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『記憶の海、沈まぬ君へ』  作者: 梅犬丸
第四章『棄てられた祈りの封印』
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第二十一話「継承される器、語られざる罪」

カイとティラの前に現れた男。

 それはかつて、カイと共に“記憶魔法兵器”を研究していた男――《ルカ=アマノ》。


 白衣の裾を焼け焦がしながら、彼はかつての研究施設跡地に佇んでいた。



「……よく来たな、カイ」


「まだ生きてたのか、ルカ」


「“記録されなきゃ死なない”ってのが、虚白の皮肉な恩恵だな」



 彼は、笑っていた。

 だがその目には、深い後悔と恐怖が刻まれていた。



「カイ……お前、あの時、全部“忘れた”んだよな。

 兵器の開発に関わってたことも。

 ティラが生まれたきっかけも……」



 ティラが目を見開く。


「わたし……?」



 ルカは手にしていた“古びた譜面”を差し出す。


「これが――お前が封印した《オリジナル記録》。

 ティラという存在の原型が生まれた記憶兵器の核だ。」



 その譜面にはこう記されていた。



『試作個体・T: 終末魔法の耐性を有し、人格を“記憶に依存しない”状態で構成する。

人格安定率:9.2%。認知同一性:低。カイによる実験的命名――ティラ。』



 ティラの顔から血の気が引いていく。


「……わたしが、“魔法兵器の試作体”……?」



 カイは、唇を噛みしめる。


「……そうだ。けど、今のお前はもう“その時の存在”じゃない。

 記録から独立して、生きて、名前を持ってる」



 だがルカは、それでも続ける。


「虚白は、《記録から生まれた者たち》を“器”として再利用しようとしてる。

お前を追っているのは、“思い出す”ためじゃない。

**“記録を初期化して、また兵器として再起動するため”**だ」



 ティラの体が震える。


 自分は誰かに記録された記憶から生まれた。

 “それでも私はわたし”と思ってきた。


 でも――また“器”として使われようとしている。



 その時、カイが彼女の肩に手を置く。


「もう誰にも、お前を“記録”させはしない」



 カイは静かに、自分の譜面を開く。


【記憶魔法・封記解放アーカ・デリクト

効果:過去に封じた“最も忌まわしい記録”を一時解放し、再定義する

特性:使用中、精神が不安定になり暴走の危険あり

代償:魔法の終了後、“記録された罪”が再び自分に降りかかる



 灰誓の地に、再び“あの時の記憶”が蘇る。


 記録魔法の実験。

 ティラの“原型”が泣きながら命乞いをしていた記憶。

 カイがそれを“観測者”として見過ごした記録。



 ティラは涙をこらえながら叫ぶ。


「お願い……それでも、私がここにいる“意味”を奪わないで……!」



 その叫びが、記憶の構造を逆転させる。



【記憶魔法・詠唱拒絶ディクレア・ノーン

効果:“観測者”の記憶に依存して生まれた存在が、自ら“記録”の支配から外れる

特性:観測者がいたから存在できた、という原理を逆転する

代償:元の記録構造が崩壊し、再接続不可能になる(=“原型”には戻れなくなる)



 ティラの瞳に光が宿る。


「わたしはもう、“誰かに作られた存在”じゃない。

名前も、生き方も、自分で選ぶ!」



 空が震えた。


 虚白が、また何かを察知し始めていた。


 ルカは静かに言う。


「……その答えを、あのナモノは歓迎しないだろう。

でも――俺は、お前たちの選択を記録しておくよ。今度こそ、“正しい意味”で」

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