我慢の限界がきたようです
積み重なる、仕事仕事仕事。
ナナエルの仕事ではないと知ってるであろうに、せかしてくる文官。
そもそも機密に関わるものは婚約者候補でしかないナナエルには回ってこないし、一般の文官にもかかわりは無い。
そのためせかされることもないはずなのだ。
渡されているものが明らかにおかしい。
しかも、ナナエルは気が付いていたことがある。
仕事が増えていることの一つに文官たちが仕事を押し付けているというのもあった。
王子に対して何も言い返せない地味な令嬢。
そういう姿は宮殿で何度も見られてしまっている。
人の口に戸は立てられない。
なめられているナナエルであれば少し仕事を押し付けても大事にはならないだろう。
なにかあってもミスをしたという言い訳程度で済むだろう。
そういうものが重なりに重なって仕事は机をはみ出してそこら中に積み上げられている状態だった。
ほとんど眠る時間も食べる時間も取れず、真実の愛を追いかける王子の代わりに雑務をこなす日々。
家にも帰れていなかった。
限界だった。
ナナエルは鏡で自分の姿を最後に見たのがいつなのかも分からなかった。
ただ、今自分がとても疲れた顔をして、疲れた姿をしていることだけはわかっている。
もう夜中と言っていい時間になっていた。
王子は様子すら見にきてはいない。
王子を補佐し、この仕事のうちいくらかはすることになっている筈の人々もナナエルはここのところ見たことすらなかった。
涙がこぼれるかとおもったけれど、目頭が熱くなっただけだった。
ナナエルはふらふらと、執務室をでて中庭へと向かった。
中庭は王族の居住エリアとは離れており夜は誰もいない。
綺麗に整えられた庭園はナナエルの実家を思い出させた。
限界だった。何もかもがもうナナエルには限界だった。
けれどその時、防音の結界魔法と侵入禁止の魔法を起動したのは半ば癖になったものだった。
外の音も何も聞こえない場所。
そう思った瞬間、ボロボロと涙が零れ落ちた。
ナナエルはわーっと、叫びそれから王子や側近たちの愚痴をぽつりぽつり言い始めた。
だれにも言えない。
形に残せばどうなるか分からない。
家族にさえ言えなかった言葉を言っていく。
それを聞いている人がいるなんて、その時のナナエルは思いもしなかった。




