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電脳世界ディストピア  作者: OTAM
4章 新キャラ続々の新章、果たして作者はこの数のキャラを捌けるのか!?
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85話 マニアに専門の話を振る時はまず時計を確認するべし!

 まあええか。 その言葉を全力で否定したくなるまでにさほど時間はかからへんかった。

 延々とまったくもって理解不能な専門用語を垂れ流す八姉(ヨウネエ)。 いちいちリアクションを求められる訳ではないんがせめてもの救いとは言え、ゲームに関する事のクセに妙に小難しいから頭が痛い。

 かと言って、話題を逸らそうとすると共通の話題と言えば、家族や新天寺社関係になると気が滅入る。 ジンさんの話はウチの良心にざくざく突き刺さってとてもじゃ無いけと耐えられへん。 となると、秋一関係の話しか無くなるんやけど……。

 延々とアレ絡みのコイバナをさせられるのは正直キツイ。 ちゅー訳で秋一が夕飯を作り終えて呼びに来るまでの1時間弱、いわゆる廃人トークを聞かされる羽目になった。


「零度持ちか。 アーリー以前の配付は持ってないんだよなぁ……千里と話を合わせる為に始めたようなもんだしな」

「粘りに粘ったHBDVだから物凄く堅いよー。 Cは妥協しちゃったけど」


 一瞬、救いの主にも見えた秋一もまた廃人やった。 いや、実際には日長一日引きこもっているであろう八姉(ヨウネエ)よりは平々凡々やろうから、廃人と言えるほどやり込んでいるかどうかはゲームそのものをやってへんウチには分からへんけど。

 しかし、何と言うかゲームを始めた理由まで女絡みとは実にコイツらしい……。

 ウチの存在なんてお構いなしに盛り上がる二人に冷めた目を送りつけてみるものの、どっちも一切反応せえへん。

 そんなウチとは対照的に、食事中なのに喋り倒すゲーム馬鹿を秋一母は暖かい目で見守っている。 この息子とは似ても似つかんおっとりした美人さんに何かを期待しても無駄やっちゅーことは八姉(ヨウネエ)をあっさり受け入れた時点で理解しとったけれど、いくらなんでも自由すぎるやろ、この人。

 ちなみにウチらは八姉(ヨウネエ)の傍におるだけで命に関わるから、廃人ズから少し離れた場所に置かれたテーブルについて向かい合う格好になっている。 秋一母がどんな説明を受けたのかは知らんけど、こうして距離を置いてるって事はその辺の事情はきちんと理解してくれてるんやろうか?


「ホンマにええんですか? それ以前に疑問に思わへんのですか? (ウチ)がおるのに赤の他人の家に居候とかどう考えてもおかしいやないですか?」

「んー、別に良いんじゃないかしら? うちは経済的にはそれなりに余裕があるし、警察にでも咎められない限り何が困るってものでもないし。 何より……」

「何より?」

「ヨウちゃん可愛いもの!」

「……さいですか」


 ああ、うん……間違いあらへん。 この人は秋一のお母ちゃんや。

 よう見てみたらこの人の視線はウチと八姉(ヨウネエ)の胸やら太ももやらに重点的に注がれとる。 その表情は何となく千里ちゃんを彷彿とさせるものがある。

 要するに、何かキモイ。 少しばかり朱に染まった頬に左手を添えた彼女の薄笑いは間違いなくあの変態後輩のそれと酷似していた。


「何ならあなたも一緒に住む?」

「お断りします」


 突拍子もなく放たれた言葉と同時に向けられた、温厚そうな瞳の奥に宿る飢えた蛇蠍のような爛々と輝く狂喜。 のほほんとした外見に似合わず、思わず生まれてこの方一度も使った事のないような単語で表現したくなるほどの眼力をミセス羽原は持ち合わせとった。

 あー、うん……一部の隙も無くこの人は秋一のお母ちゃんやわ。

 ウチの即答にがっくりとうなだれて落ち込むも、すぐに立ち直ると食事を再開する。

 目の前にある料理は白米、みそ汁、ローストチキン、冷奴、漬けものが少し。 それから秋一と八姉(ヨウネエ)、ウチと秋一母のテーブルにそれぞれ大皿に盛り付けられた海鮮サラダ。 あまり凝ったものはないけど、一汁三菜は一応揃っていて冷蔵庫にあるもので男子が適当に作った料理としてはなかなかの出来やろう。


「うむ、味もまあまあ。 でも、料理ならウチの勝ちかも知れんね」

「本当かよ? 随分と自信満々だな」

「ホンマや。 ゆりさん直伝のウチの料理の腕前を舐めてもらったら困るなぁ~」

「んじゃ、今度弁当でも作って来てくれよ。 まあ、ハッタリじゃないならで良いけど」


 ウチの言葉に耳聡く反応した秋一は挑戦的な眼差しでそんな事を抜かしよった。

 その目に応じるように、得意気な笑みを浮かべつつビシッと生意気な後輩を指差す。


「言いよったな。 くっくっく、覚悟せえよ?」

「ああ、せいぜい楽しみにさせてもらう」


 気軽な調子で首を縦に振ったのを見て、内心ガッツポーズ。 これであの羽原 秋一の吼え面が拝める!

 九ちゃん謹製の冷めても美味しいお弁当の圧倒的クオリティに涙するが良い!!

 ……あれ?


「な、なんでウチがわざわざアンタのために弁当作ったらなならんねん!?」

「言い出しっぺなんだから自分の言葉くらい守れよ、会長」


 気付けば秋一は得て当然の勝利を然るべくして手に収めた、とでも言わんばかりの余裕綽々の澄まし顔で味噌汁を啜っている。

 もしかして、ちゅーかもしかせんでもここまで計画通り?

 その結論に達したウチの言葉を先回りするように、味噌汁のお椀から口を離した秋一が「正解」と短く、ぞんざいに答えた。

 ……きっとウチは今後もこんな調子でずっとこいつに良いように使われるんやろなぁ。

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