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電脳世界ディストピア  作者: OTAM
4章 新キャラ続々の新章、果たして作者はこの数のキャラを捌けるのか!?
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65話 クールごとの折り返しにある総集編的な回って最初から観ている時には邪魔だけど、途中から視聴の作品だと思った以上に重宝するから油断出来ない

 とりあえず状況を整理しておこう。

 何やら色々と新キャラが登場したが頭数が何人いようと実はどうでも良い。

 重要なのは新天寺社の目的が思った以上に直接的な方法――端的に言ってしまえば出来の悪いSFみたいな毒電波を使った洗脳――による世界征服であるということ。

 そして俺にはその毒電波を無効化する才能があるらしく、今後この才能が連中の邪魔になる可能性がある。 そこでやっこさんとしては俺にはもう少し大人しくして欲しい、ということらしい。


「で、その白髪の子は迂闊に近付くと危ないかもなので気をつけて下さい」

「ふぅん、何やらオカルトじみて来たわねぇ……」


 時刻は放課後、午後4時半。 本橋さんを掴まえ、生徒会も部活もすっぽかして学校近くの喫茶店の4人掛けの席に座り、新たに得た情報の幾つかを彼女に提供していた。

 もちろん、俺にとって都合の悪そうな情報は伏せつつ、だが。 都合の悪い情報に該当するものの大半は“強引な行動を誘発する可能性がある”ものだろう。

 たとえば俺に外部からの干渉を無効化する才能があるなんて話をすれば、大須 冬彦や愛千橋病院の医師の手を借りて「俺の脳波を分析すれば、超能力を無効化する技術を確立させられるんじゃないか」という話になり、晴れて軟禁されてしまうリスクが生じる。

 ダイレクトに洗脳という新天寺社の目的も五の弁から察するに、既に予測されている可能性はあるが説明は控えた方が良いだろう。 これだけ普及したゲーム機をどうこうするのは困難極まりなく、電波だの超能力だのに対抗する術なんてそう簡単に調達出来るものじゃない。 親方日の丸の力を借りれば白昼堂々とジャミングするくらいの無茶は出来ない事もないだろうが、洗脳マシンが本格的に稼働する前に新天寺社を潰してしまえという流れるなるかもしれない。

 大体、親方日の丸ってのはつまり彼らが体制の側に属する人間であるのと同義。 現段階でも日本に住む人間を完全に操れるようになるかもしれない技術がありますよ、なんて教えようものなら彼らが、もしくは彼らの上にいる勢力が「よし、使おう」とか言い出しても何らおかしくはない。

 そもそも、新天寺社を倒してハイめでたしで済ませる気があるなら大概の問題はとっくに解決している。 彼らが経済的損失だとか、ニューロンが無くなった場合の他の通信にかかる負担を避けたいがために現在のこう着状態が生まれているのだから。 結局のところ、国益を考えて動く集団であるという事実を忘れてはいけない。


「オカルトじみて来たも何も、俺の目や夏芽のアレの時点で分かってたことでしょうに」

「あなた達にとってはそうでも私はまだ眉につば塗りたくりたい心境よ」


 そりゃそうだ。 彼女にしてみればそっちの方がよほど身近な存在で、超能力の存在を実感せざる得ないような要素これと言って無いのだ。 俺に言わせればいい年こいて自称正義の味方って方がよほど現実感のないものなのだが。

 それはさて置き、不必要な情報を漏らしてはいけない一方で、新天寺社が強引な手に打って出られないのは彼女たちの名称すら不明の組織の監視が抑止力になっているからなのもまた事実。


「それで、他に何か分かった事はあるの?」

「上手く説明出来ないんですけど、新天寺社製のインカムやメガネは装着しない方が良さそうです。 そういう本橋さん側は何かしら新しい情報はないんですか?」

「んー、特にないわね」


 しれっと答えてはいるが、これは間違いなく嘘だ。

 愛千橋病院の医師との会話は途中までしか聞いていないが1か月前に大した情報を得られなかった相手に改めて話を聞きに行って、やっぱり何の情報も得られなかったというのはあり得ないだろう。 どうやら俺が会長と店から出て行った後もしばらく話していたようだし、放棄された施設とやらの件もある。 そこから得た情報を頼りに何かしら事態が進展していてもおかしくはない。

 少なくとも、彼女の所属する組織が何かしらしておいて「何もありませんでした」なんて報告を許すほどボンクラな組織ではないと考え、その上に仮定を積み重ねて行くべきだろう。

 そもそも、彼女達にしてみれば俺にわざわざ情報を提供するメリットなんてないに等しいのだから。

 と、ここまでは新天寺社と相変わらず名称すら不明の本橋さんが所属する組織に関する話だ。


「そうですか……なら、この話はここまでって事で」


 これ以上得られるものが無いなら、この話題を続ける事に何の意味もない。

 さっさと見切りをつけて、何か適当な話題がないかと考える。


「あ、そうだ。 生徒会の機関紙についてちょっと相談が……」

「機関紙? そんなの発行してたっけ?」

「今はまだです。 ただ、先代は不透明ってことで不満を持つ生徒がそれなりにいたみたいなんで、可視化を進めてみようかと。 まあ、選挙の時に公約に掲げたからってのも少なからずありますけど」


 もっとも、可視化したらしたでまた新たな問題が発生しそうではあるのだけれど。

 いやぁ、生徒会に文化祭や体育祭の資金繰りやら、部費の振り分けやらを丸投げするのってゲームや漫画の中だけの話じゃなかったのな……。

 最終的には教職者の判が必要になるとは言え、特定少数の生徒にこんなもん触らせていいのかよ。


「へえ、意外ね。 あなたなら他人の金を思いのままに使えるとか最高だぜ!とか言って嬉々として手をつけるような気がしたのに」

「流石にそれは傷つくわ……」

「ふふ、日頃の行いが悪いからよ」


 一体、普段の俺の素行の何が問題だと言うのか。

 そりゃあ、生徒会を可愛い女子で固めてハーレムまがいの状態になるように仕向けたりと若干やんちゃなのは否定しないが、そんなものは能力的な問題で出来る出来ないがあるものの健全な男なら誰だって考えることだろう。

 要するに、俺は札幌農学校の初代教頭のありがたいお言葉を座右の銘に日々真っ当に生きているだけである。


「否定はしませんけどね。 で、機関紙についてなんですけど……」


 誤魔化し、と言うのとは別に相談しておきたかったのも事実。 なので、適当に軌道修正を図りつつ、悩みの幾つかを打ち明ける。

 まず、機関紙を発刊する動機。 これは単純明快でそういう要望は多いから、そして可視化と同時に何故その議題を論じ、どのようにして結論を導いたのかを明確に示すことで理解を得ようというものだ。 もっとも、それはそれで新たな不満や異論を引きずり出す誘因になるものでもあるのだが。

 次に――これが本橋さんに相談した内容なのだが――どのようにして機関紙を生徒の手元に届けるか。 わざわざ印刷して、先生方にHRの際に配布してもらうというやり方ははっきり言って気が進まない。

 後期選挙が文化祭終了後の11月の頭にあり、前期組は続投しない限りはそこでお役御免となるが、それまでの夏休みの約1カ月を除いた5カ月程。 これが今の生徒会の活動期間になる訳だ。 この間に何度機関紙を出すかもまだ決まっちゃいないが、わら半紙数百枚分を印刷するコストと時間が惜しい。


「なるほど、確かに無駄な手間も出費も減らしたいものね。 そうなると、図書館に数冊設置するとか、後はインターネットかニューロンにホームページでも開設するとか? 幸い、ニューロンなら技術面では苦労しないでしょう?」

「ええ、まあ。 そこで盗み聞きしているボンクラーズがいるんで」


 言い終えると同時に店内の一角へと顔を向ける。 本橋さんも同じ方向へと首を動かしたところを見ると、やはり気配を察してはいたようだ。 こういった気配に対しては俺よりもずっと敏感だろうから、当然と言えば当然ではあるのだが。

 視線の先にはサングラスやらマスクでヘッタクソ極まりない変装をした顔見知りの姿があった。 はっきりと名前を挙げると千里、会長、夏芽、うめ先輩。 千里だけひげメガネな辺り、最初から忍んだところで忍べるものではない事を理解していたらしい。


「何故ばれたし」

「いや、お前らが並ぶとすっげぇ目立つから」


 具体的に言うと前から胸、金髪、黒髪、おっぱいが。 単独でも十分過ぎるほど目立つのに、そんなのが4人も集まった上に悪目立ちするような変装をしていればもはや気付かない方がおかしい。

 というか、そのアホみたいな道具一式はどこから調達してきたんだ?


「まあ良い、お前らもこっち来いよ。 生徒会の活動みたいなもんだし」

「んじゃ、おじゃましまーす」

「おい、千里。 そこは座席じゃねーぞ」


 ひげメガネを外しつつ、手招きに真っ先に応じた千里はさも当然のように俺の膝に、正確に言えば太ももに腰かけた。

 テーブルが高めなのもあって物理的には何ら問題ないのだが、絵的に色々不味い。

 夏芽はじとーっと文句ありげにこちらを睨みながら本橋さんの隣に腰かけた。 何を言わんとしているかはよく分かるが、こればっかりは不可抗力ですらないのだからどうしようもない。 仮に頭を引っ叩いて押しのけたとしても流れで千里が俺の隣を陣取る事になるので彼女の不機嫌は根本的に解消されない。

 そんな夏芽のことなど全く気にも留めず、空いている席はここだけだからと俺の隣に座る会長。 それを見て少しだけしょんぼりしている夏芽のことなどやっぱり気付きもせずに、自分の膝の上にうめ先輩を誘った。


「あ゛かん゛、おも゛い……」

「……九の、バカ」


 誘われるままに膝の上に座った彼女の、予想だにしない、もしくは予想はしていたが失念していた重さに抗えずくわっと目をも開いて悶える。

 重いと言われたのが恥ずかしいらしいうめ先輩は顔を赤くして俯く。 俯いたまま、膝の上から立ち上がると、近くの席から椅子を一つ持って来て、それに腰かけた。


「……うぅ、 うめちゃんにバカ言われた」

「じゃ、全員揃ったし、臨時の生徒会会議を始めようか?」


 落ち込む会長を爽やかに無視して、千里を膝に乗せたまま本日の議題を切り出した。

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