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家庭訪問=説教→罰則

駄文失礼します。

「大分片付いてるね。男子高校生の一人暮らしだからもっと汚いと思ってた」


担任が家に入って最初に言うことか? と思いながらも机を挟んで向かいの席に座る。

天内先生は周囲をきょろきょろして部屋を観察しているが、その実、すごく意気込んでる感じだ。こんな生徒の家庭訪問なんて気が重かっただろうに。公僕は大変だ。


「じゃあ家庭訪問だけど、話したい内容は決まってるんだ」

「でしょうね」

「学校に友達はいる?」

「いません」


ノータイムで帰ってくる返答に天内先生はため息をついた。目線はこっちを向いたままなのやめてほしい。でもこの人がため息をつく場面を見れたのはかなりラッキーかも。普段からハツラツとしている人が萎えた表情をするのってなんかいいよね。


「どうして?」

「一人の方が好きなので」


天内先生はまた一段と活力を失くした。


「今までもそういう子はいたけど、多くはコミュニケーションが苦手とか人が怖いとかそういう理由。君みたいな子はいなかったよ」

「いいんじゃないですか?最近はやれ個性だ多様性だってやかましい社会ですから。そういう個性の子がいるってことで先生も一つ納得していただければ」

「そういうのは本人じゃなくて第三者が言うから価値があるの。本人が言ったら都合よくモノを運ぼうとしてるただの浅ましい人になっちゃうでしょ」


これまた教師の言うことか?でもやっぱりこの人とは話が合いそうだ。最初の議題は平行線だろうけど。


「まぁまぁ落ち着いて。お茶出しますから。」


そそくさと逃げるようにお茶を用意する。これさえ出せば無理にでも話は変えられる。さすがにありがとうの一言くらい言うだろう。そうなったらそこから話を広げていけばいいだけだ。6月とはいえ最近はめっきり暑い。冷えたお茶なんて欲しいに決まってる。話を変えるにはうってつけだ。


「不動君、真面目に聞いてる?」


ちょっと苛立ちを感じる言葉。


「聞いてますよ。こちら粗茶ですけど」

「ありがとう。でも悪いけどその作戦には乗りません。お茶を出せば話を変えられると思ったんでしょ」


前言撤回。やっぱり仲良くなれないかも。


「君が女子だったらうちの部活に入れるんだけどね」

「バドミントンなんてやらせたら体が引きちぎれちゃいますよ」

「やっぱり真面目に聞いてない」


この人なかなか鋭いな。かわいい顔してなかなか手ごわい。おまけに話がまずい方向に行ってる。部活なんて冗談じゃないぞ。この生活が崩れることは阻止しなくては。


「先生って珍しいですね。高校の教師ってこんなに生徒に対して向き合いませんよ?大体放任主義じゃないですか」

「普通はそう。でも普通の授業は出るのにグループワークとかの授業だけサボる君は目立つの。他の先生からもいろいろ言われてて何もしないわけにはいかないの」


やっぱり公僕は大変だ、なんて思っていたら先生はお茶を飲み干し意気込みながら言った。


「なので不動君には夏季学校委員になってもらいます」

「はい?」


何だよ夏季学校委員って。そんなのあるんだったら真面目に委員会説明聞いとけばよかった。あからさまに嫌な予感がする。


「何すかそれ」

「夏休みに学校の作業だったり周辺地域の方とのボランティアに参加する制度のこと。多くはは出席日数の足りない3年生だったり推薦を狙ってる子がやるんだけど、君にやってもらうことにします」

「いやいや、だったらそういう子を指名しましょうよ。未来を生きること優先しましょうよ、こんなやつより。大体俺なんかにやらせてたら本気でやりたいやつの席奪っちゃいますよ」

「大丈夫。例年やりたい子はいても数人で席なんてあまりまくってるから。君なら学校も近いし友達もいないなら予定もないでしょ」


この先生逃げ道をなくすために最初に分かり切った質問してきたよ。獲物を捕まえるために準備は怠らないタイプの人だ。浦原さんタイプ。この状況から卍解するのは大変そうだ。


「具体的に何するんすか?」

「学校の掃除とか点検とかかな。あとは体育祭実行委員の見回りとかもやるね。」

「生徒だけでやるんですか」

「教員が一緒にやる業務もあれば一任するものもあります」

「じゃあやっぱ俺ダメっすよ。なんか知らないけど俺他の先生からも目の敵にされてるらしいんで。そんな奴と仕事したくないんじゃないですか?」

「断るなら今までサボった授業分の出席つかないし、何なら私の授業のグループワークを増やします」


終わった。これ以上食い下がると余計変なことになる。その得意げな目で見ないで。なんか負けた気になるから。


「何人くらい参加するんですか」

「年によってばらばらだけど大体5.6人だね。どうする?」

「答えは決まってますよね」

「君のような勘のいい子は好きだよ」

「そのまま僕で人体錬成してください」


夕焼けが染みる。完全遮光のカーテンって高いのかな。そんなことを思っていると先生は意気揚々と立ち上がった。


「詳しいことは明日にでも学校で話すから。よろしくね?不動優君。じゃあお邪魔しました~」

「次来るときはそういう面倒な話は持ってこないでください」

「次があったら困ります」


完敗だ。準備がお粗末だった。浦原さんにお茶だけで勝てるわけない。ここまで準備してくるとは。空になった2つのグラスを片付けながら不自由が確定した15の夜。いや夜じゃなくて夕方か。

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