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出来損ないではないですよ? ~がり勉令嬢と風変り令息の話~  作者: 渡辺 佐倉


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腕輪の秘密

次の瞬間、商人はナナエルの目の前に現れた。

ナナエルははっきりと彼の姿を目にとらえた。


瞳孔の形が完全に人間のそれとは違う。

ナナエルに伸ばした腕は毛におおわれ、手先の爪は鋭くとがっていた。


明らかに人間の形をしていないそれを見て、ナナエルは悲鳴を抑え、魔法を展開した。


「むだだよ。お嬢さん。

ちょっと魔法が使える位じゃどうにもならない」


ナナエルのはった防御壁は簡単にそれに壊されてしまう。


渾身の力でナナエルは魔法陣を展開した。

ナナエルが効率化した切り裂く風の魔法だ。


「おや、ちょっと魔法が使えるじゃないね。

そこだけは訂正しよう」


それでもナナエルの魔法がそれに対して効果があることは無かった。

人質にするつもりだろうとナナエルにはすぐに理解できた。


理由は分からないけれど、これは龍の素材がどうしても欲しいらしい。

それで得られる利益であればこれだけの力があるのなら奪えばいい。


けれどそれをしないという事は、現在侯爵家が管理するどこかに厳重に保管されている暗黒竜の亡骸がどうしても必要なのだろう。


ナナエルは、ウィリアムの邪魔になることは嫌だった。

だから逃げようとしたが上手くいかなかった。


それは、あり得ない素早い動作でナナエルにつかみかかった。


その刹那、ナナエルの腕輪がまぶしい位に輝いた。

ナナエルは目を開け続けるのも難しかった。


目の前で、壮絶な叫び声が聞こえた。


ナナエルが再び瞳を開けると、目の前でそれはうずくまっていた。

そして腕輪を確認すると粉々に砕け散ってしまっていた。


ウィリアムがナナエルの元に駆け寄る。


「大丈夫か?」

「ええ」


でも、とナナエルは砕けた腕輪を見た。

拾い集めたいけれど、今がその時でないことはわかっている。


ウィリアムは「少しだけ下がっていて」と言った。

すぐにジョエルがナナエルの元に駆け寄って来て彼女をかばうようにその場から離れる。

ジョエルには二人の宮廷魔術師が付いていた。

その二人が一歩前に出る。


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