きつねになっちゃった!!
みなさまこんにちは。気温の寒さより心の寒さが気になっている田村です。友達募集中です(笑)
さて、今回は、秋菜とコノハをメインにしたお話です。
コノハから告げられる、秋菜の真実。秋菜の心の移り変わりにも注目して頂けるとうれしいです。
あまりにも情報が多いと思ったので、今回は短めの作品にさせていただきます。
今回もよろしくお願いします。
9月4日。土曜日。
天気は曇り。
朝の8時、私は目を覚ましました。
時間が少したつと、おじいちゃんとおばあちゃんは外出しました。
昨日のように、おばあちゃんが私の部屋の前で「ごはん置いてあるからね。行ってきますね」といい家を出ていきました。
私はごはんよりも、彼、コノハを待っていました。
今日、コノハからすべてを聞く。
コノハを待ち早くも一時間がすぎる。
今か今かと私は待ちわびていました。
シャリン
鈴の音だ。
私は早速窓を開けました。
シャリン!!シャリン!!
窓開けると鈴の音はより大きく聞こえました。
シャリン!!シャリン!!
私は窓の外から顔を出しました。
シャリン!!シャリン!!……
音が止まり、私の目には一匹の子ぎつねが写りました。
「あれ?昨日とは大違いだ。また距離をおかれるのかと思ってたけど、今日は歓迎って感じだね、姉さん」
「あなたからいろいろ聞きたいことがあるの……窓越しで話すのは悪いわ。よかったら中に入って」
私はそういい、子ぎつねのコノハを私の部屋に入れました。
「ここが姉さんの部屋か……なんか落ち着かない……」
「コノハ……」
「姉さん……やっと僕の名前読んでくれたね!もしかして思い出してくれたの?」
「……ごめん。あなたのことは正直覚えていないの……」
「……そうか……やっぱりそうだよね。仕方ないよ」
「ねぇ、コノハ!!」
私は立ち上がりました。
「単刀直入に聞くわ。私は一体なんなの?」
「……」
二人の間に沈黙が起こりました。
「姉さんは……姉さんだよ。僕の大好きな姉さんだ」
コノハは小さな声で言いました。
「それじゃあわからないよ。もっと詳しく教えて」
私は強く言いました。
「……実はね……正直姉さんに伝えるべきか迷ってるんだ……」
「どうしたの?改まって……今日話すって言ってたじゃん」
「うん……でも姉さんのことを考え始めたら……言わない方がいいのかなって思ってさ」
「私のことを考えてるなら尚更教えてよ。私は、私を知りたいの!!」
コノハは下を向きしばらく黙りこみました。
「……わかったよ姉さん……」
「うん。お願い!!」
私はさっきより強く言いました。
「じゃあまず姉さんについて言うよ。でもその姿を見ればだいたいわかるよね?」
「え?姿?」
そういえば、今日起きてから私の姿を鏡で見ていないことに気づきました。
私は鏡の前に立ちました。
「なっ!なにこれ!?」
私は絶句しました。
パジャマ姿であるが、手足は毛むくじゃら。鋭く尖った爪。そして毛むくじゃらの顔。
鏡に映っていたのは、変わり果てた私の顔。まるできつねの顔でした。
「まだ見ていなかったんだね……」
「ウソ……これ私なの?」
私は腰が抜けてしまい座りこみました。
「そう。姉さんは僕と同じ……キタキツネの仲間なんだ」
私は理解に苦しみました。私は単純に、お前は人間ではないのだと言われたように感じました。
「どういうこと……私は、人間じゃないってこと?……」
「そうなんだ。もっと言えば、姉さんは人間に化けていたんだ」
また衝撃な言葉がとびました。
「化けていた?……私が?」
「そう。僕らの復讐のために……」
聞いたら聞いたで、さらに謎が深まっていきました。
「ちょっと待ってちょっと待って!!ちょっと整理させて……」
「ごめん……いきなりこんなこと言われたらそうなるよね」
「……」
私は驚きのあまり声を出すことができなくなってました。
「……ねぇコノハ……」
「どうしたの?姉さん」
「要するに、私は……あなたのように……きつねになれるってことなの?」
「姉さん……うんもちろんだよ」
「じゃあ、じゃあ教えて!!」
私は立ち上がり言いました。
「だって、そういうことなんでしょ?私だってなれるんでしょ!?」
私は半信半疑でしたが言いました。
「落ち着いて姉さん、もちろん教える」
そう言うと、コノハは懐から銀の鈴を取り出しました。
「まず、これを首もとにつけるんだ」
私は言われるがままにその鈴を着けました。
「こ、こうでいいの?」
シャリン
「うん大丈夫。似合ってる」
「で、このあとはどうすればいいの?」
「ここからなんだけど……ちょっとね……」
コノハは言いにくそうでした。
「アンタ、もしかして私にただコスプレさせたかっただけなの?この変態……」
「いやいや!そういう意味じゃないよ!!」
「じゃあ早く教えてよ」
私はふてぶてしく言いました。
「ちょっと言葉で説明するのは難しいんだよなぁ……一言でいうと、その鈴に念を込めるんだ。その後にドロン!!って呪文を言うんだ」
「……変態……」
「いやいやホントだって!!信じてよ姉さん」
私はあまり納得していませんでしたが言われた通りやってみました。
集中……
この鈴に念を……
集中……
この鈴に思いを……
集中……
この鈴に心を……
シャリン
「ドロン!!」
私は叫びました。すると私の周りに白い煙が立ちこめました。
しばらくすると、目の前には巨大なコノハが立っていました。コノハは私の顔を見て驚いていました。
「すごい……あれしか説明していないのに成功させるなんて……」
「え?成功したの?」
「鏡を見てみなよ」
私は横にあった鏡で姿を確認しました。なんとそこには、四足歩行のきつねが映っていました。
「ウソ……これが私?」
「すごい。さすが姉さんだよ……ドロン!!」
再び白い煙が舞いました。するとコノハもきつね姿になっていました。
「まあこういうことなんだよ姉さん。僕らはこの通りきつねなんだよ」
「すごい……完全にきつねになっちゃった!!」
「因みになんだけど、姉さんは今まで人間の姿だったんだけど、何か異変とかあった?」
「そりゃあもう大有りよ!!三日前からしっぽは生えるし、おとといはヒゲ生えるし、そして昨日は耳まで生えるし!!」
「そっか、やっぱりね。それは姉さんがかけた呪文がどんどん解けていた証拠なんだ。人間からどんどんきつねに戻っていたんだよ。しっぽは特にないけど、突然鼻がよく利くようになったり、耳がよく聞こえるようになったりしたんじゃない?」
「う、うん確かに……部屋にいたのにリビングの玉子焼きの匂いがしたし、普段聞こえない隣の部屋から声が聞こえるようになったり……」
「きつねの姿に戻るのといっしょに五感も徐々に取り戻していたんだよ」
「……きつねってすごいのね……」
私はきつねの五感をついつい褒めてしまいました。
「野生の動物なんてこのくらい当たり前だよ。もっとすごいヤツもいるんだよ!!蟻とかゴキブリとかゲジゲジとかムカデ」
「うわわ!もういい!それ以上言わないで!!」
「そ、そう?……わかった……」
コノハは不思議だなあと思っている顔でした。
「……確かにわかったわ。私はホントにきつねだったんだね……」
「うん。そして僕の姉、イロハ姉さんだよ」
「イロハ……それが私の名前なんだね……」
私は次々にくる真実を真摯に受けとめました。
「ねぇコノハ……元はきつねだった私が、どうして今は人間として生活してたの?」
「……」
コノハは一度黙りこみました。
「……できればここでは話したくないんだ……」
コノハはそう言うと、開けといた窓際に跳び移りました。
「来てほしいところがあるんだ……そこですべてを話すよ……」
「コノハ……わかった。私行くわ」
私も窓際に跳び移りました。
「じゃあついてきて」
コノハはそう言うと、外に飛び出しました。
久しぶりの外の世界。
私は一拍おいてから外に飛び出し、コノハについてきました。
今日の空も曇り。
いつ雨が降ってもおかしくないほど分厚い雲が浮いている。
私は、どこに行くかもわからないまま、コノハの後ろをついて行きました。
私たちは見慣れた道を歩いていました。
辺りは田んぼ、電線には多くの小鳥、車もほとんど走っていない静かな町が広がっていました。
四足歩行で歩いているせいか、全てが大きく見えてしまい、変な違和感を感じました。
気づけば、私たちは、優子ちゃんと咲希ちゃんと学校に行く集合場所が見えてきました。
「じゃあここの道曲がるよ」
コノハはそう言い、集合場所を通らず道を曲がりました。
「ねぇコノハ……私たちはどこに向かうの?」
「あれだよ……」
コノハの目線の先には、大きな山がありました。
「あれって……翁山?」
「うん。あと三時間くらいで着くよ」
「さ、三時間……トホホ……」
コノハは再び前を向いて歩き、私は渋々歩きました。
ついに翁山に着きました。
「はぁ……疲れたー。コノハはいつもこんな距離を歩いていたの?」
「もちろんそうだよ。本番はこれからだよ姉さん」
「も、もしかして……この山登るの?」
「うん。でも一時間位だからすぐ着くよ」
「ふええ……」
私はさらに渋々歩きました。コノハが依然として疲れていないことが、私は不思議で仕方ありませんでした。
森林溢れる山を登り始めてからしばらく時間がたち、私はすでに疲れていました。
「はぁ、はぁ……コノハ……ちょっと休憩させて……」
「え?まだ半分くらいなんだけどなあ……まあ仕方ないか。わかった。すぐ近くに川があるからそこで休もう」
コノハは今まで真っ直ぐ歩いていたが、方向を左に変えて進みました。
歩いてすぐ、森の中から小さな川が見えてきました。
「よし。ここで休憩だ」
「ふ~疲れた~」
私はすぐに座りこみました。
「ねぇコノハ……人間の姿に戻っていい?四足歩行の姿勢疲れるんだよね」
「完全に人間慣れしちゃってるね……いいよ」
「よっし!!……ドロン!!」
私は人間の姿に戻りました。家にいたときの私服になっていました。
「ふぅ……快適~」
「じゃあ僕も……ドロン!!」
コノハも人間になり私の隣に座りました。
「姉さん体力無さすぎだよ。人間の状態のときあまり運動してなかったでしょ」
「どーせ私の体力テストはいつもド底辺ですよ」
「やっぱりね……のど渇かない?ここの川は山から出た水だから、綺麗だしおいしいよ」
「ホントに?あまり気がのらないけど……いただきます」
私は口元を川に浸けて水をのどに通しました。
「く~!!冷たくておいしい!!」
「でしょ。僕もこの水が大好きなんだ」
私はしばらく水を飲み続けました。
「ふぅ。おいしかった」
「ははは……姉さんとここで水を飲むなんて、ホント十年ぶりだよ」
「……ごめんなさい……」
私はコノハに謝りました。
「どうしたの姉さん?そんな突然……」
「あなたの言っていることを、私はもう疑っていない……でもまだ、あなたといっしょにいた記憶が全く思い出せないの……だから、ごめんね……」
「姉さん……少し、ここの思い出を話してもいい?」
コノハは話を切り替えてくれました。
「何かあるの?」
「うん。あのときは台風が来たときだったんだ。僕はまだ小さかったから、強い風に飛ばされて川に落ちたんだ。荒れ狂う川……もう僕は死んでしまうのかと思った。でもそんなとき、姉さんは自ら川に飛び込み、僕を助けてくれたんだ……あのときはとても嬉しかったんだよ」
「私がそんなことを!?今じゃ正直考えられないや……むしろ私が助けられる方かな」
私は眉をハの字にして笑いました。
「……あの日に僕は決めたんだ……」
「ん?」
「いつか姉さんが困ったときに助けられるように、強くなろうって……」
「コノハ……私のことそこまで考えてくれていたんだね……ありがとう……」
「な、なんか恥ずかしいなぁ……あはは……」
私はまだ思い出せませんでしたが、とてもうれしい気持ちでした。
「ねぇコノハ、行こう。私、早く思い出したい。本当を私を、そして本当の私にとってのあなたを……」
「姉さん……うん。わかった。あと半分がんばろう」
私とコノハは立ち上がり、さっきまで歩いていた山道に戻りました。
辺りはどんどん暗くなり、空は夜になっていました。
山の中はとても静かで、私たちの足音だけが響きました。
「見えてきたよ」
コノハは前を向きながら言いました。
私もその先を見ましたが、そこには、草がはえていない場所があり、なにか棒のようなものが、地面に刺さっているのが見えました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
秋菜は人間ではなかったんですね。また、コノハが場所を移して真実を告げようとすることにもいくつか理由があります。一つは秋菜の記憶を取り戻すため、もう一つは……これはネタバレになるので控えさせていただきます。
次回はいよいよ秋菜の過去を含め、全ての謎を書いていこうと思います。
どんな真実が告げられるのか、楽しみにしていてください……いや、楽しみにはしない方がいいかもしれません。
では、また次回お会いしましょう。
今回もありがとうございました。