すべてを思い出しちゃった!!
皆さんこんにちは。雪が降るとテンション上がる田村です。
今回は、秋菜の過去に触れました。それだけです。
今回もよろしくお願いします。
「着いたよ」
私の目には、周りに草が生えておらず、木の棒が刺さった場所が映りました。
「ここなの?なに、あれ?」
私は棒の刺さった場所を見て言いました。
「……」
「ねぇ、コノハ……」
二人はその木の棒の前まで来ました。
その木の棒には、ある文字が書かれていました。
「なんか書いてある……エダハ……ノノハ?」
「……わかった。教えるね……」
コノハは振り返り、私と目を合わせました。その表情は今まで見たことがない、少し怖い真面目な顔をしていました。
「これは、墓だよ」
「墓?」
「そう……エダハ母さんとノノハ父さんの墓……僕らの家族の墓だよ」
「えっ?」
私は突然の言葉に驚きました。どうしてコノハがこんな場所に私を連れてきたのか全く検討がつきませんでした。
「ねぇコノハ……どうしてここに来ればすべて思い出せると思ったの?」
「姉さんが人間に化けようとしたのは、この二人の死がきっかけだったからだよ」
「おかあさんとおとうさんの……死?」
「二人は人間に殺された。そこで復讐しようとしたんだ……姉さんは一人で……」
「私が……復讐?」
「そう。母さんと父さんの怨み……晴らしてやるって……」
「はっ!」
私は目を見開きました。そして思い出してしまいました。
十年前の壮絶な過去を……
十年前。
「お母さん、お父さん、遊びに行ってくるね!!」
私は元気に言いました。
「わかったわ。イロハ、コノハの面倒しっかり見るのよ」
「もちろんだよ!!コノハは、私がみっちり面倒見るから!!」
「……姉さん怖いよ……」
「何よ?私がコノハをしっかり者の男にしてやるって言ってるの。嫌とは言わせないわよ!!」
「やっぱり怖い……」
「もう……このビビり草食系動物……」
「お、出かけるのか?」
「あっ!お父さん!!コノハを鍛えるために行ってくるの」
「えー!!話変わってる!!」
「黙れコノハ!!」
「ハハハ!!それは楽しみだなぁ。がんばれよ。コノハ」
「と、父さんまで……」
「じゃあ行ってきます!!」
「ああ。日が落ちる前には帰ってこいよ」
「もちろんだよ!!ほら、行くぞ!!コノハ!!」
「うう……」
私はコノハを無理矢理連れていきました。
私とコノハはいつものように遊んでいました。しかしコノハは辛そうでした。
川でコノハの嫌いな魚を捕ったり、森のなかでコノハの嫌いな虫を捕まえたり……
この日までは何不自由ない、楽しい暮らしをしていました。
そんなとき、発端となる出来事が起こりました。
「……」
「どうしたの?姉さん?」
当時はまだ小さいコノハが言いました。
「なにか聞こえる……普段山には聞こえない音……」
私は周囲を見渡しました。
しかし、目からその正体を捉えることはできませんでした。
「なんだろ?行ってみよう!!」
「えー……怖いよ……やめようよ……」
「新しい動物の発見かもしれないのよ?ほら、いっしょに行くよ!!来ないなら置いてくからね」
「ちょっと……待ってよ姉さん!!」
私たちはその音のなる方へ行きました。
近づくにつれて音はどんどん大きくなっていました。
「はっ!見てコノハ!!あれ!!」
私は人間の集団を見ました。
「人間?怖い……帰ろうよ……」
「何言ってるの!?これも修行よ!!」
私は、人間たちが何をしようとしているのか観察を始めました。全員で10人近くいました。
「あいつら、何か背中に背負ってるね……」
「姉さん、何あれ?」
私はわかりませんでしたが、人間たちは、細長く弧に曲がった、一方は細い筒のようになっており、もう一方は厚く太いイチョウの葉のような形になってました。
「なんか話してるね……聞くよ」
私は人間たちの会話を盗み聞きしました。
「いやーついにこの日が来ましたなあ」
「ああ。どれだけ高く売れるのか楽しみだなあ」
「この山はいろいろな動物がいるから、俺は毛皮だけでなく、家に持って帰って鍋にしようと思う」
「それは一石二鳥ですなあ」
私は人間たちが何を話しているのか意味がわかりませんでした。
「ねぇコノハ。あいつらの意味わかる?」
「さっぱりわからない。ただ、すごく嫌な感じがする……」
「えっ?どうして?」
「なんとなくだけど……あの人間達が持ってるの……前にお父さんが説明してくれた危険な物と特徴が一致してるような気がして……」
コノハは震えていました。
「もう何よ?偶然でしょ。私が聞いたときは、大きい音がなるって言ってたよ……大きい音なんて鳴ってないじゃない……」
「うう……」
「コノハは考えすぎなんだよ……ん?また誰か来た」
私は、奥の方からまた誰か来たのを確認しました。
「おお。どうも猪瀬さん。天気に恵まれましたなあ」
「猪瀬さん、早く行きましょう!!猪瀬さんの狩猟魂も昂ってるんじゃないんですか?」
私は、人間たちからイノセと呼ばれる人間が集団の前に立つのを見ました。
「えー皆さま。今日はお集まりいただき誠に感謝申しあげます。今回は最近町に出没した、巨大猪の狩猟です。どうか怪我の無いように注意してください」
イノセと呼ばれる人間は、多くの人間たちに向かって言っていました。
「あの人がリーダーみたいね」
「姉さん、シュリョウってなに?」
「私にもわからないわ。もう少し観察するよ」
「もうやめようよ……僕怖いよ……」
「ここまで来て引き返せるわけないでしょ!?ほら、聞くよ!!」
「うう……」
私たちはまた静かに聞きました。
「基本的には集団行動で行います。私を足して12人いますので、3つの班に別れてください。少ないところは私が入りますので」
イノセがそう言うと、人間たちは3つのグループに別れました。
「それでは行きましょう!!身の危険を感じたら、すぐにこの銃で撃ってください」
イノセがそう言ったあと、人間たちは3つに別れて動き始めました。
「あいつら、山のなかに来るみたいね」
「なんかまずいよ……どうしよう姉さん?」
「お母さんたちに伝えよう!!」
私は立ち上がり一歩歩きました。
パキッ
私は足で落ちていた枝を踏んでしまいました。
「おい!!近くにいるぞ!!」
バン!!
私たちに耳が裂けるような音が襲いかかりました。
「な……なに?今の音……」
私は音が鳴った方を見ました♪すると、一人の人間が先ほどまで担いでいた細長い物を、筒先から煙が出た状態で持っていました。
「姉さん……やっぱりあれ、お父さんが言ってた危険な物だよ……」
「……は、早く戻るよコノハ!!」
私たちは全速力で走りました。
バン!!バン!!
「そっちにいるぞ!!」
バン!!バン!!
人間たちから恐ろしいほど大きい音が私たちを襲い続けました。
「うう……こわいよ……姉さん……」
コノハは泣いていました。
「うるさい!!早く戻るよ!!早くお母さんとお父さんに伝えなきゃ!!」
私たちは家へと向かいました。
私たちは、なんとか家にたどり着きました。そこにはお母さんが心配している様子でいました。
「あっ!イロハ!!コノハ!!」
「はぁはぁ……お母さん、はぁ……たいへんだよ……」
「ええ。音でわかったわ。怪我はない?」
「はぁ……私は大丈夫……」
「はぁはぁ……僕もはぁはぁ……だい……じょうぶ……はぁはぁ」
「それは良かったわ……ねぇ、あなたたちお父さん見かけなかった?」
「見てないけど……お父さんいないの?」
「あなたたちが心配だって言って飛び出して行ったの……」
「ウソ!?危ないよ!!私、探してくる!!」
「危険よ!!私が探してくるから、あなたたちはここにいなさい!!」
「お母さん……」
そのときのお母さんはとても恐い顔をして言いました。
「いい?ここから絶対に出ちゃだめよ!!」
「うん……わかった……」
私とコノハは家の近くにある洞穴に身を伏せました。
一方お母さんの姿はもう見えなくなっていた。
お母さんが家を出てからしばらく時間がたち、太陽はなくなり、辺りは暗い闇に包まれていた。
バン!!バン!!
静かな闇とは裏腹に、遠くから大きな音のみが響いた。
「お母さんたち、遅いね……」
私は長く続いていた沈黙を破りました。
「う、うん……大丈夫かな?」
「大丈夫よ。いつものようにごはん持って帰って来るって……」
私はなんの根拠もなく言いました。
それからまた時間がたちましたが、依然として二人が帰ってくる気配はありませんでした。
「もう我慢できない!!」
私は立ち上がりました。
「姉さん?」
「私、二人を探してくる!!」
「やめておきなよ……お母さんにここにいろって言われたじゃん……」
「でもこんな遅くなるなんておかしいわ。もう真っ暗だから道に迷ってるのかもしれないし……大丈夫!!私はここらへんの道には詳しいよ。それに人間どもは夜に帰るって言ってたし」
「で、でも……」
相変わらずコノハは恐怖で怯えてました。
「コノハはどうする?ここにいてもいいよ」
「やだよ!一人なんて……」
「じゃあいっしょに行きましょ」
「うう……」
コノハはゆっくり立ち上がりました。
私たちは隠れていた洞穴から抜け出し、暗闇のなかお母さんとお父さんを探しに行きました。
真夜中の山は私たちの足音のみが響いていました。
「お母さんたち、いないね」
「暗いなあ……もう家に着いてるんじゃないかな?」
「それはコノハが早く家に帰りたいだけでしょ!」
懸命に探す私と、暗闇に怯えるコノハはどんどん進みました。
「あれ?」
私は何かが動いていることに気づきました。
「う、動いている……」
「この匂い……なんか変な匂いもある……お母さん!?コノハ!!行くよ!!」
私とコノハはお母さんと思われる物の元に行きました。
「お母さん!?」
「……う……イロハ?コノハも?どうして……来たの?」
「二人の帰りが遅かったから……お母さんどうしたの?」
私には、お母さんが苦しそうに思われました。
「ね……姉さん……」
コノハはお母さんのを見て言いました。
コノハの視線を追うように、私はお母さんの身体を見ました。
「えっ?」
そのとき、お母さんの前足と後ろ足一本ずつが切断されたように無くなっており、そこから大量の血が流れていました。
「ど、どうしたの!?なんでこんなになってるの!?」
私は突然の衝撃的な視界に驚きました。
「う……走っていたら、地面から口が出てきて……気づいたときにはこうなってたの……」
「どうしよう……これまずいよ……」
「僕、それお父さんから聞いたことがある……人間の仕業だ……」
「お父さん……お父さんはどこ!?」
私はコノハの言葉からお母さんに聞きました。
「……」
「ねぇお母さん!!」
「……姉さん……」
「どうしたのコノハ?」
そのとき、コノハの顔は全く血の気を感じない、絶望した顔をしていました。
コノハの視線は、お母さんではなくその先を向いていました。
私はその視線の先を見ましたが……
えっ?
私は硬直しました。
お母さんの少し離れたところに、血まみれのお父さんが横たわっていました。
「お父……さん?」
私はゆっくりお父さんに近づきました。
「お父さん……なに寝てるの……」
「姉さん……」
コノハは泣き出しました。
「ねぇ……お父さんってば……」
私はお父さんの側にいくと、お父さんの身体中に黒い穴があいているのを見ました。
「……お父さんね……歩けなくなった私の盾になってくれてたの……人間から何回も傷つけられたんだけど……人間どもが引き下がるまで倒れなかったのよ……」
私はもうこれ以上お母さんの言葉を聞きたくありませんでした。
「お父さん……」
目はあけない。
「おとうさん……」
呼吸も止まってる。
「おとう……すぁん……」
一匹ハエが止まりました。
「いい加減目を覚ましてよ!!いつまで寝てるの!!あれだけ私の遅起き注意してたじゃない!!私のこと言っといて……自分がやってるじゃない!!もう!!もう……」
「姉さん……」
私の目から、堪えていた大粒の涙が次々に流れてきました。
コノハが涙を流しながら、お母さんの側から私に向かって言いました。
「姉さん……もう……」
「言わないで!!」
私はもう何も聞きたくも見たくありませんでした。
「う……」
「お母さん……」
コノハとお母さんが話していました。
「私も……もうダメだわ……何だか……どんどん眠くなっていく……」
「お母さん……そんなことしないで、僕らを置いていかないでよ……」
「コノハ……あなたは、イロハを護れる立派な男になりなさい……それからイロハ……コノハを……よろしくね……」
私はお母さんに振り向きませんでした。振り向かなくてもわかったからです。
「お母さん?ねぇ……お母さん……お母さん!!」
私はお母さんの呼吸が聞こえなくなりました。
山の天気が私たちに同情したかのように雨が降り始めました。
「グスッ……グスッ……お母さん……お父さん……」
「……」
雨のなか、私たちはずっとこの状態でした。
「……コノハ、行くよ」
「グスッ……姉さん?」
「二人を家まで運ぶよ。私はお父さんを運ぶから、コノハはお母さんをお願い……」
「グスッ……うん……」
私はコノハと一切目を会わせませんでした。
私たちは家まで二人を背負い運びました。
コノハとは何も話さず、私たちは家に着きました。
私は背負っていたお父さんをゆっくり降ろし、その場で穴を掘りました。
「姉さん……何してるの?」
「二人を埋めるのよ。それくらいわかるでしょ……」
「も、もう埋めちゃうの?もう少し二人の顔を見てたいよ……」
私はコノハの前にたち、
パチン!!
私はコノハの頬をビンタしました。
「……姉さん……」
「言わなきゃわかんない?ホントにガキなんだから……」
私は降っている雨よりも冷たく言いました。
「もう二人はいない。私たちが運んだのはお母さんでもお父さんでもない……ただの肉の塊よ」
「姉さん……どうしてそんなこと……」
「コノハ、二人の顔を見ていたいって言ったわね……無理だよ。それは二人の顔じゃない。ただの死骸なんだから……」
「ひどいよ……姉さん……」
「わかったら早く埋めて……」
「……」
私たちは二人の身体を土に埋めました。
「グスッ……お母さん……お父さん……」
「い……の……せ……」
「……コノハ。私決めた……私人間に化ける……」
「姉さん?本気なの!?」
「今日から修業して、人間に化けられるようにする。私たちが着けているこの鈴で化けられるみたいだし。まあどうやってなるかは良くわからないけど……」
「そんな……あれはお父さんが危ないからやめろって言ってたよ!」
「今日以上危険だって言うの!?」
「……姉さん……」
「危険とか、そんなの関係ない。私は人間になる。そして……」
私の頭の中には山に登ってきた人間の顔が浮かんだ。
「復讐してやる……」
「姉さん?」
「お母さんとお父さんの怨み……はらしてやる!!」
その日から、私は人間に化けられるようになるため、毎日修業に励みました。
私の原動力は憎しみだけでした。
そして一年後、私は人間の化けかたを知り、なんとか習得することができました。
「コノハ……私行ってくる……」
「ホントに行くの?姉さん……」
「大丈夫……必ず無事で戻ってくるから……」
「姉さん……」
「雨の日に川には近づくなよ。あのときみたいに助けられないからね」
「……」
「じゃあね。コノハ」
「わかった。必ず戻って来てね……」
こうして私は山を降り、人間の住む家を探しました。
随分長く歩いた。
私の前に一つの家がありました。その家には『猪瀬』と書いてありましたが、なんと読むかはわかりませんでした。
「まずはここから始末する」
私は鈴に念を込めて人間に化けようとした。
「……ドロン!!」
辺りは白色の煙に包まれました。
「よしっ!できた」
人間になった私は、近くにあった尖った木を持って家に入ろうとしました。
ドクッ!!
「な、なにこれ?……めまいが……」
ドクッ!!
「うう……うううう……」
私はめまいと呼吸が苦しくなってしまい、その場で座り込んでしまいました。
ドクッ!!ドクッ!!
「だめ……呼吸が……できない……」
私はついに倒れ、気絶してしまいました。
「思い……出しちゃった……」
静かな闇夜に雨が降り始めました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
結構暗い話でしたので、私のメンタルも大暴落でした。
狩猟が良くないってことではありません。その内容はまた今度触れます。
秋菜……いや、イロハはこうして人間界に来たんですね。復讐のために……こういうの個人的には結構好きなんですよね。
次回は、再び人間界に戻ります。そこでとる秋菜……イロハの行動は?
またお会いしましょう。ドロン!!