山をしたかった訳ではないんだけど……」

「なるほど。パワースポットですね!!秋菜さんは自然の力を受けて運勢を高めていたんですね」

「パワースポットってなんや?うちらの山そんな有名やないやろ」

二人は笑ってました。しかし、私は逆に暗い表情でした。優子ちゃんが言ったこと、少し合ってると思いました。しかし、それを二人に言うべきか……私は自問自答を繰り返してました。

「秋菜?」

「うん!?」

「なんや辛気くさい顔して……」

「秋菜ちゃん、お腹痛いんですか?」

二人は私をこんなに私を気遣ってくれる。こんな二人に隠し事なんて逆に失礼だ。私はそう思い、決意しました。

「優子ちゃん、咲希ちゃん……二人に言わなきゃいけないことがあるの……」

「ん?なんや?」

「なんでもお聞きしますわ」

「実はね……」

私は下に向けていた視線を二人の目に向けてました。

「私は、きつねなんです!!」

「……え?」

「はあ?秋菜頭おかしくなったんか?」

私は少なからず、このような反応になると思ってましたので、二人の前で決定的な証拠を見せることにしました。

シャリン

ドロン!!

「わ!煙」

「なんやなんや!?どうした秋菜!!」

「秋菜……さん?」

私は二人の前で、きつねの姿になりました。

「秋菜……なのか?」

私は、会釈して答えました。

ドロン!!

私は人間の姿に戻り、ふたたび二人に話しました。

「これが、二人に隠していたことなんだ……この通り私は人間ではないの。二人にサヨナラするつもりは全くない!!ただ、ホントのことを伝えたかった……隠していてごめんなさい」

私は二人に一礼しました。

「やっと明かしてくれたんやな……」

最初に口を開いたのは咲希ちゃんでした。

「なんか……全然信じられへんけど……秋菜がそう言うんやから、ウチは信じるで」

「咲希ちゃん……」

咲希ちゃんはあたたかい笑顔で受け止めてくれました。

「優子もそうやろ?」

「秋菜ちゃん……せっかくだから、私も秋菜ちゃんに伝えたいことがありますの」

「私に?」

「はい。私は中学生のときに引っ越してきたの覚えてますか?」

「うん」

「学校では、私は一人でした。でも、ある日秋菜ちゃんが私に声をかけてくれました。それが私はとてもうれしかったんですよ」

私はそのときを思いだしました。



あれは私たちが中学一年の二学期。

私のクラスに優子ちゃんが天候してきました。

周りのみんなは、もう友だちができていて、優子ちゃんだけ取り残されていたように見えました。

「天笠さん?」

「はい?確か……猪瀬さん?」

「良かったらいっしょに帰ろう」

優子ちゃんとはじめてした会話。

私は少し緊張してましたが、優子ちゃんはとてもうれしそうにしていました。

それから、私たちは次第に仲良くなり、登下校は毎日のようにいっしょでした。



あの何気ない会話を、優子ちゃんはずっと大切にしていてくれました。

「秋菜ちゃんのあの誘いがなければ、今の私はおりません。私はホントに感謝してます。ありがとうございます」

「優子ちゃん……」

私もありがとうの意をこめて優子ちゃんの名前を言いました。

「なんや?二人でエエ話しおって……ところで秋菜はどこに行くん?」

「あ、そうそう。家に帰って、おじいちゃんとおばあちゃんに、私の正体を言おうと思ってるの」

「……」

「……」

二人は黙りこんでしまいました。

「え?どうしたの?」

「秋菜ちゃん……誠に申し上げにくいのですが……」

「なに?」

「アンタのおじいちゃん、昨日病院に運ばれたんや」

「え?」




今回も読んでいただきありがとうございました。

物語はいよいよ終盤です。

どうか最後までよろしくお願いします。

ごきげんよう。

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