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電脳世界ディストピア  作者: OTAM
3章 グダグダ日常? いいえ、ハーレムものでした
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41話 漫画におけるナンセンスなちょっとエッチなハプニングって頑張れば現実でも行けそうな気がするんだ……たとえば女体化とか!!

「それじゃ、初部活と行きますか!」

「おー」


 午後の授業を終え、ホームルームも済んだ午後3時半。

 カバンを振り回しつつ元気良く教室を飛び出した千里の後を、ようやく松葉杖から解放された夏芽と一緒に追いかける。

 目指すは我らがAR部の部室、もとい生徒会室。


「千里、生徒会室は逃げないぞ?」

「若さと青春のひとときは幸運の女神もビックリの速さで駆け抜けて行くのさ!」

「それなら、せっかくだから俺は夏芽と談笑しながらのんびり歩く、そんな青春の1ページを選ぶぜ」


 その言葉を聞くや否や、千里は両足を揃えて思いっきり踏ん張った。

 が、あいつの華奢な脚でおいそれと動きを止められる筈もなく、前方につんのめる。

 それから盛大にすっ転んだ。 顔面から。


「うわっ、痛そ」

「大丈夫だろ、エアバック2つ積んでるし」

「その冗談はちょっと引くわよ?」


 ため息とともに眠たそうな目で俺を見る夏芽。

 見ようによっては色っぽくもあるが、それを言うと殴られそうだ。

 彼女に歩幅を合わせて歩きながら、千里をじっと見つめる。 そしてはたと気付いた。


「千里、パンツ見えてるぞ」

「ぬわたっ!?」


 飛び起きる千里。

 立ち上がるや否やスカートを押えて姿勢を正した。


「えーっと、見た?」

「見た見た。 その下着はお前にはまだ早いと思うぞ」

「超冷静ッッ!?」


 まあ、今更お前の下着で動揺する道理もないからな。

 それにこんなムードもへったくれもない形で見えたって嬉しくない。

 そして何より……


「お前、わざとだろ?」

「……ばればれ?」

「ばればれ。 痴女萌えの趣味はないからその時点で減点100だな。 どうせやるんなら廊下でぶつかったら顔面に馬乗りくらいの芸を見せてみろ」

「無茶言うな」


 まず、男子と女子がぶつかった場合、必然的に女子の方が当たり負けする。

 と言うことは女子の方が後ろに倒れる格好になる訳だが、男の方だって人間に激突したんだから反作用で前方につんのめるのを阻止される。

 と言うことは、現実的に考えると転んだ女子を男子が見下ろすか、双方尻もちが正解。

 ただし、女子が急いでいて、なおかつ男の体重が軽めの場合は逆もあり得る。

 これによっぽど急いでいたというシチュエーションを加えれば、ぶつかってなお倒れ込むという偶然が現実のものとなる可能性はあるだろう。

 しかし、しかしだ。 それでもなお顔面馬乗りにはまだまだ届かない。

 足りない分を補うには寧ろ女子はその場で踏みとどまり、男子が体勢を立て直そうととっさに女子の手を掴んで引っ張る。 男子はその場で、引っ張られた女子は3歩ほど進んでから転倒と言う流れが一番現実的だろうか?

 それでも人間転んだ時には手をつこうとするものだから、目の前に極楽浄土が広がる事はあり得ても、鼻っ柱にカナンの地が軟着陸ってのは難しいだろう。


「と思うんだが、夏芽はどう思う?」

「それを真面目くさった顔で考えているアナタに疑問を覚えるわ。 っていうか、カナンは流石に比喩表現としてどうかと思う」


 乳と蜜の流れる場所だからなぁ……というか、宗教者に怒られそうな喩えだ。


「で、アンタらはいつまで廊下でおもろいやり取りしてんねん?」

「お、メイド会長とうめ先輩。 こんちわ」

「……こんにちは、秋一くん」

「名前……やと……?」


 面と向かって挨拶を交わす俺とうめ先輩を見ながら、会長が重々しく呟く。

 どうやらメイドばれよりもうめ先輩の方が重要らしい。

 考えてみればメイドやってる事を隠しているかどうかも微妙な線だしな、性格的に。

 それから憤然とこっちに歩み寄ると胸倉を掴んで、叫んだ。


「うめちゃんは絶対に渡さへんからなぁ!!」

「じゃあ、会長で我慢します♪」

「きしょ! 虫唾が走るわ!」


 相変わらず胸倉を掴んだまま吼える会長。

 いい加減煩わしいので、右手を両手で包み込むように掴んで左方向へと捻る。

 単純極まりない動作だが、これだけで手首が極まり、更に引っ張ってやると右腕全体を抑える事が出来る。 右腕が伸びきっている以上、まず左腕で俺をどうにかする事は不可能。 あるとすれば蹴りくらいなのだが、それも俺がきちんと太ももで押えている上に脚の動きには十分注意を払っているので、蹴りでも食らわせようとした瞬間に足払いを掛けるくらいは可能。


「痛い痛い痛い!? ちょ、やめぇ!? ギブギブギブ!?」


 あっさりギブアップした会長を素直に解放。

 何がどうなる訳でもないが、ぶんぶんと腕を振って己の身の無事を確認している。

 それから、涙目になってうめ先輩に泣きついた。


「うあ゛ー、後輩にいぢめられだー」

「……よしよし」


 会長は何だかんだ言ってメイドオブメイドの名を得るほどの金髪美少女である。

 そんな彼女がうめ先輩の豊かな双丘へといざなわれる、その光景。 これを眼福と言わず何と言おうか。

 御馳走様でした、とばかりに二人に向かって手を合わせ拝んでおいた。

 ついでに全くどうでも良い事だが、視界の隅で千里が夏芽のスカートの中を覗こうと彼女に襲いかかっていたりする。

 どういう経緯でそんな展開になったかは知る由もないし、特に知りたいとも思わない。


「さて、バカやってないで行くか」


 先輩と同級生のによる百合展開を尻目に生徒会室へと急ぐ。


「ちょっと、秋一! 助けてよぉ!?」

「なぁ……スケベしようや……絶対気持ちええから……」

「ゴメン、それなんか生理的に無理!?」


 後方から聞こえるバカバカしいやり取りを聞きながら、平和だなぁ……と物思いにふけった。

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