第二十話「灰誓の地に、罪は燃ゆ」
彼らは、世界の北縁――《灰誓の地》に立っていた。
それは、かつて記憶兵器の研究が行われ、
数千人の記憶と精神が融合・爆散した“魔法の墓場”。
空は灰色、空気には“過去の残滓”が霧のように漂っている。
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「ここが……カイ、あなたの“過去”なの?」
ティラが尋ねる。
カイは、しばらく口を閉ざしてから、ぽつりと答えた。
「ここで俺は、兵器としての“記憶魔法”を完成させた。
それが……『追憶の災厄』の発端になった」
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ティラは目を伏せる。
けれど彼女は、知っていた。
カイは、誰よりも記憶を憎みながら、それでも記憶を捨てなかった人間だと。
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そのとき、空が鳴った。
灰の空間を切り裂き、現れたのは――《忘却王子アルデス》。
「よく戻ったな、カイ。
忘れることでしか救われないと、あの時お前も知っていたはずだ」
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アルデスは、優雅に微笑みながらも、
ティラに向けて静かに手を差し出す。
「君の中には、“魔女の記憶”が眠っている。
君が覚えている限り、また世界は壊れる。
君の優しさが、世界を壊す。……だから忘れなさい。君自身を」
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ティラは、その声に怯えそうになる。
だが――カイが前に出た。
「違う。忘れるんじゃない。“それでも覚えていたい”って、
あいつはここまで来たんだ」
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アルデスの目が細くなる。
「ならば、その意思ごと――消してあげよう」
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アルデスが放ったのは、記憶の“感情”だけを抜き取る魔法。
【記憶魔法・ラストリコレクション】
効果:対象の記憶から“感情のタグ”を消去し、思い出が空白の映像になる
代償:術者は“他者の記憶と感情の境界”が曖昧になり、自己認識を失いかける
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ティラの記憶が淡く剥がれていく。
楽しかった、悲しかった――すべての“意味”が消えていく。
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そのとき、カイが自らの手でティラの譜面を握り、呼びかける。
「ティラ。思い出が意味を失っても、
俺が、“今ここで呼ぶ君”は絶対に存在してる!」
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ティラの瞳が揺れ、記憶に火が灯る。
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【記憶魔法・誓詞の火】
効果:過去の出来事に込めた“他者の言葉”を灯火として再燃させる魔法
特性:“呼ばれたことのある名前”があれば、記憶の中心に火が灯る
代償:燃やすたび、“呼びかけた相手の言葉”は二度と思い出せなくなる
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ティラの魔法が、灰の地に炎を灯す。
「わたしは、“誰かに呼ばれてきた記憶”でここにいる!
だから、あなたの消す魔法じゃ、わたしは終わらない!」
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アルデスが膝をつく。
「やはり、君は“あの魔女”の器だ……。ならば、次に来るのは“器の継承”だな」
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そう言い残し、アルデスは魔法転移で消えた。
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戦いは一時退いた。
しかし、“器の継承”という言葉がティラの胸に引っかかる。
彼女は“誰かの記憶”ではなく、“自分の生き方”を貫こうとしていた。
けれど――それだけでは止まらない何かが、近づいていた。
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そして、カイの元にはかつての研究仲間の一人、《ルカ=アマノ》が現れる。
「カイ。……やっぱりあのとき、俺たちは間違っていたのか?」




