自分のやりたい勉強
ナナエルは子供のころから知識を得ることが好きだった。
本を読むことも好きだった。
文章を書くことも苦ではないし、計算も得意だった。
けれど、その後は王子の婚約者候補として、王子妃として必要な勉強や公爵令嬢としてよりふさわしい勉強、そんなものばかりになっていた気がする。
好きなことを研究できると言われても、ぱっとこれがやりたいとナナエルには思い浮かばなかった。
楽しそうとは思ったけれど、具体的にナナエルはこれがしたいというものは何も思い浮かばなかった。
これではがり勉令嬢と言われても仕方がないではないかと思った。
学園にはまた通い始めた。
あらゆる授業はあの塔の様な校舎で行われるので誰にも出会わない。
たまに、馬車止めで他の貴族の子息や令嬢とばったり会ってしまうと、ぎょっとした顔をされる。
紳士淑女教育を受けている筈の人たちがそんな風な顔をするのだ。
どういう風に噂をされているのかわかってしまうのは少し悲しかった。
伝えられていた通り学園では自習の時間がとても多かった。
ナナエルはウィリアムに魔法を教わりながら考えた。
ウィリアムは、体力回復の魔法の使い方はすぐに教えてくれたけれど、氷の花の作り方は隠した。
無理をして聞き出すつもりはないけれど、ウィリアムが「あれはナナエルに贈り物をするための専用魔法だから誰にも教えるつもりはない」と言い切っていたことに驚いた。
あの氷の花はきっと一目見れば貴族の間でとても流行るのにとナナエルは思った。
そうして、そうか。自分の欲しい物や困ってることを解決するものを作るのもいいかもしれないと思った。
「そう言えば、生徒会は君の代わりに7人、宮殿は雑用だけで7人君の代わりに入ったらしいよ。
実際それでは回らなくて王子の執務は応援が必要らしいから、大変だよね」
ウィリアムは言った。
「一日で14人分の働きをしながら、学業もこなしていた君に聞きたい。
どんな魔法を使ったの?」
ナナエルが押し付けられていたのは、奇想天外な発想が必要であるとか、そういうものではない。
宮殿で働く役人も試験に通ったエリートだ。
ある程度は個人の能力の違いで説明できる部分もあるが、完全な雑用箇所まで含めると終わらせていた事自体が異常だ。
「まずは、私勉強が好きで本が好きですので、調べ物のために席を外すということがないのです。
この国の法律も全てそらんじておりますし」
ああ、とひらめいたようにナナエルはパンと両手をたたいた。
「法律や過去の事例をためておいて、自動で呼びだせる辞書の様な魔道具を開発するのはいかがでしょうか?
それなら私一人でも短時間で開発できそうです」
ニコニコしながらナナエルは言った。
魔道具の開発は専門の技師がやるものであって、経験のない人間が短時間でできるものではない。
「魔道具の開発経験が?」
「はい。そういえば、それも恐らく仕事がなんとか終わっていた理由の一つかもしれません」
そう言いながらナナエルは鞄から両手に乗る位の魔道具を取り出した。
「数字を計算するための魔道具です」
「具体的には?」
「計算尺をもっと便利にした程度のものなのですが、時間短縮になるんですよ。
大きな計算には計算尺も大きくなってしまいますし、丸いものと棒状のものと持ち歩くのも大変でしょう?」
最初は勉強の際の答えがあっているか正確に確認したいため、開発したものだったが、宮殿での仕事では便利に使っている。
「これは商人ギルドでの登録は?」
「しておりませんが。このような物でもやはり念のため登録しておいた方がいい物でしょうか?」
「念のため、じゃなくて、莫大な利益になるからなんだけどね」
ウィリアムはそう返したがナナエルは不思議そうだった。
「こういうものが作れるのなら、そうだね。
きみの作りたいものは短時間で開発ができるだろうね」
どんどん考えている物を開発しようと、ウィリアムは言った。




