類は友を生産しているのか
サムとイチはロードの言われるままに大きな壁がそびえたつ彼女の城にやってきた。しかし、困ったことに門前払いをされてしまった。確かに、城下の人間がいきなりやってきて、ロードとの面会を求めるなど言語道断のことである。だが、自信満々に城にやってこいと言ってきたロードが何の話も門番に通していないことにサムは苛立った。イチはそんなサムを子どもにしては冷めた目で見ている。浮浪者に近い二人のここ最近の生活は元から狐につままれたような不思議なものであった。このくらいの、自分の願いが通らないということは今まで毎日あったことだとイチは諦めていた。はたから見れば、妙に覚めた目をした子供と感情のままに動く大人。この二人は性格が反対であれば、ちょうどいい精神年齢になるのではと思わせる二人であった。
「だから、俺はロード様とやらに呼ばれてわざわざ出向いてやってきているんだよ」
サムは門番に突っかかる。
「知らん。それなら、許可証を見せろ」
門番はサムの怒声にかまうことなく、取り付く島もない。門番はしっかりと防具をつけ帯剣までしている。いざとなれば、うるさくわめくサムを実力行使によって、追い払えるので、時間の浪費であるサムの相手をする気は今のところ全くない。
そんなやり取りを数分間続けていると、なにやら新たな門番がやってきた。
「うるせぇな。静かにしろよ。こちとら便所帰りなんだよ」
防具をつけているが、やけに薄く着崩していて、帯剣もしていない不真面目そうな男だった。
「入場証も特別許可証もなしにロード様との面会を求める馬鹿どもが先ほどからうるさいのだ。私のせいではない」
堅苦しく、微動だにしなかった門番が新たに来た男にめんどくさくなったのか、サムとイチの処理を任せようとする。
「あ、もしかして、例の奴らか。名前はなんだ」
何かに気付いたかのように不真面目な門番は言い、二人の名前を尋ねる。
「サムとイチだ」
サムは人生の8割がた不機嫌であるが、最高潮の不機嫌のなかにいたので、仏頂面で答える。彼の最高の程度は限りなく毎度のことであったが。
「やっぱ、当たり、当たり。嬢様から聞いてる。いつもの犬猫と一緒だよ」
最後の言葉はもう一人の門番を向き直って言った。
「ちょっくら、俺は嬢様のところに連れて行ってくるわ。お前、一人で見張りよろしく」
そう言って、さっさと踵を返し、ろくな説明もなく身分が下のものを有無を言わせずに従うことを疑ってない姿はロードによく似ていた。この城にはロードのような人間ばかりなのかとげんなりしていたサムが、イチの様子をちらりとうかがうと、彼も同じようなことを考えていていたのか苦笑しながら笑みを返した。
「よく似ているね」
誰とは言わないが二人して通じ合った瞬間だった。