褒美
王家の者たちは、ウィリアムが竜を献上するつもりが無いなんて、これっぽっちも思ってはいなかった。
このままウィリアムとの話が終わってしまったら、英雄になんの褒章も与えない王になってしまう。
ここのところトラブル続きだったのだ。これ以上の悪評は避けたかった。
「待て待て、褒美の話がまだだ」
国王は偉そうにそう言った。
それからもったいぶって一つ目の褒美について話した。
「そちが『勇者』と名乗ることを許そう」
ウィリアムは一生名乗りそうに無い称号が授与された。
「それから領地を渡そう」
そう言って渡された目録にかかれていたのは過去、災禍によって荒れ地になってしまっていた小さな小さな土地だった。
侯爵家に地続きなことだけは意味があるのか。
侯爵家は魔法で身を立てる一族だ。
領地が増えてもあまり意味は無い。
ただ、ここまでは予想通りの褒章だった。
周らなくなった国家運営の所為で出費が重なっているため、まともなものを褒章に出さないだろうと予想されていた。
国宝とされる昔の魔道具などを下げ渡すという事も無いだろうと見られてた。
完全に予想通りで終わるものだと思っていた。
諸外国への印象は最悪ではないが、という話になると思われていた。
「そして、そちの婚約者を宮殿で召し上げてやろう」
と国王は言った。
これに関しては全く想定していなかった。
ナナエルが逃げ出したとはいえ、最終的にいらないから捨てたんですよという扱いにしたナナエルを欲しいとはいったいどういう了見だろうか。
あまりに予想外の上、何が褒美かという内容でウィリアムは言葉が出なかった。
それを肯定ととらえたのだろう王子がウィリアムに近寄り「出来損ないを使ってやるんだ、ありがたく思え」と言った。
ウィリアムはその場で王子の首を力任せに切り落とさなかったことをほめてやりたいとウィリアム自身が思った。
何も答えないウィリアムに周りはざわついていた。
ざわめきが広がっていく。
ウィリアムに恭順の意思があるのなら、従うというなり、ナナエルにはその仕事は荷が重いなりいうはずだった。
そして、龍を差し出しますとただ言えばいいのだ。
目の前にいる魔法使いに王家の者たちは皆そう思っていた。




