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電脳世界ディストピア  作者: OTAM
3章 グダグダ日常? いいえ、ハーレムものでした
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42話 教師と生徒の禁断の愛!って20年後に生徒側が30半ばの時に先生側は40代かと思うとちょっと複雑。まあ、本人らが納得しているならそれで良いのだろうが

 生徒会室に足を踏み入れると、そこには先客が居た。


「本橋センセイじゃないですか」

「はあ、わざとらしく先生を強調しない」


 ため息混じりに返す彼女は腕を組んだ格好で壁に背を預けて立っていた。

 その姿はなかなかどうして、ただ者じゃなさそうな雰囲気を漂わせていて格好良い。


「って、ホームルームの後、俺達より後に教室出ましたよね?」

「君達がコントをやってる間に追い越させてもらっただけよ」

「そうですか……」


 やれやれと言わんばかりに掌を天井に掲げてみせる本橋先生。

 長身やすらりと長い手足のおかげでこういうスカした態度も様になる人だ。

 適当なテーブルにカバンを置いて、そんな彼女の傍へと歩いて行く。


「ところで、本橋さんはどう思います?」

「何が?」

「あくまで推論ですが会長は新天寺社の関係者の可能性があります」


 何を訳の分からな事を、とばかりに怪訝な表情を浮かべた。


「根拠はあるの?」

「確証はありません。 ただ、たまたま日本橋にいたとかで3月21日の件をある程度知ってたみたいです。 あと、千里の事も」

「なるほど、ね」


 今度は下あごに人差し指を当てて考え込み始めた。

 確かに考え過ぎと言われればそれまでだろう。 しかし、偶然の一言で片付けるにはあまりにも出来過ぎている。 それもまた事実なのだ。

 それに、先日全てが終わってから本橋さんの話を聞いたところ、今回の件に絡んで資料が送られてきたから千里の事を思い出しただけだと言っていた。 そして夏芽が千里の事を覚えていたのは自分の兄貴が直接関わっていたから。

 2年も3年も前の事件なんてそんなもの。 確かに千里の年齢や新天寺社の急成長なんかも相まって結構な関心事にはなったけれど、それでも誰が死んだわけでもなく、漏えいした情報は彼女自身のものが多少と言った程度。

 あの頃の千里をずっと見て来た俺にとっては結構な大事に思えるが、世間的には他に事件が無い暇な時期にチョット騒いで他に何か大きな関心事が出来たらハイおしまいってところだろう。

 もしかしたら頭の片隅に千里の事が記憶に残っていた可能性があって、ちょっと気になったから調べてみたら過去の記事がヒットしただけかも知れない。 が、おぼろげであったとしても千里の事を覚えている人間が、あの日街中で大立ち回りしていた少女の親友でしたなんて状況に作為的なものを感じずにいられるほど俺は悠長ではない。

 もっとも、それを言ってしまえばあの場に特異な目を持つ俺が居合わせた事だって出来過ぎた話ではあるのだが。


「それに俺の射撃や本橋さんの身のこなし、うめ先輩の身体能力……そのどれについても会長からアレコレ聞かれていないってのも気にかかるところかと」

「……気を付けておくだけの価値はあるかもね」


 少なくともKASSのメンバーからは何度か勧誘された上に、あの射撃をどこで身に付けたのかと散々尋ねられもした。 俺が彼らの立場にあっても、当然そうしただろう。

 心当たりは本橋さんにもあるらしく、うーんと考え込んだまま何やら呟いている。

 その表情は真剣そのもので、端正な顔立ちと悩ましげな表情の奥には正義の味方としての本性のようなものが見え隠れしている。

 その瞳に少なからず恐怖を覚えてしまうのは俺が煩悩に溢れた俗物だからだろうか。


「おあーっと!!? 女教師と生徒の禁断の愛きたこれーー??!」


 そんな無意味な思考は、それに輪を掛けて無意味な絶叫にかき消された。

 振り返ると千里と夏芽、うめ先輩と会長がやや遠巻きから俺達二人を見守っている。

 夏芽は期待と不安が入り混じったような表情で俺と本橋先生を見比べていたかと思えば、自分の胸に視線をやり、それから小さくガッツポーズ。

 大声の主である千里はただひたすらに「エロゲ展開wktk」などと意味不明な供述を繰り返しながら目を爛々と輝かせて俺達を見守っている。

 うめ先輩は今一つ状況を飲み込めていないのか、首を傾げている。 ああ、可愛いなぁ。

 その横では会長が「もう少しで弱みになりそうなもんが見れたのに」っと悔しそうな表情で舌打ち。


「おい、訳の分からん誤解をするなよ。 腹いせに後で苛められるのは会長なんだからな!」

「ちょい待ちィ!!」

「ああ、苛め抜かれた会長が会長としての責任感から登校拒否する事も出来ず、追い詰められておかしくなっていく様が今から楽しみだなぁ」

「鬼畜や!鬼畜がおるッ!?」


 軽く涙目の会長が俺を指差しつつ叫ぶ。

 傍から見るとどんな表情しているんだろうな、俺などと思いつつ、そんな彼女に笑顔で応じた。


「俺は鬼畜、会長は家畜。 おーけー?」

「おーけーちゃうわ、ボケぇ!?」

「いーなー、私も秋一に家畜呼ばわりされて首輪とか付けられたい……」

「くぉら、そこのちっこいの!? 突っ込みが追い付かんからボケ倒すなぁっ!?」


 ひとしきり突っ込み終えたところで会長はがっくりと肩を落とした。

 それがきっかけになって、俺達のヤマもオチも意味もないやり取りは終了、会長を除く3人は何事もなかったかのように生徒会室へ。


「んじゃ、バカやってないでとっとと部活を始めるか」

「今しがた家畜になりたいとか言ってた子がそれを言う……?」


 本っ当に何事もなかったかのように事を進める千里に思わず突っ込む夏芽。

 呆れた時の表情は生身になっても何故かAR然としたデフォルメを感じるから不思議だ。

 二人は一つの長テーブルに仲良くパイプ椅子を並べて着席し、その対面に俺と本橋先生が座る。 会長とうめ先輩もこれまた二人仲良く入り口から一番遠い所に位置する長テーブル、つまり上座に陣取った。


「えっと、音頭は会長にパス!」

「いきなり振られても困るんやけど……まあええわ、5分だけ待って!」


 言うが早いか、会長は勢い良く立ち上がると『きゅーちゃんの放課後ティーセット(はぁと)』へと向かい、テキパキと飲み物を用意し始めた。

 流石はメイドオブメイドと言うべきか、その所作は手慣れたもので、あっという間に自分用と思しきレモンティー、うめ先輩のための緑茶、俺のブラックコーヒーを作り終え、お茶請けのクッキーを紙皿に盛り付ける。


「んで、千里ちゃんと夏芽ちゃんと本橋先生はなにがええのん?」

「私もブラックコーヒーで」

「アタシはミルクティーでお願いします」

「私は会長のレモンティー!」

「千里ちゃん、あとで1時間耐久おっぱい揉みな」


 にやり、と意味ありげな笑みを浮かべつつも手際良く追加注文を片付けて行く。

 何処に何が置いてるかも完璧に把握しているらしく、時々こっちの様子を伺いながらの作業にもかかわらず、砂糖はスプーン一杯だの、胃がもたれるから薄めで良いだのそんな注文にもしっかり対応。

 そんな彼女の様子をAR部女子一同は感心しきった風に見守っている。


「……なあなあ、秋一?」

「ん、なんだよ?」

「AR部初活動記念ってことで昨日のうちにこんなん作ってみたんだけど、どうよ?」


 言いながら千里がアーリーの、自作のアプリを起動させると、生徒会室にいる女子全員の衣装がメイド服に変わった。

 但し、P-Maidのコスチュームのような家事をするのに向いていそうな服ではなく、ミニスカートで、肩を露出させた、胸の谷間がしっかり拝める、そんなメイド服だった。

 と言う事はつまり、自作のアプリを得意気に披露している千里自身も卑猥な服に身を包んで、矮躯に似合わない大きなそれを惜しげもなく見せつけている訳だ。


「ふっふっふ、どうよ?」

「……下劣なのは肌に合わんってことが良く分かった」


 ファッション系のARアプリ。

 様々な体型に対応したARを予め用意して置き、カメラで撮影した被写体のスタイルに最も近いものを重ね合わせる。

 その後、適当な衣服を選択すると選択されたスタイルに合った衣服が更に重ねられる。

 身も蓋もない事を言ってしまえば映像でしかないのだな、なかなかにリアリティのある代物だ。

 ちなみに、体型は仮に近いものが無くても部分的に似たものを寄せ集めて新しく作って対応可能。

 もっとも、俺の目を通して見るとどんなに精度の高いの映像であってもARと現実の区別がきっちりとついてしまうため、どうしても冷めた反応にならざるを得ないのだが。

 と言うよりも……


「仮に生乳だとして、今更千里のものに反応すると思うか?」


 まあ、シチュエーション次第ではあるんだが。

 そう言った千里から目を背けた俺の視線の先にあるもの。

 うめ先輩のたわわに実った大地の恵み。 その意味を察した千里はアーリーのカメラを彼女に向け、凝視し――そして呟いた。


「これは……完敗と言わざるを得ない」


 安易な露出は下品? あからさまなお色気は萎える? 映像だと分かると白ける?

 そんな風に思っていた己の視野の狭さを、ただただ痛感させられた!

 端々にレースのあしらわれた漆黒のメイド服――と言うのは何か憚られるものがあるので「ご奉仕服」という造語を遣わせてもらおう――から覗く雪景色の北半球。

 悪く言えば感情に乏しい彼女の、言い換えれば感情すらも知らない程の無垢に通じる瞳と表情。 そのあどけなさと否応なく汚らわしい視線を集める呪われし魔乳の対照はお互いがお互いの魅力を高め合いながら未知の天地へと昇り詰めて行く。

 なるほど、確かにそれは偽物の映像なのだろう。 しかし、その偽物は本物に沿って再現された映像に過ぎないのだ! もしかしたら制服によって真の力を抑え込まれているかもしれないし、理屈抜きにやって来る偽物だという確信……このフィルターが外された時、どれほどの破壊力を持って俺の衝動を撃ち抜いて来るのか。 想像するだけで恐ろしい。

 その圧倒的な存在感に打ちのめされた今だからこそ、あえてもう一度言おう!

 安易な露出は下品? あからさまなお色気は萎える? 映像だと分かると白ける?

 そんなものはホンモノを知らない阿呆の戯言である、と!!


「千里、良くやった」


 新たな地平を切り開いてくれた親友を抱きしめ、頭を撫で回してやる。

 千里は俺の胸の中で嫌がる様子も見せず、されるがまま。

 ただ、少しばかり釈然としないといった風に「うーんむ……」と唸っていた。

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