第二十一話「継承される器、語られざる罪」
カイとティラの前に現れた男。
それはかつて、カイと共に“記憶魔法兵器”を研究していた男――《ルカ=アマノ》。
白衣の裾を焼け焦がしながら、彼はかつての研究施設跡地に佇んでいた。
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「……よく来たな、カイ」
「まだ生きてたのか、ルカ」
「“記録されなきゃ死なない”ってのが、虚白の皮肉な恩恵だな」
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彼は、笑っていた。
だがその目には、深い後悔と恐怖が刻まれていた。
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「カイ……お前、あの時、全部“忘れた”んだよな。
兵器の開発に関わってたことも。
ティラが生まれたきっかけも……」
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ティラが目を見開く。
「わたし……?」
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ルカは手にしていた“古びた譜面”を差し出す。
「これが――お前が封印した《オリジナル記録》。
ティラという存在の原型が生まれた記憶兵器の核だ。」
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その譜面にはこう記されていた。
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『試作個体・T: 終末魔法の耐性を有し、人格を“記憶に依存しない”状態で構成する。
人格安定率:9.2%。認知同一性:低。カイによる実験的命名――ティラ。』
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ティラの顔から血の気が引いていく。
「……わたしが、“魔法兵器の試作体”……?」
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カイは、唇を噛みしめる。
「……そうだ。けど、今のお前はもう“その時の存在”じゃない。
記録から独立して、生きて、名前を持ってる」
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だがルカは、それでも続ける。
「虚白は、《記録から生まれた者たち》を“器”として再利用しようとしてる。
お前を追っているのは、“思い出す”ためじゃない。
**“記録を初期化して、また兵器として再起動するため”**だ」
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ティラの体が震える。
自分は誰かに記録された記憶から生まれた。
“それでも私はわたし”と思ってきた。
でも――また“器”として使われようとしている。
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その時、カイが彼女の肩に手を置く。
「もう誰にも、お前を“記録”させはしない」
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カイは静かに、自分の譜面を開く。
【記憶魔法・封記解放】
効果:過去に封じた“最も忌まわしい記録”を一時解放し、再定義する
特性:使用中、精神が不安定になり暴走の危険あり
代償:魔法の終了後、“記録された罪”が再び自分に降りかかる
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灰誓の地に、再び“あの時の記憶”が蘇る。
記録魔法の実験。
ティラの“原型”が泣きながら命乞いをしていた記憶。
カイがそれを“観測者”として見過ごした記録。
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ティラは涙をこらえながら叫ぶ。
「お願い……それでも、私がここにいる“意味”を奪わないで……!」
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その叫びが、記憶の構造を逆転させる。
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【記憶魔法・詠唱拒絶】
効果:“観測者”の記憶に依存して生まれた存在が、自ら“記録”の支配から外れる
特性:観測者がいたから存在できた、という原理を逆転する
代償:元の記録構造が崩壊し、再接続不可能になる(=“原型”には戻れなくなる)
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ティラの瞳に光が宿る。
「わたしはもう、“誰かに作られた存在”じゃない。
名前も、生き方も、自分で選ぶ!」
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空が震えた。
虚白が、また何かを察知し始めていた。
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ルカは静かに言う。
「……その答えを、あの王は歓迎しないだろう。
でも――俺は、お前たちの選択を記録しておくよ。今度こそ、“正しい意味”で」




