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電脳世界ディストピア  作者: OTAM
1章 むやみにイベント盛りだくさんなある日の出来事
27/172

24話 最近凄い事に気付いた。高等学校にいる女子の大半は女子高生なんだぜ・・・・・・!

 あの慌ただしい1日からおよそ2週間が過ぎた春のある日。

 俺と千里は肩を並べて通学路を歩いていた。


「……やっぱ時々俺に気付く奴がいるな」

「まー、仕方ないな。 流石にSERNにまで圧力はかけられないだろうし、そもそもかけたところで意味がない」

「分かっちゃいるが……はぁ」


 思わず盛大にため息を吐く。

 Yulyコスの女性改め、本橋 春日さんは事後処理まで手を抜かずにやってくれた。

 おかげで新天寺社が誇るニューロンネットワーク上に俺を撮った写真が上げられる事は殆どなかった。

 が、問題はニューロンでない方のネットワーク、つまりインターネット。

 そもそも何処に圧力をかければ規制できるという類のものですらなく、未だにニューロン以上に母集団の大きなそれは流石に彼女や彼女の所属する組織の手に余る代物だったらしい。

 テレビやラジオ、新聞といったマスメディアに俺や本橋さん達の情報が流れる事は無かったものの、インターネットというか、専ら某巨大掲示板で何度も俺や本橋さんの画像を見かける羽目になった。

 

「そのうち飽きられるから我慢するしかないと思われ」

「それも分かってる。 だけどな……」


 珍しくアーリーではなく、ケータイを弄くり回しながら歩いている千里の手から、ピンク色のそれを引っ手繰り、待ち受け画像を突きつける。


「すぐ横を歩いている奴がこんなことしながら言っても説得力がねえよ」

「良いじゃないか、中々イケメンに映ってるんだから」

「そういう問題じゃない!!」


 坂田うめを撃ち、添えていた左手を下ろした直後の横顔を捉えた会心の一枚。

 確かに、少々手前味噌ではあるが、その画像に写っている俺は驚くほど格好良い。

 正直、最初にこれを見た時には「フォトショ乙」と言いたくなった程だ。

 ……もっとも、それがこの画像の拡散に拍車をかける一因にもなったのだが。


「何でわざわざ俺の画像なんて待ち受けにしているんだよ?」

「そりゃあ、秋一が頼んでも撮らせてくれないからだろ」

「いや、そもそも、何で俺なんか待ち受けにしたいんだよ?」

「そりゃあ、バイブ機能で」


 言い終えるよりも早く、即座に引っ叩いてやった。

 高校生になってもツインテールの髪が毎度の如く激しく揺れる。


「……まだ変な事は言ってないだろ?」

「まだ、ってことは言おうとしたんだな?」

「言葉のあや! そんな意図はない!」

「じゃあ、最後まで言ってみろ。 妙な事を口走ったら二度と口を聞いてやらんからな」


 なるべく爽やかな笑顔で続きを促してやる。

 が、千里は次の句を発する気配を見せず、歯がみするばかり。


「で、続きは?」

「変な事を言おうとしてました、ごめんなさい!」


 そして素直に自分の非を認め、土下座した。


「いや、そこまでせんで良いから」

「秋一に相手してもらえなかったら寂しくて死ぬ」

「それは分かったから。 無視とかしないから、早く立て」


 カバンを置いてから、ツインテールを両手でがしっと掴んで千里の頭を持ち上げる。

 いささか不自然な格好で頭を上げ、じっと俺の顔を凝視。 うむ、これはこれで何ともけったいな光景だ。

 それでも入学初日に女子を道端で土下座させた男なんて不名誉極まりない称号を頂くよりはずっとましだろう。


「立つから手を離してくれ」

「土下座も土下寝も最敬礼もするなよ?」

「分かった分かった、分かったから」


 首を縦に振る千里の目をじっと見つめ、他意がないのを確かめる。

 ……何かしたら本気で怒る事を察したらしくその表情にウソ偽りは無さそうだ。

 もっとも、こいつの場合、俺の想像のはるか斜め上を行く方法でまた何かろくでもない事をやらかしそうな気はせんでもないのだが。

 たとえばそう、仰向けになって犬猫の類のやり方で服従の意思を示すとか、四つん這いになって尻を向けて来るとか……!


「まあ良い。 俺の言った言わないはともかく俺が変なこととみなした時点で無視決め込めば良いだけか……」


 そう聞えよがしに呟きつつ、手を離してやった。

 ずっと背伸びするような格好になっていた千里はふぅと一息ついてから、乱れた髪を手櫛で整える。

 淡い色の、手入れの行き届いた髪を撫でる姿は中々どうして様になっている。

 俺達と同じように九尾高へと向かう新入生たちの視線や、漏れ聞こえる会話の内容を聞く限り、この認識はそれなりに客観的なものとみて間違いない。


「そろそろ行くぞ」

「うん」







 ……と言った感じの概ねいつも通りのやり取りからおよそ1時間後。

 俺は1年4組の教室窓際の机に突っ伏し、ただひたすらに打ちひしがれていた。


「そんなに落ち込んで、どうしたん?」


 そんな俺の顔を覗き込んでいるのは毎度おなじみ北里 千里。

 いくら低身長とは言え流石に座っている俺よりは高い位置にある頭を腰を曲げて同じくらいの高さまで持って来ている。

 高校生と言えどそれでもクラス内でも屈指のサイズを誇る二つの丘を際立てるようなポージング故か、制服の冬服の厚いブレザーの上からでも確かな存在感を見せつけている。

 普段なら「お前のじゃなければ心おきなく褒め称えるところだったんだけどな」などと生意気な言葉を吐きつつ、チラ見するところなのだが今ばかりはそんな余裕もない。

 何故なら――


「落ち込んでるのはお前のせいだよ、アホんだらぁ!?」

「うおぅ、いきなりDVいくない」

「何がDVか!!」


 担任の女性教師が何やら用事で席を外し、現在教室内では各所で新しいクラスメイトとのちょっとした交流が繰り広げられていた。

 そのあらゆる会話がメールアドレスの交換が、俺の叫びによって問答無用に中断される。

 代わりに、クラスメイトほぼ全員が俺を遠巻きに眺めながら何やら内緒話を始めた。


「何なんだよ、あの自己紹介は!?」

「え、自己紹介だけど?」

「ど こ が だ よ !!」


 もう一度叫びながら、力強く机を叩き付ける。

 それと同時に勢い良く立ち上がり、まくし立てるように続ける。


「あのなぁ、まず第一に俺とお前は至って普通の友人知人だ! 分かるか? 分かるよな!? それをお前はよりにもよって……流石の俺でもあれは引くぞ!?」

「えー」

「えー、じゃありません! さっき自分が言った事をもう一遍復唱して見ろ!」

「えっと……私の名前は北里 千里です。

 おなチュー出身の羽原 秋一が大好きです。

 大好き過ぎて片時も離れたくないが為だけにここを受験した位大好きで、同じクラスになったのも新入生代表の言葉でとんでもない台詞を吐いてやる、もしも他の子に任せようとしたらその時はその時で相応の対処をするぞって校長以下を脅して無理を押しとおしたからです。

 要するにそれくらい秋一が大好きって事で、きっと秋一が死ねって言えばそれで本当に秋一が喜ぶなら本当に死――

 あ、でも秋一はそんな事はきっと言わないって確信してるから、そういう優しい秋一だから愛しい……

 だけど、一片の慈悲も見せないドSで鬼畜な秋一に好き勝手に弄ばれて滅茶苦茶にされるのも一つの夢なのは否定できないのが実は悩みどころです。

 とは言え、今でも突っ込みなんかは暴力的なところがあるから、その夢は半分くらいかなっているような気もしないんだけど、でもでもやっぱりなんて言うか人格も人権も人情も人間性も尊厳もすべて踏みにじるような圧倒的な支配が欲しいって言うか……。

 けど、そう思うようになっている時点でとっくに調教済な感がしないでもないって言うかぁ……。

 と言う訳で、私の事は秋一のメスブタって呼んでください♪」


 このアマ、本気で声色まで再現しながら復唱しやがった。

 しかも普段なら絶対にしないような口調や仕草のおまけをつけた上で、だ!

 流石に我慢しかねた俺は半ば無意識にアイアンクローをしかけながら吼えた。


「一言一句違わず再現してんじゃねえええええええ!! その愛は流石に受け入れられねえ! 重いわ痛いわキモいわで、真綿で首を絞められつつ背中に白刃を突きつけられているような恐怖しか感じねえよ!?

 お前のせいで高校デビュー大失敗だよ、チクショウ!? ここから巻き返しとかどう考えても無理ゲーだろ!?」

「って言いながら、そんな事やってると余計自分の首を絞めるわよ?」


 そんな俺に冷や水をぶっ掛けるかのような静かな声が一つ。

 ですよねー、とその言葉に全身全霊で同意しつつ、そちらを振り向くと見知った顔。


「おっ、夏芽ちゃん。 おーっす」

「おーっす、って……もうちょっと女の子らしい挨拶したら、千里?」


 そこにいたのは黙って立っていればどこかの深窓の令嬢と言われても100人中100人が納得しそうな腰まで届く長い黒髪が印象的な少女、中野 夏芽だった。

 夏芽と千里はあいさつを交わす。 この二人、いつの間にやら名前で呼び合う程度には仲良くなっていたらしい。

 ついでに言うと、千里は彼女がここに来る事を知っていたようだ。

 もっとも、俺には女同士の友情の距離感なんてのはいささか理解しかねる所があるので、本当に仲が良いのかどうなのかは疑問の余地が少なからず残るが。

 特に夏芽は千里に良い感情を抱いていなかったようだし。

 ……が、今はそこを詮索すべき時ではない。


「……秋一は殆ど無反応なのね? それとも驚き過ぎて声も出ないとか?」

「はぁ? 自意識過剰だ、バカ」

「んなっ……ばっ!?」


 ため息交じりに、松葉杖で身体を支えて立っている夏芽にジト目を送ってやった。


「断片的な情報と推論、妄想の複合でしかないけどな。 この程度は想像の範疇」

「どんな超推理よ、それ」

「まあ、そんな事はどうでも良いや」


 すると「どうでも良いって何よ」と夏芽はむくれる。 ARの時のようにむやみやたらに膨れてはいないが間違いなくあの夏芽のそれを想起させる表情だ。

 そんな彼女の前にアイアンクロ―を解いた手を差し出し――


「これからヨロシクな」

「……うん!」


 ――しっかりと握手を交わした。

 この際、クラスメイト達の「ああ、あの美人さんはあの鬼畜野郎の愛人かぁ……」という何とも言い難い視線に関しては無視を決め込む事にした。



と言う訳で、ようやく1部完……なのかな?

これからはARネタで好き勝手に書き散らかしていく予定。

お暇な方、物好きな方、もうしばしお付き合い頂けると幸いです。

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