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○○はえちゃった!!   作者: 田村優覬
2/9

ヒゲ生えちゃった!!

皆さんこんにちは。

今回は新学期二日目!!……しかし朝起きると今度はヒゲが生えてしまったんです!!しかも鼻先まで黒くなってしまって…… しかも不審者まで登場……

今回は新キャラも登場。さらにドタバタした話になっております。

短いお話ですが、ご興味を持っていただくと幸いです。

 9月2日の朝。

 新学期2日目です。


 コンコン

「秋菜ちゃん、朝ですよ」

 私の部屋の外から、ノックのあとおばあちゃんの声がしました。

「う~……わかったよ……」

「朝ごはんできてますからね」

「う~ん、は~い……」

 私は大好きなベッドから出ました。

 モフ

 あれ?やっぱりか……

 私のしっぽは生えたままでした。なんかうれしいような残念のような……

 私はしぶしぶクローゼットから制服を取りました。

 私は重い目蓋をなんとかあけて、制服に着替えようと思い部屋の鏡の前に立ちました。

 ヒク

 あれ?

 なんだろう……なんか自分の顔に違和感を感じてました。

 ん? はなの横から黒い線が左右三本ずつ…… そして鼻先が少し黒ずんでいる。

「なにこれ?誰かのイタズラ?」

 私は誰かに顔を落書きされたのかなと思いました。

 私はその黒い線に触れてみました。

 あれ?

 なんか変に立体感がある。もう一度さわってみました。

 あれ?

 左右両方とも髪の毛よりも硬い毛であることがわかりました。

 あれ?

 私はその毛を左右に引っ張ってみました。

「いててて!」

 顔が真っ二つになりそうな痛みを感じました。

 うそ!?

 私はめが覚めました。そして気づいてしまったんです……私にまた怪奇現象が訪れたことを。

「ぎゃー!!何なのよこれ!!ヒゲみたいになってるんだけどしかも結構長いからすごく目立ってるし。昨日はこんなところに変化なかったのに……」

 コンコン

「秋菜ちゃんどうしたの?大声出して」

 ノックのあとおばあちゃんの声がしました。

「お、おばあちゃん!!入らないで、絶対に入らないでよ!!フリとかじゃないから、本当に入らないで!!」

「わかりましたよ、ともかく早く支度しなさいね」

「わかった、わかったよおばあちゃん。おじいちゃんが教えてくれる女性論よりわかったから!!」

「なに訳のわからないことを言ってるんですか?早く来なさいね」

 おばあちゃんは私の部屋から離れました。

 一体どうしたらいいものか……

 これでは表に出られない。この黒ずんだ鼻を隠さなきゃいけない。

 私は昨日と同じく、小さな小さな脳ミソをフル回転させて考えました。そして私の部屋を見渡し、あるものが目に映りました。

「これだ!!」

 タララタッタラ♪マースークー♪

「よし!!なんとか隠せてる」

 口元はもちろん、黒ずんだ鼻先もマスクに隠れ、最大の敵であるヒゲも隠れました。

 ささっと着替えを済まし私は部屋を出ました。


 私はリビングに向かいました。

「おはよー……」

「あら秋菜ちゃんどうしたの?マスクなんてしちゃって……」

「いやー、ちょっと風邪気味だなぁと思ったからさー、えへへ……」

「お熱は大丈夫?」

「うん。怠さは全くないから大丈夫だよ」

「そう……」

「さぁ朝ごはん朝ごはん」

 なんとか誤魔化し、私は朝ごはんを食べようとしましたが、

 ま、まずい……

 ごはん食べるということはマスクを外さねばならない。

 止まった私を見ておじいちゃんが言いました

「秋菜、食欲ないか?」

「うーん……ちょっとね……ごめん、今日朝ごはんいらないや。もう学校行くね」

 コンコン

 私はリビングを立ち去り靴を履きました。

「秋菜ちゃん、本当に大丈夫?」

「うん。せっかく朝ごはん作ってもらったのに、ごめんね、じゃあ行ってきます」

「秋菜!」

 私が家から出ようとした瞬間、おじいちゃんが珍しく大きな声で私に言いました。

「どうしたの?おじいちゃん、びっくりした……」

「なあ秋菜……」

 おじいちゃんは私の目をしっかり見て言いました。

「お前、本当に風邪なんだよな……」

「え?うんそうだよ。でもそんな重症じゃないから大丈夫大丈夫」

「なあ秋菜……」

 おじいちゃんは私から目をそらしうつむきました。

「……ごめん、今日もみんなを待たせる訳にはいかないからもう行くね!行ってきます」

 私はその場から無理やり脱け出すが如く、家を出て集合場所に向かいました。



 集合場所に着きました。まだ誰もいないので今日は私がイチバンのようです。

「ふぅ~、これで咲希ちゃんのニギニギの刑はなしだ」

 ほっとした私でしたが間もなく咲希ちゃんと優子ちゃんが来ました。

「あら、皆さんごきげんよう」

「おはよーさん、優子、秋菜……ん?どうしたん?秋菜」

「あはは、ちょっと風邪ひいちゃったみたい」

 私は家にいたとき同様、これを風邪であることで誤魔化そうとしました。

「なんや?昨日一日でまいってもうたんか」

「えへへ、まあそんな重症じゃないから大丈夫だよ」

「いえ、これは一大事ですわ」

 優子ちゃんがまるで明日世界が終わってしまうのではないかといわんばかりの表情をして言いました。

「こ、これはただの風邪なんかではありませんわ。きっと命に関わる重大な病気ですわ!!」

「あの……さっき重症じゃないって言ったんだけど……」

「いえ、それがこの病気の恐ろしい症状。今平気でも後々あっちこっちから厳しい痛みが出るんですわ。秋菜さん、行きましょう、すぐ病院に行きましょう。すぐに集中治療室に行きましょう!!」

「マスクしか着けてないんだけど……うう、手術のこと考えたら変な感じする……」

「きっと……それは風邪のせいですわ!!」

「全会一致であなたのせいです!!」

「ふぇ?」

「ははは!!相変わらずおもろいなぁ」

 優子ちゃんの天然玉砕炎上事故を咲希ちゃんが消火してくれました。

「まぁ秋菜は風邪ひかないっていうことわざがあるくらいやから気にせんでええやろ」

「私とバカは同類みたいに言わないでよ」

 咲希ちゃんもボケはじめてしまい、今日も賑やかな登校となりました。



 学校に着きました。今日も地獄の授業が始まる……

 すると、私の席に一人の男子が近づいてきました。

「あれ?猪瀬さん風邪引いたの?」

 その声は女子なら誰もが知っている声。宮下旬くんの声。

「え?あ、いや、ちょっとね……風邪気味だなあと思ってさ」

「ホントに?無理しないでね。なんか気分悪くなったらすぐに言ってね」

「は、うん……わかった……」

 宮下くんは私の席から離れました。

 宮下旬くん。アイドルのような美少年であり女子からの人気はスカイツリーよりも高い。身長は優子ちゃんより少し高く、性格はとても優しくて、しかもサッカー部のキャプテンにもなったスポーツイケメン。私たちの理想とはまさに彼のことを言うんだなと思います。

「なんや?顔真っ赤やで~」

「はっ!咲希ちゃん!!」

「見とったで~。宮下に話かけられてたやないかい」

「うん……びっくりした……」

「どうや?かっこよかったか?」

「う……うん……ていうかやめてよ。冷やかさないで」

「ははは!!今の顔可愛かったでー秋菜」

「もう……咲希ちゃんの意地悪……」

「わりぃわりぃ……まああんまり心を寄せんようにな」

「え?」

「ほら見てみ」

 咲希ちゃんは優子ちゃんの席に視線を変えました。

 そこには優子ちゃんと宮下くんがいっしょに話していました。

「まあそういうことやな……良い女には良い男がいっしょになるんよ。まあ付き合ってはないようだけどな……」

 それもそうだ。優子ちゃんは生徒会長。そして宮下くんは副会長なんだよね。二人が仲が良くても決して不思議じゃない。

「なんか……お似合いだよね……」

 まるで王女様と王子様のような二人を見ながら、私は羨ましく、ちょっと寂しく見ていました。



 ふぅ……

 地獄の時間はなんとか終わりを告げ、私は帰る支度をしました。

 給食は保健室でなんとか隠れて食べられたことが唯一の祝福でした。

 マスクのおかげでヒゲと黒鼻は周りにはバレずにすみました。

「秋菜、お疲れさん」

「うんお疲れさま。咲希ちゃんはこれから部活だよね」

「まあな。新人戦まで残りわずかやからな。気合い入れて行くで」

「うん。私も応援してるから、ケガのないようがんばってね」

「おう!ほなまた明日な」

 咲希ちゃんは大きなテニスバックを持って教室を走って出ていきました。

「秋菜さん……」

「あ、優子ちゃん。いっしょに帰ろう」

「そのことなんですが……」

「ん?どうかした?」

「ええ、生徒会の活動が突然できてしまってですね……今日はいっしょに帰ることができないのです」

「そっか……わかった。じゃあ私先に帰るね」

「申し訳ありません。患者を一人にしてしまい」

「なんか私入院してる人みたいになってる……」

「あ、それから道中で知らない人についていかないようにしてくださいね。飴あげるからって言われてもついていかないことですよ」

「私あなたと同い年なんですけど……」

「は、いけない。では、私は生徒会の方に赴きますね。秋菜さんお大事に」

「うん。がんばってね会長。バイバイ」

 優子ちゃんといっしょに教室を出て私は右の校舎、優子ちゃんは左の生徒会室に向かいました。



 私はひとり下校。まあよくあることです。ちょっと寂しいんですがね。

「はぁ~、二人ともすごいなぁ。咲希ちゃんは部活のエース級プレイヤー。優子ちゃんは学校の顔である生徒会長。それに比べて私は……」

 ひとり下校になるといつもこう思ってしまいます。どうして私は、あんなすごい二人といっしょにいられてるのかな……

 シャリン

 ん?

 鈴の音が聞こえて目線を足元から前に切り替えました。

 するとそこには、浴衣を着た長い白髪で身長が高い美青年がいました。目は細く、なぜだか首に鈴をつけていました。

「ん?」

 目が合ってしまった!!まずい。知らない人……ていうか確実に怪しい人。ええい、無視無視。早く家に帰ろう。

 私ははや歩きになり自宅へと向かいました。

 その男は立ち止まっておりこちらをずっと見ていました。

 私は歩き、男との距離がどんどん近づいてくる。

 近づいてくる。

 近づいてくる!!

 そして私は視線をそらしながら、その男の隣を通りすぎました。

「あの?」

 声変わりが始まったばかりの、高く澄んだ声が聞こえた。

「いえ!私はついていかないですよ!絶対ついていかないですからね!!飴とかそんな安もんじゃ私の心は動きませんからね!!」

 私は走ってその不審者から離れました。



「はぁ……はぁはぁ……はぁ」

 息を荒げ私は自宅に着きました。マスクを着けていたせいで余計に息が上がってしまいました。

「あら秋菜ちゃんお帰りなさい。どうしたの?そんな息荒げて」

「秋菜帰ったか。どうした?」

「はぁはぁ不審者……はぁ不審者がいたの」

「不審者?」

「そう不審者。近くに温泉なんてないのに浴衣着て、髪は長くて銀色だし……」

「まぁ……困ったわ、おじいさん」

「そうだな。お巡りさんに連絡するか」

「そ、それに、首に鈴着けていたんだよ。しかも声までかけてきて、絶対危ない人だよ……ん?」

 今の一言で空気が大きく変わったような感じがしました。おじいちゃんとおばあちゃんの顔つきが少しこわばっていました。

「そ、そう……秋菜ちゃん、わかったわ。伝えてくれてありがとうね。ね、おじいさん」

「あ、ああ……教えてくれてありがとな。まあ早く着替えてゆっくりしてなさい」

「う、うん。わかった」

 私は自分の部屋に戻りました。

 さっきの空気はなんだったのだろう……あんな表情をした二人を見たのは初めてかもしれない。



 ガチャ

 私は自分の部屋に入り、早速鏡の前でマスクを外しました。

 三本のヒゲ、黒い鼻先は相変わらずでした。

 制服も脱いでみましたがしっぽも健在でした。

 一体私に何が起こってるの?

 私はそう思い、床に座り込みました。

「おじいさん、どうします?」

 隣のリビングからおばあちゃんの声がきこえました。

「いつかこうなるとは思ってた……」

 私は壁に耳をあてて聞きました。

「警察には言わないんですか?」

「ああ、伝えては逆に面倒になるからな」

 え?

「秋菜ちゃんをどうするつもりですか?」

「……さあな……我々には、どうにもできない問題だ」

 どういうこと?

 私は部屋を出てリビングのドアをノックしました。

 コンコン

「ねぇ……おじいちゃんおばあちゃん」

「あ、秋菜ちゃんどうしたの?」

「ドアは開けないで」

「え?わ、わかったわ……」

「どうした?秋菜」

「どうして?お巡りさんに伝えないの?」

「聞いていたのか……」

「ごめん……盗み聞きしちゃった」

「なぁ秋菜、今お前隠してることあるだろ?」

「なんでその話になるの?」

「お前が隠すように俺たちもお前には言えないことがあるんだ」

「なによ、それ……」

 私は握りこぶしになりました。

「私が危険な目にあったっていうのに……どうしてなにもしてくれないの?」

「秋菜、悪いが今回は俺たちが解決できるようなことではないんだ」

「どうしてよ!?」

 私は大声で言いました。

「どうにもできないならお巡りさんに連絡すればいいじゃん!!」

「秋菜ちゃん、落ち着いて」

「落ち着いてられないよ!!おばあちゃんもおじいちゃんも……もうワケわかんないよ……」

 私は感情のあまり泣いていました。

「もう……勝手にして……」

「秋菜ちゃん」

 私はすぐ自分の部屋に戻りベットに飛び込みました。

「うっ……なんなのよ……大嫌い……」

 私は夜中までずっと泣きました。

 あとでおばあちゃんが晩ごはんの知らせでノックしたそうですが私には全く聞こえていたせんでした。

 秋のきれいな月とは裏腹に、私は泣きながら今夜を過ごしました。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回で登場したイケメン二人はどうでしたか?

もちろん次回からも出します。顔しか出さないキャラは書かない主義なので……とくに宮下旬くんは皆さんの理想の男性を想像してもらえればと思います。

また今回は暗い終わり方にさせていただきました。一体秋菜にはどんな運命を突きつけられるのか……またそれぞれのキャラとの繋がりにも注目してみてください。

今回もありがとうございました。1月中には次話を投稿しようと思いますのでよろしくお願いします。

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