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『記憶の海、沈まぬ君へ』  作者: 梅犬丸
第四章『棄てられた祈りの封印』
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第二十話「灰誓の地に、罪は燃ゆ」

彼らは、世界の北縁――《灰誓の地》に立っていた。


 それは、かつて記憶兵器リヴィドの研究が行われ、

 数千人の記憶と精神が融合・爆散した“魔法の墓場”。


 空は灰色、空気には“過去の残滓”が霧のように漂っている。



「ここが……カイ、あなたの“過去”なの?」


 ティラが尋ねる。


 カイは、しばらく口を閉ざしてから、ぽつりと答えた。


「ここで俺は、兵器としての“記憶魔法”を完成させた。

それが……『追憶の災厄』の発端になった」



 ティラは目を伏せる。


 けれど彼女は、知っていた。

 カイは、誰よりも記憶を憎みながら、それでも記憶を捨てなかった人間だと。



 そのとき、空が鳴った。


 灰の空間を切り裂き、現れたのは――《忘却王子アルデス》。


「よく戻ったな、カイ。

忘れることでしか救われないと、あの時お前も知っていたはずだ」



 アルデスは、優雅に微笑みながらも、

 ティラに向けて静かに手を差し出す。


「君の中には、“魔女の記憶”が眠っている。

君が覚えている限り、また世界は壊れる。

君の優しさが、世界を壊す。……だから忘れなさい。君自身を」



 ティラは、その声に怯えそうになる。


 だが――カイが前に出た。


「違う。忘れるんじゃない。“それでも覚えていたい”って、

あいつはここまで来たんだ」



 アルデスの目が細くなる。


「ならば、その意思ごと――消してあげよう」



アルデスが放ったのは、記憶の“感情”だけを抜き取る魔法。


【記憶魔法・ラストリコレクション】

効果:対象の記憶から“感情のタグ”を消去し、思い出が空白の映像になる

代償:術者は“他者の記憶と感情の境界”が曖昧になり、自己認識を失いかける



 ティラの記憶が淡く剥がれていく。

 楽しかった、悲しかった――すべての“意味”が消えていく。



 そのとき、カイが自らの手でティラの譜面を握り、呼びかける。


「ティラ。思い出が意味を失っても、

俺が、“今ここで呼ぶ君”は絶対に存在してる!」



 ティラの瞳が揺れ、記憶に火が灯る。



【記憶魔法・誓詞のオース・リメンバー

効果:過去の出来事に込めた“他者の言葉”を灯火として再燃させる魔法

特性:“呼ばれたことのある名前”があれば、記憶の中心に火が灯る

代償:燃やすたび、“呼びかけた相手の言葉”は二度と思い出せなくなる



 ティラの魔法が、灰の地に炎を灯す。


「わたしは、“誰かに呼ばれてきた記憶”でここにいる!

 だから、あなたの消す魔法じゃ、わたしは終わらない!」



 アルデスが膝をつく。


「やはり、君は“あの魔女”の器だ……。ならば、次に来るのは“器の継承”だな」



 そう言い残し、アルデスは魔法転移で消えた。



 戦いは一時退いた。

 しかし、“器の継承”という言葉がティラの胸に引っかかる。


 彼女は“誰かの記憶”ではなく、“自分の生き方”を貫こうとしていた。

 けれど――それだけでは止まらない何かが、近づいていた。



 そして、カイの元にはかつての研究仲間の一人、《ルカ=アマノ》が現れる。


「カイ。……やっぱりあのとき、俺たちは間違っていたのか?」

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