耳生えちゃった!!
みなさまこんにちは。またまた見てくださりありがとうございます。
今回は、タイトル通り、耳が生えてしまいます。さらに、秋菜とあの不審者が二人きりになるというお話です。
秋菜は一体どうなってしまうのか?そしてあの銀髪不審者は何者なのだろうか?
また、後半では幼馴染みの咲希が登場します。秋菜と咲希の関係を掘りさげてみました。
よろしくお願いします。
9月3日。
コンコン
ドアのノックがいつもよりとても大きく聞こえました。
「秋菜ちゃん、朝よ……ごはん、できてますからね……」
おばあちゃんの声。今日はびくびくした声だった。
昨日の今日だ……仕方ないよ……
私は口を開かず無視してしまった。
起きたくない……このままずっと寝ていたい……もう外に出たくない……
私は起きてそう思いながら側の窓から外を見た。
今日も青い空。雲ひとつない素直な快晴……でも……
私は窓の反射を利用して自分の顔を見ました。
ヒゲに黒い鼻先。
腰に手をあててみると、そこにはモフモフしたしっぽ。
やっぱり無くなってなんかいないか……
ピクピク
ん?
私は映った自分の顔に違和感を感じました。
ピクピク
え?
私の頭の上の方になにかついていることに気がつきました。
ピクピク
私は気になって、鏡の前に立ちました。
ピクピク
「なにこれ?……みみぃ……」
なんと今日は頭から上に向かって生えていました。
「こんなの……隠せるわけないよ……」
私は落ち込み、再びベットに潜り込みました。
もう嫌……わけわかんない……
昨日の出来事、この耳の件が合わさってしまい、私は心が押し潰されそうになりました。
コンコン
ドアのノックがした。耳が生えたせいか、すごく大きく聞こえてきた。
「秋菜ちゃん……学校行けそう?」
「……外に出たくない……」
「そう……わかったわ……学校にお休みの連絡しますね……あと今日はおじいさんと私は出かけなきゃいけないから……留守になるけどお願いね……」
「……勝手にして……」
おばあちゃんは私の部屋から離れました。
おばあちゃんに悪いことしたと感じたが、正直どうでもいい気がしてしまった。
こんなに死にたいと思ったのは初めてだ……
しばらくすると、おじいちゃんとおばあちゃんは出かけました。
おばあちゃんは「ごはんおいてあるから食べてね」と言って出ていきました。
おじいちゃんからは一言もありませんでした。
二人は私のなにかを隠してる。どうしてよ?……
私は怒りよりも不信感がわいていました。
気づけば時間は11時を過ぎる。
今頃授業は三時間目が終わろうとしているんだろうな……
私は眠くもないのにベットのなかに籠ってました。
グルルル
お腹がなってしまった……
そういえば昨日の夜からなにも食べていなかった。私はおじいちゃんとおばあちゃんがいないことを利用してリビングに向かいました。
そこにはおばあちゃんが作ってくれた、私の大好きな甘い玉子焼きがラップにかけられて置いてありました。
「いただきます」
私は一言告げて、無言で食べ始めました。
食事はあっという間に終わってしまいました。やっぱりおばあちゃんが作る玉子焼きはおいしい。でも、おばあちゃんとおじいちゃんに対しての不信感のせいか、素直に喜べませんでした。
食事を済ませた私は自分の部屋に戻り、ベットに横たわりました。
時間は12時を指していました。
こんな時間まで二人はどこに行っているんだろう……
私はおじいちゃんとおばあちゃんが行った先を考えてました。
最近は歳のせいで車の運転を辞めてしまった二人。
基本的には歩きで近くのスーパーで買い物をするから、こんな時間かかるわけがない……
どこに行ったんだろう……
シャリン
私は二人のこと考えていた最中、聞き覚えのある音がしました。
シャリン
これは鈴の音……音が大きくなっている。
シャリン……シャリン
近づいてくる。しかも私の部屋に向かって。
シャリン、シャリン、シャリン
窓の方から聞こえる!!
私は恐怖のあまり、窓のカギをチェックし、カーテンをしめました。
ベットは窓に近かったので、私は窓から離れた扉の方で座り、カーテンで遮った窓にらみつけていました。
シャリンシャリン……
音が止んだ。
すぐそこに誰かいる。
私の頭の中では、昨日出会した不審者の姿が映りました。
きっとあの不審者だ。間違いない。
余計に恐怖が増していき、私の震えが止まらなくなってしまった。
そこにいる!
窓のすぐそこにいる!!
私は震えて見てました。
「ねぇ」
声が聞こえた。静かで澄んだ声。
「キャーー!!」
ついに恐怖感が有頂天になり、私は悲鳴を上げました。
「帰って!!帰って変態!!消えて!!早くそこからクレンザーかけられたみたいに消えて!!」
私は叫んでしまいました。
すると、窓の外から静かな声が帰ってきました。
「ごめん……脅かす気はなかったんだ……元気そうで何よりだよ……」
「あ、あなたに心配される義理なんてないわ!!」
「お……落ち着いて……僕は変態なんかじゃないから……」
「信じられるわけないでしょ!!一体あなた誰なの!?」
「……」
少し沈黙がおきた。
「……そっか……やっぱり覚えていないんだね……残念だ……」
「え?」
私はこの人と知り合いなのかと思いました。でもこんな声の人は記憶にない。
「あなたは……私を知ってるの?」
私は少し落ち着きを取り戻して言いました。
「もちろんだよ……10年間ずっと忘れたことなんてないよ」
10年間?ずっと?
次第に私の心は恐怖より疑心を抱いていました。
「あなたは……だれ?」
「僕の名前はコノハだよ」
「コノ……ハ?」
「覚えていないか……ねぇ、出来れば姿を見せてくれないかな?僕の顔を見たら思い出すかもしれない……もちろん部屋に入ったりなんてしない……話をするだけだよ」
気がつけば恐怖心は消えていました。むしろ親近感がわいていました。
「わ……わかったわ……姿だけなら……」
私はゆっくり窓に近づき、カーテンを両手で掴みました。
「本当に……なにもしないのね?」
「うん……心に誓う」
少し間をおき、私は一気にカーテンをあけました。
「……あれ?」
窓の外には誰もいませんでした。
「ど……どこにいるの?」
私はカギは開けずに言いました。
「ごめん……窓の下だよ」
私は言われた通り窓の下を見ました。
モフモフ
え?
そこには一匹の子ぎつねがいました。
「きつね?」
「そう、僕だよ」
子ぎつねは私の方をじっと見ていました。
シャリン
その首には銀の鈴が着いてました。
確かこの子ぎつね、二日前に優子ちゃんと帰っているときに見かけたきつねだ。
「な、なんの悪戯よ!?あなたも姿を見せなさいよ!!」
私はその子ぎつねがしゃべれるわけないと思い、上下左右様々な方向に向けて言いました。
「……うん、わかった……」
やはり子ぎつねの方から声が聞こえました。
すると、子ぎつねは下に視線を送り震え出しました。
「な、なにやってるの?」
私はとうとう子ぎつねに向かって言いました。
「ハァー……ドロン!!」
次の瞬間、辺りが白い煙に包まれました。
「うわっ!」
私はびっくりして窓の側のベットに座り込みました。
白い煙は次第に晴れていきました。すると、そこには人影が見えました。
「驚かせてごめんね……僕だよ」
煙は晴れ、私はその姿を見ました。
「え?うそ……」
そこには、長く伸びた銀の髪、心を落ち着かせるような青い浴衣姿、ラインは細いが高い身長、昨日見かけた鈴の男でした。
「は……はああ……」
私は腰が抜けてしまい、ベットの上で座ったままでした。
「やっと直接話すことができる……この姿になったら話す気になってくれるかな?姉さん」
「え?」
姉さん?
なぜかそこだけ聞き取ることができました。
「姉さん……って……どういう意味?」
「姉さんは姉さんだよ!!僕の面倒を見てくれた、僕の家族だよ!!」
もう理解不能だった。
こんな人知らない……でも私の弟なの?
ガチャガチャ
家のドアが開く音でした。おじいちゃんとおばあちゃんが帰ってきたようです。
「姉さんごめん、また明日話そう」
「ちょっと待って!!意味わからないよ!!なんで私があなたの姉なの?」
「ごめん、あの二人には見られたくないから、明日ちゃんと話すよ。じゃあまたね……ドロン!!」
また白い煙が立ち込めました。
「あ、ちょっと待ってよ!!」
煙はすぐ晴れましたが、もうそこには男の姿もきつねの姿もなくなっていました。
一体彼は何者なんだろう……
それに……窓は閉めたままだったのに、なぜ不自由なく会話できたのだろう……
おじいちゃんとおばあちゃんが帰ってきてからしばらく時間がたつ。
おばあちゃんが「お昼ごはんできてますからね」と言ってくれましたが、私は無視して自分の部屋にいました。
気づけば時間は午後の4時をまわっていました。
今頃授業が終わって、みんなは下校している頃なんだろうなぁ……
しかし休んだら休んだで暇だなぁ……眠くもないし……
私はボーッとしていました。
カッカッ
私は足音が聞こえました。革靴で歩いているような音。
私は不思議と思いました。窓は閉めたまま……なのに外から足音が聞こえる……
カッカッ……
足音が止まった。
ピンポーン
家のインターホンがなりました。
「はーい」
おばあちゃんの声がし、家の扉が開けられる音がしました。
「あら、咲希ちゃんじゃない」
「どーも!おばさん、おひさしぶりです」
咲希ちゃんの声がしました。私の家に来たのは大親友の咲希ちゃんでした。
私は一言挨拶をしたいと思いましたが……しっぽ、ヒゲ、黒鼻、頭から耳……すべてが丸見えだった私はそのまま部屋にいました。
「咲希ちゃん、今日はどうしたの?」
「ああ、そうやそうや。今日学校で配られたプリント持ってきたんすよ」
「あら、わざわざありがとね」
「そんな気にせんといて……なあ、おばさん、少し上がってもええか?秋菜に言いたいことあんねん」
え?私に言いたいこと?
「……構わないけど……あの子、ずっと部屋に籠りっぱなしなのよ……」
「なら尚更話したいねん!!じゃお邪魔するで」
咲希ちゃんが私の部屋に近づいてくる……
コンコン
部屋のノックがしました。
「秋菜!!うちや、咲希や!!起きとるか?」
咲希ちゃんの相変わらずの元気で話していました。
「……なあ、おばさん。ここからうちらのガールズトークや。おばさんはリビングに行っといてや。もちろん盗み聞きもあかんで。思春期のうちらを怒らせんといてや」
咲希ちゃんは楽しげに言いました。
「咲希ちゃん……わかったわ。秋菜をよろしくね」
おばあちゃんはリビングに戻りました。
「よし!!これで二人きりやな。なぁ秋菜、聞こえてるか?」
「咲希ちゃん……部活は?」
「へへ。バックレてきた。集中できそうになかったからな……秋菜、部屋に入ってもええか?」
「……ごめん。今は顔をあわせられない……」
私は扉に寄りかかり、小さな声で言いました。
「そっか。なら入らへん」
咲希ちゃんがそう言うと、咲希ちゃんも扉に寄りかかりました。
私たちは扉越しで互いの背中を合わせてるように話していました。
「……優子も心配しとっで。まあ生徒があるから今日は来てへんけど……秋菜さんは重症だって言って、なんでかわからんけど学校に救急車呼ぼうとしてたんやで。ほんまに優子の天然ボケには参ったわ」
「ふふ……優子らしいなあ……そうか……優子にも心配かけちゃってるんだね……」
私は、咲希ちゃんが私を元気づけようとしていることは感じとりましたが、素直に笑うことができませんでした。
「……あ、そうそう。意外なことに宮下のやつも秋菜のこと心配しとったで。」
「え?あの宮下くんが?」
「そうや。昨日から心配しとったみたいやで。昨日はマスク姿だったからって。宮下に一歩近づいたんちゃうか?やるなぁ秋菜」
「もう、からかわないでよ……でもそうだったんだ……なんかうれしい」
私は少し笑顔になりました。
「……なあ秋菜……おまえ、なんか隠しとるやろ?」
「え?どうしてそんなこと聞くの?」
「だって、バレバレやもん。秋菜の様子から余裕でわかったわ」
「……咲希ちゃん……すごいね……」
「なんや辛気くさいなぁ。アンタのどれだけ付き合い長いのか考えれば、こんなの普通や。伊達に幼馴染みやってないで」
「咲希ちゃん……」
「幼馴染みっていうと、どうしても昔のこと思い出してしまうなぁ……うちらが初めて会ったのは幼稚園でや。秋菜が一人ぼっちで砂場にいたところを、うちがちょっかい出したんや。そしたら秋菜泣いてしもうて、うちが先生に怒られたんや。でもそのあとから、うちが外で遊ぶと秋菜は砂場からポツンと一人でうちを見てたんや。そこで気になったうちは遊ぼって声かけたんやけど、そしたらまた泣いてしもうて。また先生が来たんやけどうちは怒られなかったんや。なんでなら、秋菜は嬉し泣きしてからなんや。それからいつも遊ぶようになって……気づいたら大親友になったとうちは思うとるで」
そうなんです。咲希ちゃんとは幼稚園からの付き合い。私が生まれて初めてできた友だち。幼稚園のときから私は引っ込み思案で、他の子に声をかけることはもちろん、挨拶すらできませんでした。しかしそんな私に声をかけてくれた咲希ちゃん。あのとき嬉し泣きしたときのことは今でもはっきり覚えています。
うれしいときも悲しいときも……あの日からずっと私は咲希ちゃんといっしょにいました。
「……なあ秋菜。隠しとることを無理に言えなんて言わへん。だけど……どんなことであろうと、うちは秋菜の味方やからな。だって……うちらは友だちやろ」
「咲希ちゃん……」
私は泣きながら言いました。咲希ちゃんに遊ぼと誘われたときのように泣いてしまいました。
「なに泣いてんねん……ホンマに泣き虫なんやから……明日から土日で学校休みやな。ここでしっかり休んで、また月曜日に会おうや」
「……」
私は泣き止むことができず聞いていました。
「……じゃあ、うち帰るで。ここに今日のプリント置いとくからな。またな、秋菜……」
咲希ちゃんは寄りかかっていた扉から離れ、プリントが置かれる音がした後、咲希ちゃんが玄関に向かって行きました。
「お邪魔しました!!」
咲希ちゃんの元気な声は私の家と私の心に響きました。
ありがと……咲希ちゃん……
咲希ちゃんが帰ってから、私は今私にできることを考えました。
この姿をおじいちゃんとおばあちゃんに見せようか……いや、たとえ見せたところで二人はなにも教えてくれないだろう。
咲希ちゃんと優子ちゃんに伝えようか……いや、見せたら見せただけで二人を驚かすだけだ。
私は考えました。すると、脳裏にあの男の顔が浮かびました。
コノハ……
彼は明日も来ると言っていた……彼ならなにかを知っている。
私は残された僅かな希望を彼……コノハに託すことに決めました。
どんなことを言われるのかは想像つきませんでしたが、私はすべてを受け入れようと思いました。
気づけば外は真っ暗闇。
私は明日に備えて眠ることにしました。
ベットに行き布団を被りました。
明日……何かわかるかもしれない。
私はそう思いながら、眠くもない目蓋を閉じて眠りました。
一体私は何者なんだろう……
みなさま、読んでくださりありがとうございます。
やっと物語が動いてきたように思います。
しかし、幼馴染みとは良いものですね。転校に転校を重ねてきた私には、こんな友だちはいないので、秋菜がとても羨ましいなあと思いながら書いていました。
次回からは、秋菜の壮絶な過去を書いていこうと思います。
大分シリアスな話になると思いますが、どうかみなさまが読んでくださることを、心からお祈り申し上げます。
それでは、また次回お会いしましょう。