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電脳世界ディストピア  作者: OTAM
5章 相変わらずキャラの多いこの状況、もはや収拾がつく気がしない!
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91話 女子の占い好きは異常

 センターに置かれているのは何もフトモン関係のグッズだけではない。

 ここに足を運ぶ人の多くは確かにフトモンユーザーだが、それ以外にも本人はフトモンをやっている訳ではない親御さんも少なからずやってくる。

 そういった保護者のためにセンター近くにちょっとした喫茶店があり、そこでも色々とARが活用されており、そのカテゴリは非常に多岐に渡るため休日には家族サービスでここにやってきた大人達で賑わう。

 そんな社会人達に交じって俺とうめ先輩は店内でさっきの対戦の続きに興じていた。

 この施設では俺の目は殆ど役に立たない。 狭い空間に、同じ場所に複数のARが入り混じって表示されているため、チャンネル・電波の切り替えを行わないこの目では情報過多だからだろう。

 思いのほか手強かったうめ先輩に何とか勝利を収め、祝杯のコーヒーを啜りながらアーリー越しに壁にかけられたARサイネージを眺める。

 サイネージは確か標識とかそんな感じの意味で、一昔(と言うほど昔でもないが)前に急速に市場を拡大させていた電子看板、デジタルサイネージの派生である事を考えれば看板と訳すのが妥当だろうか。

 要するにARを用いた広告媒体で、アーリーに登録された個人情報・通販記録などを参照して、その人が最も望む或いは望みそうな商品の広告を掲載するという代物だ。 広告とは言うもののデジタルの情報である以上、動画も3Dも、場合によっては音声もありと自由度はかなり高い。

 もちろん、アーリー上に存在する全ての商品の広告をその対象とする事も可能なのだが、流石にこの空間で他の人に共有される事が無いとは言ってもアダルトグッズの広告を流すのは好ましくないとの判断からか、予め契約を結んだ幾つかの商品の広告のみが表示されるようになっている。

 だから、同じサイネージを見ていても、同じテーブルに座っていても、俺とうめ先輩では見えるものが当然異なってくる。


「……何が見えてる?」

「俺のだとフトモンの新作ですね、戦国ゲームとのコラボの第2弾。 うめ先輩のは?」

「……秘密」


 そう言って先輩は視線をアーリーの画面に、ARサイネージの広告に戻した。 どうやらそこに表示された商品が気になるらしく、ちらちらと画面下を伺っている。

 QRコードを読み込む広告がそうであるように、ARサイネージも映像の出力方式の差異はどうあれ、その広告をカメラに収めた状態であればいつでも商品の公式サイトへのアクセスや新天寺社の通販サイトでの購入が可能。

 で、それらのサイトへのリンクが表示されるのが画面下方。


「隙ありっ」

「……あっ」


 画面と睨めっこしていて俺への注意が完全にお留守になっていたうめ先輩のアーリーを人差し指で押えてこちらに向けつつ、覗き込む。

 彼女のアーリーに表示されていた広告はフトモン占いの本。 有り体に云ってしまえば動物占いとか星座占いとか、その手のありきたりな占いのフトモンバージョンである。 と、夢の無い事を言うのは簡単なのだが、こんなところで現実語って好感度を落としても仕方ない。 女子と言うのは太古の昔から占いと噂話が大好きと決まっているのだから。


「……」

「勝手に覗いたのは謝りますけど、そんなに睨まんで下さい。 それで……気になるんですか、それ?」

「……うん」


 うめ先輩は少し恥ずかしそうに俯く。 非科学的なことも、ナンセンスなのも十分に理解していて、その上で好きなんだろうなぁというのが容易に想像できる反応だ。

 もしくは、フトモン自体が好きで「弟がやっているから」と言うのも方便。 フトモングッズは気になるが、夏芽のようにお子様になりきれないという線も考えられる。

 いずれにせよ、恥じらう彼女は実に可愛らしい。

 アーリーをテーブルに置き、それから肉眼で改めてARサイネージを眺める。

 当然、何の情報処理も行われないままのサイネージはただの絵に過ぎず、何かしらの商品の情報が表示される気配はない。 こうして肉眼で見た時にはフトモンのイラストなので店内の雰囲気を損ねる事が無いのもARサイネージのメリットだろう。

 絵を眺めている風を装いつつ、アーリーを操作してフトモン占いの本を購入。 ギフトで送り先にうめ先輩を指定する。


「……あ」

「届いたらまず俺との相性を占って下さい」

「……うん」


 流石にやり過ぎたか、と思わなくもないがまあ良いか。


「……もう一戦、する?」

「うーん、それよりも何か一緒に遊べそうなものを探しましょう」

「……うん」


 先輩の承諾を確認し、今度は天井に張られたモンスターのシールにカメラを向ける。 シールのモンスターはシリーズを象徴すると言っても過言ではない電気属性のフトモンだ。

 そのシールを捉えると同時に、アーリーが新天寺社のサイトに接続され、幾つかの項目が表示される。 新製品情報、イベント情報、体験版……とある中から体験版の項目を選択。

 ARでカメラの視野の外側にまで体験版一覧がずらりと表示される。 このままでは候補が多過ぎるので、プレイ人数を2人に限定して絞り込みをかける。

 10前後に絞り込まれた選択肢の中から、適当なパーティゲームを選ぶ。

 確かこれは数年前に人気を博したアイドルグループの冠番組のゲームが収録されているとかでちょっと話題になったゲームだ。 アーリーのCMに起用された縁で生まれたコラボなんて言われていたが、どう考えても計算づくです。 本当にありがとうございました。

 そのゲームの体験版のデータを先輩のアーリーにも送信し、ダウンロードが終了するまでの間、のんびりとコーヒーを味わう。


「……あ、そう言えば」

「ん、なんですか?」

「……えっと、誕生日と血液型……教えて?」


 何故かおずおずと首をかしげるうめ先輩。

 恐らく、さっきの占いをする時に必要なのだろう。


「2000年の12月25日でA型です」

「……あ、九と一緒」

「って事は会長は99年の12月25日生まれ?」

「……うん、血液型はA型」


 ……あの金髪雌ギツネ、ちょっとは空気読めよ。

 取り合えず、クリスマスと誕生日が一緒にされるからという話はきっと「……それ、九も言ってた」とか言われるだろうなぁと思いつつ、「大事なのは相性だから。 先輩の誕生日も教えてくれよ」と強引に話題を逸らした。

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